0~10番歌

百人一首の意味と文法解説(4)田子の浦にうち出でて見れば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ┃山部赤人

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-4

投稿日:2018年3月10日 更新日:

たごのうらにうちいでて見ればしろたへのふじのたかねに雪はふりつつ

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小倉百人一首から、山部赤人(山辺赤人)の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。

また、くずし字・変体仮名で書かれた江戸時代の本の画像も載せております。

ふだん我々が使っている字の形になおした(翻刻と言う)ものと、ひらがなのもとになった漢字(字母)も紹介しておりますので、ぜひ見比べてみてください。

原文

ogura-hyakunin-isshu-4

百人一首(4)田子の浦にうち出でて見れば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ


画像転載元
国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541162

翻刻(ほんこく)(普段使っている字の形になおす)

hyakuni-isshu-honkoku-4

百人一首(4)田子の浦にうち出でて見れば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ

釈文(しゃくもん)(わかりやすい表記)

山辺赤人
田子の浦に うち出でて見れば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ
 

字母(じぼ)(ひらがなのもとになった漢字)

hyakunin-isshu-jibo-4

百人一首(4)田子の浦にうち出でて見れば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ

現代語訳(歌意)・文法解説

※この和歌の題やよまれた事情は明らかでない。

田子の浦に出て見ると、富士の高嶺に真っ白な雪が降っている。

田子の浦にうち出でて見れば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ

田子の浦にうち出でて見れば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ

※「已然形 + ば」の形で、「~なので」「~すると」などの意味になります。くわしくは「古典の助詞の覚え方」の接続助詞「ば」の項目をご覧ください。

※「白妙の」は「白いもの」を導きだす枕詞(まくらことば)です。枕詞とは、音や意味から特定の言葉をみちびきだす言葉で、多くの場合、5音(5文字)におさまります。いっぽう、序詞(じょことば)は枕詞と同じようなはたらきをしますが、5音(5文字)以上で枕詞よりも長いです。(例:「あしびきの山鳥の尾のしだり尾の」が「ながながし」を導きだします。)

※「見る」は上一段活用動詞の代表例です。上一段動詞は種類が少なく、おもに「干る・射る・着る・煮る・似る・見る・居る・率る」の8種類です。「ひいきにみゐる上一段」と覚えます。

ひいきにみゐる上一段

ひいきにみゐる上一段

そのほかの動詞の活用は「古典の動詞の活用表の覚え方」でご確認ください。
 

語釈(言葉の意味)

※特記のないかぎり『岩波 古語辞典 補訂版』(大野晋・佐竹昭広・前田金五郎 編集、岩波書店、1990年)による。
 

詞書(ことばがき)

※詞書とは、和歌がよまれた事情を説明する短い文のことで、和歌の前につけられます。

題しらず(※和歌の題やよまれた事情が明らかでないこと。)

※詞書の引用は『新日本古典文学大系 新古今和歌集』(田中裕・赤瀬信吾、1992、岩波書店、200ページ)によります。
 

たごのうら【田子浦】

駿河国の歌枕。静岡県富士市の田子の浦がその地とされているが、『万葉集』の「田子の浦ゆうち出(い)でて見ればま白にぞ富士の高嶺(たかね)に雪は降りける」(巻三・赤人)の「田子の浦ゆ」は「田子の浦を通って」と訳すほかはないので、当時の田子の浦は、むしろ富士山が見えない山蔭(やまかげ)であったということになり、富士川河口の西、由比、西倉沢、薩埵山(さったやま)のあたりを考えるのが通説になっている。しかし、この歌が平安時代後期の『万葉集』のよみ方の一つに従って「田子の浦に……」と改まって『新古今集』や『百人一首』にとられると、「田子の浦」は「富士山」がよく見える所でなければならなくなり、今の名勝「田子の浦」ができあがったのである。(後略)
歌枕 歌ことば辞典』片桐洋一、笠間書院、1999年

補足:田子の浦

※現在、「田子の浦」とされているところは、富士山のすぐ南側、富士川河口の東側です。いっぽう、赤人の時代の「田子の浦」だと考えられている由比は、富士川河口の西側で、現在はパーキングエリアがあります。

現在の「田子の浦」よりもやや西側

現在の「田子の浦」よりもやや西側


 

