61~70番歌

百人一首の意味と文法解説(66)もろともにあはれと思へ山桜花よりほかに知る人もなし┃前大僧正行尊

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-66

投稿日:2018年3月12日 更新日:

もろともにあはれと思へ山桜花よりほかに知る人もなし

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小倉百人一首から、前大僧正行尊の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。

また、くずし字・変体仮名で書かれた江戸時代の本の画像も載せております。

ふだん我々が使っている字の形になおした(翻刻と言う)ものと、ひらがなのもとになった漢字(字母)も紹介しておりますので、ぜひ見比べてみてください。

目次

原文

ogura-hyakunin-isshu-66

百人一首(66)もろともにあはれと思へ山桜花よりほかに知る人もなし

画像転載元
国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541162

翻刻(ほんこく)(普段使っている字の形になおす)

hyakuni-isshu-honkoku-66

百人一首(66)もろともにあはれと思へ山桜花よりほかに知る人もなし

釈文(しゃくもん)(わかりやすい表記)

前大僧正行尊
もろともに あはれと思へ 山桜 花よりほかに 知る人もなし
 

字母(じぼ)(ひらがなのもとになった漢字)

hyakunin-isshu-jibo-66

百人一首(66)もろともにあはれと思へ山桜花よりほかに知る人もなし

現代語訳(歌意)・文法解説

※修験道(しゅげんどう)である吉野の大峰(おおみね)で、思いがけず桜の花を見て、よんだ歌。

私が花をなつかしく思うように、お互いに私をなつかしく思ってくれ、山桜よ。花以外に私の心を理解する人はいないのだ。

もろともにあはれと思へ山桜花よりほかに知る人もなし

もろともにあはれと思へ山桜花よりほかに知る人もなし

 

語釈(言葉の意味)

※特記のないかぎり『岩波 古語辞典 補訂版』(大野晋・佐竹昭広・前田金五郎 編集、岩波書店、1990年)による。
 

詞書(ことばがき)

※詞書とは、和歌のよまれた事情を説明する短い文のことで、和歌の前に置かれます。

大峰(おほみね)にて思ひがけず桜の花を見てよめる(※修験道である吉野の大峰で、思いがけず桜の花を見て、よんだ歌。)

※詞書の引用は『新日本古典文学大系 金葉和歌集 詞花和歌集』(川村晃生・柏木由夫・工藤重矩、1989年、岩波書店、148ページ)によります。
 

補足:大峰山の地図

※大峰(大峰山)は奈良県の吉野にあります。修験者が修行を行う地として知られています。

吉野・大峰山

吉野・大峰山

 

もろともにあはれと思へ

私が山桜に思うと同じく、山桜も私に対して、「あはれ」と思え、の意。(『新日本古典文学大系 金葉和歌集 詞花和歌集』148ページ)
 

もろともに【諸共に】

〘副〙
一緒にそろって。相共に。「―なきてとどめよきりぎりす秋の別れは惜しくやはあらぬ」〈古今三八五〉
 

知る

●し・り【領り・知り】
〘四段〙
①占有する。「葛城(かづらき)の高間(たかま)の草間早―・りて〔占有ノシルシノ〕標(しめ)刺さましを今そくやしき」〈万一三三七〉
⑤認識する。理解する。「世の中は空しきものと―・る時しいよよますます悲しかりけり」〈万七九三〉
 

百人一首の現代語訳と文法解説はこちらで確認

こちらは小倉百人一首の現代語訳一覧です。それぞれの歌の解説ページに移動することもできます。

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あきぜにぎりすはるぎて
あきたのこころてにはるよの
ぬればこころかたの
あさふのひとをひといさ
あさぼらけたびはひとをし
あさぼらけすてふくからに
ひきのやこのととぎす
あはしまびしさにみかもり
あはともぶれどみかはら
みてのつゆにばやな
あふとのみのえののくの
あまかぜをはやみしのの
あまはらさごのらさめの
あららむのおとはぐりあひて
あらふくのうらにしきや
ありけのわかれともに
ありやまのをよらはで
しへのをかもむぐら
いまむとちぎりきしやまはに
いまただちぎりやまとは
りけるやぶるされば
みわびみればのとを
やまにばねのよのなか
にきくながらむよのなか
おほやまながへばすがら
おほなくなげつつこめて
ひわびなげとてわがほは
とだにのよはわがでは
さぎのなにおはばわするる
かぜよぐなにはわすじの
かぜいたみなにはわたのはら
きみがためはなそふわたのはら
きみがためはないろはぬれば
らやま

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