21~30番歌

百人一首の意味と文法解説(22)ふくからに秋の草木のしをるればむべ山風を嵐といふらむ┃文屋康秀

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-22

投稿日:2018年3月11日 更新日:

吹くからに秋の草木のしをるればむべやまかぜをあらしと言ふらむ

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小倉百人一首から、文屋康秀の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。

また、くずし字・変体仮名で書かれた江戸時代の本の画像も載せております。

ふだん我々が使っている字の形になおした(翻刻と言う)ものと、ひらがなのもとになった漢字(字母)も紹介しておりますので、ぜひ見比べてみてください。

原文

ogura-hyakunin-isshu-22

百人一首(22)ふくからに秋の草木のしをるればむべ山風を嵐といふらむ


画像転載元
国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541162

翻刻(ほんこく)(普段使っている字の形になおす)

hyakuni-isshu-honkoku-22

百人一首(22)ふくからに秋の草木のしをるればむべ山風を嵐といふらむ

釈文(しゃくもん)(わかりやすい表記)

文屋康秀
吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を 嵐と言ふらむ
 

字母(じぼ)(ひらがなのもとになった漢字)

hyakunin-isshu-jibo-22

百人一首(22)ふくからに秋の草木のしをるればむべ山風を嵐といふらむ

現代語訳(歌意)・文法解説

ちょっと風が吹くだけで秋の草木がぐったりするので、なるほど、それで山から吹く風を「嵐」と言うのだろう。

吹くからに

吹くからに


しをるれば

しをるれば


むべ山風を嵐と言ふらむ

むべ山風を嵐と言ふらむ

※「山」の字と「風」の字をあわせたら「嵐」という漢字ができます、という言葉あそびの歌です。これは漢詩の「離合詩(りごうし)」の流れを受けついだよみ方です。『古今和歌集』にはほかにも、「雪ふれば(き)(ごと)に花ぞ咲きにけるいづれをとわきて折らまし」(※雪がふるのでどの木にも雪の花が咲いたことだ。どれを梅だと区別して折ったらよいだろう。「木」の字と「毎」の字をあわせたら「梅」の漢字ができる。)という歌もあります。

※「から」「ば」などの助詞は「古典の助詞の覚え方」でご確認ください。

※終止形接続の助動詞「らむ」の解説は「古典の助動詞の活用表の覚え方」をご覧ください。
 

語釈(言葉の意味)

※特記のないかぎり『岩波 古語辞典 補訂版』(大野晋・佐竹昭広・前田金五郎 編集、岩波書店、1990年)による。
 

からに

〘助〙
①…だけで。「君が目の恋(こほ)しき―泊ててゐて」〈紀歌謡一二三〉
②ちょっと…するだけで。ほんの…するだけで。「吾妹子を相見し―事(噂)そさだ多き」〈万二五七六〉。「吹く―秋の草木のしほるればうべ山風を嵐といふらむ」〈古今二四九〉
 

しを・れ

《シヲリの自動詞形。植物が雪や風に押されて、たわみ、うなだれる意》
①押されて、うなだれる。勢いがなくなる。
「事繁み相問はなくに梅の花雪に―・れて移ろはむかも」〈万四二八二〉。「吹くからに秋の草木の―・るればむべ山風をあらしといふらむ」〈古今二四九〉
 

むべ

(※「なるほど」)
 

やまかぜ【山風】

①山の中の風。「―に桜吹きまきみだれなん花のまぎれに君とまるべく」〈古今三九四〉
②山から吹く風。「ささなみの比良―の海吹けば釣する海人の袖かへる見ゆ」〈万一七一五〉
 

らむ

(※目前原因推量:~ので…だろう)
 

作者:文屋康秀(ふんやのやすひで)について

文屋康秀は縫殿助宗于(ぬいどののすけむねゆき)の子。生没年未詳。清和(せいわ)天皇・陽成(ようぜい)天皇の時代(858~884年)の人。元慶(がんぎょう)3年(897)頃まで活躍したとされます。自身も縫殿助になりましたが、身分の低い役人でした。

子どもは文屋朝康(ふんやのあさやす/ともやす)です。
 

縫殿寮(ぬいどのりょう/ぬいどののつかさ)

中務省(なかつかさしょう)にあった役所で、女官(にょうかん)(女性の官人)の人事や、宮中の衣服の製作を担当したところです。

四等官(かみ・すけ・じょう・さかん)

四等官(かみ・すけ・じょう・さかん)


 

六歌仙(ろっかせん)

文屋康秀は六歌仙の一人です。

六歌仙とは、905年につくられた『古今和歌集』の仮名序(かなじょ)(漢文ではなく仮名文で書いた序文だから「仮名序」と言う)に、紀貫之(きのつらゆき)がすぐれた歌人として名前をあげた6人のことを指します。康秀の歌に対する貫之の評価は次のとおりです。本文引用は『新日本古典文学大系 古今和歌集』(14ページ)によります。

文屋康秀は、言葉は巧みにて、その様(さま)身に負はず。言はば、商人(あきびと)の、良き衣(きぬ)着たらむがごとし。(文屋康秀は、言葉は巧みだが、作者の品格にあわない。たとえて言えば、商人が自分に不釣りあいな上等な衣服を着ているようなものだ。)

六歌仙は康秀のほかに、在原業平(ありわらのなりひら)、僧正遍昭(そうじょうへんじょう)、喜撰法師(きせんほうし)、大友黒主(おおとものくろぬし)、小野小町(おののこまち)があげられています。
 

百人一首の現代語訳と文法解説はこちらで確認

こちらは小倉百人一首の現代語訳一覧です。それぞれの歌の解説ページに移動することもできます。

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あきぜに ぎりす はるぎて
あきたの こころてに はるよの
ぬれば こころ かたの
あさふの ひとを ひといさ
あさぼらけ たびは ひとをし
あさぼらけ すてふ くからに
ひきの やこの ととぎす
あはしま びしさに みかもり
あはとも ぶれど みかはら
みての つゆに ばやな
あふとの みのえの のくの
あまかぜ をはやみ しのの
あまはら さごの らさめの
あららむ のおとは ぐりあひて
あらふく のうらに しきや
ありけの わかれ ともに
ありやま のをよ らはで
しへの をかも むぐら
いまむと ちぎりきし やまはに
いまただ ちぎり やまとは
りける やぶる されば
みわび みれば のとを
やまに ばねの よのなか
にきく ながらむ よのなか
おほやま ながへば すがら
おほなく なげつつ こめて
ひわび なげとて わがほは
とだに のよは わがでは
さぎの なにおはば わするる
かぜよぐ なには わすじの
かぜいたみ なには わたのはら
きみがため はなそふ わたのはら
きみがため はないろは ぬれば
らやま

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都内の私立大学 文学部国文学専攻出身
お菓子メーカー勤務のサラリーマン
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歌舞伎の観客のすそ野を広げるには古典教育から見直す必要があると考えているので、このブログで古文にまつわる情報を発信しております。


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