うち出で

うちい・で【打ち出で】
➊《行動について》
①広広した所へ出る。「田子の浦ゆ―・でて見れば真白にそ富士の高嶺に雪は降りける」〈万三一八〉。「左右なう広みへ―・でなば、敵は案内者、我等は無案内なり。とりこめられてはあしかりなん」〈平家七・願書〉
 

しろたへ【白栲・白妙(しろたえ)】

梶の木などの木の皮の繊維で織った素朴な白い布。「我がためと七夕(たなばた)つ妻(め)のそのやどに織(お)る白栲(しろたへ)は織(お)りてけむかも」(万葉集・巻十)は「布」そのものをよんだ例である。「……玉ほこの 道来る人の 泣く涙 こさめに降れば 白たへの 衣ひちて……」(万葉集・巻二)「さ寝(ね)そめていくだもあらねば白栲(しろたへ)の帯乞(こ)ふべしや恋も過ぎねば」(同・巻十)のように必ずしも白色とは思えない繊維製品に枕詞として掛かる例がある一方、「まそ鏡照るべき月を白妙の雲か隠せる天つ霧かも」(万葉集・巻七)「わたつ海のかざしにさせる白妙の浪もてゆへる淡路島山」(古今集・雑上・読人不知)のように「雲」や「浪」に枕詞として掛かるのはその「雲」や「浪」が白かったからであろう。『百人一首』にもあって有名な「田子の浦にうち出でて見ればしろたへの富士の高嶺に雪は降りつつ」(新古今集・冬・赤人)の「しろたへの雪」も同じである。(後略)
『歌枕 歌ことば辞典』片桐洋一、笠間書院、1999年

 

作者:山部赤人(やまべのあかひと)について

聖武天皇の時代の人

「山部」を「山辺」と書いたり、「赤人」を「明人」と書いたりします。

生没年未詳。山部赤人の生まれた年も死んだ年もよくわかっておらず、また、父母も未詳ですが、聖武(しょうむ)天皇期に活躍した人物と思われます。

聖武天皇

聖武天皇


 

三十六歌仙(さんじゅうろっかせん)

赤人は三十六歌仙の一人に選ばれています。

三十六歌仙とは、平安時代中期に藤原公任(ふじわらのきんとう)(966~1041年)がつくった『三十六人集』(『三十六人撰』とも言う)にもとづく36人のすぐれた歌人のことです。

人麿・貫之・躬恒・伊勢・家持・赤人・業平・遍昭・素性・友則・猿丸大夫・小町・兼輔・朝忠・敦忠・高光・公忠・忠岑・斎宮女御・頼基・敏行・重之・宗于・信明・清正・順・興風・元輔・是則・元真・小大君・仲文・能宣・忠見・兼盛・中務

人麿・貫之・躬恒・伊勢・家持・赤人・業平・遍昭・素性・友則・猿丸大夫・小町・兼輔・朝忠・敦忠・高光・公忠・忠岑・斎宮女御・頼基・敏行・重之・宗于・信明・清正・順・興風・元輔・是則・元真・小大君・仲文・能宣・忠見・兼盛・中務


 

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あきぜに ぎりす はるぎて
あきたの こころてに はるよの
ぬれば こころ かたの
あさふの ひとを ひといさ
あさぼらけ たびは ひとをし
あさぼらけ すてふ くからに
ひきの やこの ととぎす
あはしま びしさに みかもり
あはとも ぶれど みかはら
みての つゆに ばやな
あふとの みのえの のくの
あまかぜ をはやみ しのの
あまはら さごの らさめの
あららむ のおとは ぐりあひて
あらふく のうらに しきや
ありけの わかれ ともに
ありやま のをよ らはで
しへの をかも むぐら
いまむと ちぎりきし やまはに
いまただ ちぎり やまとは
りける やぶる されば
みわび みれば のとを
やまに ばねの よのなか
にきく ながらむ よのなか
おほやま ながへば すがら
おほなく なげつつ こめて
ひわび なげとて わがほは
とだに のよは わがでは
さぎの なにおはば わするる
かぜよぐ なには わすじの
かぜいたみ なには わたのはら
きみがため はなそふ わたのはら
きみがため はないろは ぬれば
らやま

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都内の私立大学 文学部国文学専攻出身
お菓子メーカー勤務のサラリーマン
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