91~100番歌

百人一首の意味と文法解説(95)おほけなくうき世の民におほふかなわがたつ杣にすみぞめの袖┃前大僧正慈円

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-95

投稿日:2018年3月12日 更新日:

おほけなくうき世の民に覆ふかなわが立つそまにすみぞめの袖

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小倉百人一首から、前大僧正慈円の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。

また、くずし字・変体仮名で書かれた江戸時代の本の画像も載せております。

ふだん我々が使っている字の形になおした(翻刻と言う)ものと、ひらがなのもとになった漢字(字母)も紹介しておりますので、ぜひ見比べてみてください。

原文

ogura-hyakunin-isshu-95

百人一首(95)おほけなくうき世の民におほふかなわがたつ杣にすみぞめの袖


画像転載元
国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541162

翻刻(ほんこく)(普段使っている字の形になおす)

hyakuni-isshu-honkoku-95

百人一首(95)おほけなくうき世の民におほふかなわがたつ杣にすみぞめの袖

釈文(しゃくもん)(わかりやすい表記)

前大僧正慈円
おほけなく うき世の民に 覆ふかな わが立つそまに すみぞめの袖
 

字母(じぼ)(ひらがなのもとになった漢字)

hyakunin-isshu-jibo-95

百人一首(95)おほけなくうき世の民におほふかなわがたつ杣にすみぞめの袖

現代語訳(歌意)・文法解説

※この和歌の題やよまれた事情はあきらかでない。

身のほど知らずであるが、つらい世の中の人々を覆うのだ。比叡山に住みはじめてから着ている僧衣の袖を。

おほけなく憂き世の民におほふかなわが立つ杣に墨染の袖

おほけなく憂き世の民におほふかなわが立つ杣に墨染の袖

※三句切れ。

体言止め(たいげんどめ)。和歌を体言(名詞)でしめくくることを言います。

▽師覚快法親王が入滅して慈円に改名した養和頃、二十代後半頃の作か。比叡山延暦寺に住持しての、衆生救済を目ざす公的使命の自覚。(『新日本古典文学大系 千載和歌集』片野達郎・松野陽一、1993年、岩波書店、340ページ)
 

語釈(言葉の意味)

※特記のないかぎり『岩波 古語辞典 補訂版』(大野晋・佐竹昭広・前田金五郎 編集、岩波書店、1990年)による。
 

詞書(ことばがき)

※詞書とは、和歌がよまれた事情を説明する短い文のことで、和歌の前に置かれます。

題不知(だいしらず)(※和歌の題やよまれた事情が明らかでないこと。)

※詞書の引用は『新日本古典文学大系 千載和歌集』(340ページ)によります。
 

おほけなし

●おほけな・しオオ ‥ 〘形ク〙
①身の程知らずである。身の程もわきまえず、そら恐ろしい。「あながちに有るまじく―・き心ちなどはさらに物し給はず」〈源氏若菜下〉
 

うきよ

●うきよ【憂き世・浮世】
《平安時代には「憂き世」で、生きることの苦しい此の世、つらい男女の仲、また、定めない現世。のちには単に此の世の中、人間社会をいう。「憂き」が同音の「浮き」と意識されるようになって、室町時代末頃から、うきうきと浮かれ遊ぶ此の世の意にも使うようになった》
①無常の現世。はかない此の世。つらい世の中。「散ればこそいとど桜はめでたけれ―に何か久しかるべき」〈伊勢八二〉。「生死無常の習ひ、―の坂とは知りながら」〈神道集一〇〉

●うきよ【憂世】

つらい人生。つらい恋愛などの意で多く用いられた。「をしからで悲しきものは身なりけりうき世そむかむ方を知らねば」(後撰集・雑二・貫之)「死出の山たどるたどるも越えななでうき世の中になに帰りけむ」(同・読人不知)のように逃れたいほどのつらい人生であったり、「うき世とは思ふものから天(あま)の戸(と)のあくるはつらきものにぞありける」(後撰集・恋六・読人不知)のように二人だけの厳しい人生であったりするのである。
『歌枕 歌ことば辞典』片桐洋一、笠間書院、1999年

 

おほふ

広く包む。保護する。(『新日本古典文学大系 千載和歌集』340ページ)
 

わがたつそま【我が立つ杣】

《伝教大師が比叡山で作った歌、「阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい)の仏たち我が立つ杣に冥加あらせたまへ」から》
比叡山を指していう語。「祈りこし―のひきかへて人なき峰となりやはてなむ」〈平家二・山門滅亡〉

○わが立つ杣
比叡山延暦寺の異名。「阿耨多羅三藐三菩提の仏達我が立つ杣に冥加あらせたまへ」(和漢朗詠・仏事・最澄)。(『新日本古典文学大系 千載和歌集』340ページ)
 

そま【杣】

①樹木を植えつけて材木をとる山。そまやま。「宮材(みやき)引く泉の―に立つ民の」〈万二六四五〉
 

すみぞめ【墨染】

①墨で染めたような黒い色。「―の衣の袖の干(ひ)る時もなし」〈古今八四四〉
②黒く染めた衣。僧衣・喪服など。「老僧姿にやせ衰へ、濃き―に同じ袈裟」〈平家一〇・横笛〉
 

百人一首の現代語訳と文法解説はこちらで確認

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あきぜに ぎりす はるぎて
あきたの こころてに はるよの
ぬれば こころ かたの
あさふの ひとを ひといさ
あさぼらけ たびは ひとをし
あさぼらけ すてふ くからに
ひきの やこの ととぎす
あはしま びしさに みかもり
あはとも ぶれど みかはら
みての つゆに ばやな
あふとの みのえの のくの
あまかぜ をはやみ しのの
あまはら さごの らさめの
あららむ のおとは ぐりあひて
あらふく のうらに しきや
ありけの わかれ ともに
ありやま のをよ らはで
しへの をかも むぐら
いまむと ちぎりきし やまはに
いまただ ちぎり やまとは
りける やぶる されば
みわび みれば のとを
やまに ばねの よのなか
にきく ながらむ よのなか
おほやま ながへば すがら
おほなく なげつつ こめて
ひわび なげとて わがほは
とだに のよは わがでは
さぎの なにおはば わするる
かぜよぐ なには わすじの
かぜいたみ なには わたのはら
きみがため はなそふ わたのはら
きみがため はないろは ぬれば
らやま

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都内の私立大学 文学部国文学専攻出身
お菓子メーカー勤務のサラリーマン
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歌舞伎の観客のすそ野を広げるには古典教育から見直す必要があると考えているので、このブログで古文にまつわる情報を発信しております。


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