61~70番歌

百人一首の意味と文法解説(70)寂しさに宿を立ち出でてながむればいづこも同じ秋の夕暮れ┃良暹法師

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-70

投稿日:2018年3月12日 更新日:

さびしさに宿を立ち出でて眺むればいづこも同じ秋の夕暮れ

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小倉百人一首から、良暹法師の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。

また、くずし字・変体仮名で書かれた江戸時代の本の画像も載せております。

ふだん我々が使っている字の形になおした(翻刻と言う)ものと、ひらがなのもとになった漢字(字母)も紹介しておりますので、ぜひ見比べてみてください。

原文

ogura-hyakunin-isshu-70

百人一首(70)寂しさに宿を立ち出でてながむればいづこも同じ秋の夕暮れ

画像転載元
国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541162

翻刻(ほんこく)(普段使っている字の形になおす)

hyakuni-isshu-honkoku-70

百人一首(70)寂しさに宿を立ち出でてながむればいづこも同じ秋の夕暮れ

釈文(しゃくもん)(わかりやすい表記)

良暹法師
さびしさに 宿を立ち出でて 眺むれば いづこも同じ 秋の夕暮れ
 

字母(じぼ)(ひらがなのもとになった漢字)

hyakunin-isshu-jibo-70

百人一首(70)寂しさに宿を立ち出でてながむればいづこも同じ秋の夕暮れ

現代語訳(歌意)・文法解説

※この和歌の題やよまれた事情はあきらかでない。

さびしさのために、住まいを出て、あたりをながめると、どこも同じようにわびしい秋の夕暮れであるよ。

寂しさに宿を立ち出でてながむればいづこも同じ秋の夕暮れ

寂しさに宿を立ち出でてながむればいづこも同じ秋の夕暮れ

四句切れ?「同じ」が「秋の夕暮れ」にかからず、和歌がそこでいったん途切れると考えれば、四句切れと判断できます(終止形のところが和歌の切れ目となることが多いです)。いっぽう、「同じ」が連体修飾のはたらきをして「秋の夕暮れ」にかかるとも考えられます。『岩波古語辞典 補訂版』を見ると「連体形オナジキの形は、平安時代には漢文訓読体に使われ、和歌や女流文学では源氏物語以前は殆ど使われていない。」とあるので、「同じ」が「秋の夕暮れ」にかかると判断するのが妥当かと思われます。この場合は「句切れなし」です。

※参考:形容詞の活用表

古文の形容詞一覧

古文の形容詞一覧

体言止め(たいげんどめ)。和歌が「夕暮れ」という体言(名詞)で終わっているので、「体言止め」です。

※「已然形 + ば」の形で、「~なので」「~すると」などの意味を表します。それぞれの意味は文脈から判断します。

順接確定条件

順接確定条件

助詞の解説は「古典の助詞の覚え方」にまとめましたのでご確認ください。
 

語釈(言葉の意味)

 

詞書(ことばがき)

※詞書とは、和歌がよまれた事情を説明する短い文のことで、和歌の前に置かれます。

題不知(だいしらず)(※和歌の題やよまれた事情が明らかでないこと。)

※詞書の引用は『新日本古典文学大系 後拾遺和歌集』(久保田淳・平田喜信、1994年、岩波書店、108ページ)によります。
 

さびしさに

「に」は原因・理由を示す格助詞。(『新日本古典文学大系 後拾遺和歌集』108ページ)
 

宿を立ち出でて

自分一人の寂寥感かと、家(庵)を出立って。(『新日本古典文学大系 後拾遺和歌集』108ページ)
 

ながむ【眺む】

現代語の「眺める」とは違って、ぼんやりと戸外に目をやりながら物思いにふけることをいう。(中略)
 ところで、「ながめつつ人待つ宵の呼子鳥(よぶこどり)いづかたへとかゆきかへるらむ」(後撰集・恋五・寛湛法師母)のように、外を見出しながら宵にかよってくる男を待って、所在なげにぼんやりとしているのが「ながむ」であることによっても類推されるように、「ながむ」は「つれづれ」(※物事が長く続くこと。退屈なこと。 引用者補)という語とともによまれることが多かった。「つれづれとながむる空のほととぎすとふにつけてぞ音(ね)は鳴かれける」(後撰集・夏・読人不知)「つれづれのながめにまさる涙川袖のみ濡れて逢ふよしもなし」(古今集・恋三・敏行)のほか、和泉式部の歌などに特に多い。何も手につかず、所在なげにぼんやりと戸外に目をやる、すなわち「つれづれなる」状態でぼんやりと戸外に視線をやっている、これが「ながむ」であり「ながめ」であったのである。(後略)
『歌枕 歌ことば辞典』片桐洋一、笠間書院、1999年

 

百人一首の現代語訳と文法解説はこちらで確認

こちらは小倉百人一首の現代語訳一覧です。それぞれの歌の解説ページに移動することもできます。

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あきぜに ぎりす はるぎて
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あさぼらけ たびは ひとをし
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あはしま びしさに みかもり
あはとも ぶれど みかはら
みての つゆに ばやな
あふとの みのえの のくの
あまかぜ をはやみ しのの
あまはら さごの らさめの
あららむ のおとは ぐりあひて
あらふく のうらに しきや
ありけの わかれ ともに
ありやま のをよ らはで
しへの をかも むぐら
いまむと ちぎりきし やまはに
いまただ ちぎり やまとは
りける やぶる されば
みわび みれば のとを
やまに ばねの よのなか
にきく ながらむ よのなか
おほやま ながへば すがら
おほなく なげつつ こめて
ひわび なげとて わがほは
とだに のよは わがでは
さぎの なにおはば わするる
かぜよぐ なには わすじの
かぜいたみ なには わたのはら
きみがため はなそふ わたのはら
きみがため はないろは ぬれば
らやま

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運営者 : honda
都内の私立大学 文学部国文学専攻出身
お菓子メーカー勤務のサラリーマン
趣味は歌舞伎鑑賞(2012年~)
歌舞伎の観客のすそ野を広げるには古典教育から見直す必要があると考えているので、このブログで古文にまつわる情報を発信しております。


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