91~100番歌

百人一首の意味と文法解説(100)百敷や古き軒端のしのぶにもなほあまりある昔なりけり┃順徳院

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-100

投稿日:2018年3月12日 更新日:

ももしきや古きのきばのしのぶにもなほあまりある昔なりけり

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小倉百人一首から、順徳院の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。

また、くずし字・変体仮名で書かれた江戸時代の本の画像も載せております。

ふだん我々が使っている字の形になおした(翻刻と言う)ものと、ひらがなのもとになった漢字(字母)も紹介しておりますので、ぜひ見比べてみてください。

原文

ogura-hyakunin-isshu-100

百人一首(100)百敷や古き軒端のしのぶにもなほあまりある昔なりけり


画像転載元
国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541162         

翻刻(ほんこく)(普段使っている字の形になおす)

hyakuni-isshu-honkoku-100

百人一首(100)百敷や古き軒端のしのぶにもなほあまりある昔なりけり

釈文(しゃくもん)(わかりやすい表記)

順徳院
ももしきや 古きのきばの しのぶにも なほあまりある 昔なりけり
 

字母(じぼ)(ひらがなのもとになった漢字)

hyakunin-isshu-jibo-100

百人一首(100)百敷や古き軒端のしのぶにもなほあまりある昔なりけり

現代語訳(歌意)・文法解説

宮中の古い軒端に生えている忍ぶ草を見るにつけても、やはり偲びつくせないほど慕わしく思われる昔であることだ。

百敷や古き軒端のしのぶにもなほあまりある昔なりけり

百敷や古き軒端のしのぶにもなほあまりある昔なりけり

掛詞(かけことば)。音が同じことを利用して二つの意味を表すことです。「しのぶ」が「偲ぶ」と「忍ぶ草」を表します。

※過去の助動詞「けり」が和歌の中で使われる場合は基本的に、詠嘆(えいたん)(~だなあ・~ことだ)の意味で訳します。

 
▽承久(じょうきゅう)の乱直前、公武間の緊張が高まりつつあった時期における、若き天皇の親政へと向かう篤き志。(『和歌文学大系 続後撰和歌集』佐藤恒雄、2017年、明治書院、211ページ)
 

語釈(言葉の意味)

※特記のないかぎり『岩波 古語辞典 補訂版』(大野晋・佐竹昭広・前田金五郎 編集、岩波書店、1990年)による。
 

ももしき【百敷】

内裏(だいり)。宮中。(『和歌文学大系 続後撰和歌集』210ページ)

●ももしき【百敷】

本来は「ももしきの」という形で「大宮」に掛かる枕詞であり、「……ももしきの 大宮所 やむ時もあらめ」(万葉集・巻六・赤人)「ももしきの大宮人のまかり出て遊ぶ今夜(こよひ)の月のさやけさ」(同・巻七)のように用いられていたが、「別るれどあひも惜しまぬももしきを見ざらむことや何か悲しき」(後撰集・離別・伊勢、大和物語・一段)のように「ももしき」すなわち「大宮(内裏)」の意で用いられた。(後略)
『歌枕 歌ことば辞典』片桐洋一、笠間書院、1999年

 

ふるき軒端のしのぶにも

旧い軒端に生えた忍ぶ草(荒れた皇居)を見るにつけても。「しのぶ」に昔を「偲ぶ」と植物の「忍草(しのぶぐさ)」を懸ける。(『和歌文学大系 続後撰和歌集』210ページ)
 

軒端

軒の端。また、軒下。「稲妻の光だにこぬ屋がくれは―の苗も物思ふらし」〈かげろふ中〉
 

しの・び【偲び】

一〘四段〙
①賞美する。「黄葉(もみち)をば取りてそ―・ふ」〈万一六〉。「あしひきの山下ひかげ鬘(かづら)ける上にや更に梅を―・はむ」〈万四二七八〉
②遠い人、故人などを思慕する。「あが思ふ妻ありと言はばこそよ、家にも行かめ、国をも―・はめ」〈記歌謡九〇〉。「直(ただ)の逢ひは逢ひかつましじ石川に雲立ち渡れ見つつ〔亡キ夫ヲ〕―・はむ」〈万二二五〉
 

しのぶぐさ【忍草】

しのぶ草は今のノキシノブ。樹皮・岩石・軒端などに生える。(中略)
 さて、『新古今集』に見られる「しのぶ」「しのぶ草」を見ると、次の三つに分けられる。(一)昔ヲ偲ブ・人ヲ思慕スルの意を含むもの――「橘の花散る軒のしのぶ草昔をかけて露ぞこぼるる」(夏・忠良)「明暮は昔をのみぞしのぶ草葉ずゑの露に袖ぬらしつつ」(雑中・成仲)、(二)人目ヲ忍ブ、隠レルの意を含む――「しのぶ草いかなる露かおきつらむ今朝は根もみなあらはれにけり」(雑下・済時)、(三)堪エ忍ブ、我慢スルの意を含む――「我が恋も今は色にや出でなまし軒のしのぶも紅葉しにけり」(恋一・有仁)「深き夜の窓うつ雨に音せぬはうき世を軒のしのぶなりけり」(釈教・寂蓮)の三つの用法がそれである。(後略)
『歌枕 歌ことば辞典』片桐洋一、笠間書院、1999年

(※ここでは(一)の意。)
 

猶あまりある昔なりけり

いくら忍んでも忍び尽くせない古(いにしえ)の聖代であるよ。(『和歌文学大系 続後撰和歌集』210ページ)
 

百人一首の現代語訳と文法解説はこちらで確認

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あさぼらけ たびは ひとをし
あさぼらけ すてふ くからに
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あはとも ぶれど みかはら
みての つゆに ばやな
あふとの みのえの のくの
あまかぜ をはやみ しのの
あまはら さごの らさめの
あららむ のおとは ぐりあひて
あらふく のうらに しきや
ありけの わかれ ともに
ありやま のをよ らはで
しへの をかも むぐら
いまむと ちぎりきし やまはに
いまただ ちぎり やまとは
りける やぶる されば
みわび みれば のとを
やまに ばねの よのなか
にきく ながらむ よのなか
おほやま ながへば すがら
おほなく なげつつ こめて
ひわび なげとて わがほは
とだに のよは わがでは
さぎの なにおはば わするる
かぜよぐ なには わすじの
かぜいたみ なには わたのはら
きみがため はなそふ わたのはら
きみがため はないろは ぬれば
らやま

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都内の私立大学 文学部国文学専攻出身
お菓子メーカー勤務のサラリーマン
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歌舞伎の観客のすそ野を広げるには古典教育から見直す必要があると考えているので、このブログで古文にまつわる情報を発信しております。


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