41~50番歌

百人一首の意味と文法解説(45)あはれともいふべき人は思ほえで身のいたづらになりぬべきかな┃謙徳公

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-45

投稿日:2018年3月12日 更新日:

あはれとも言ふべき人はおもほえで身の徒らになりぬべきかな

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小倉百人一首から、謙徳公の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。

また、くずし字・変体仮名で書かれた江戸時代の本の画像も載せております。

ふだん我々が使っている字の形になおした(翻刻と言う)ものと、ひらがなのもとになった漢字(字母)も紹介しておりますので、ぜひ見比べてみてください。

原文

ogura-hyakunin-isshu-45

百人一首(45)あはれともいふべき人は思ほえで身のいたづらになりぬべきかな

画像転載元
国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541162

翻刻(ほんこく)(普段使っている字の形になおす)

hyakuni-isshu-honkoku-45

百人一首(45)あはれともいふべき人は思ほえで身のいたづらになりぬべきかな

釈文(しゃくもん)(わかりやすい表記)

謙徳公
あはれとも 言ふべき人は 思ほえで 身のいたづらに なりぬべきかな
 

字母(じぼ)(ひらがなのもとになった漢字)

hyakunin-isshu-jibo-45

百人一首(45)あはれともいふべき人は思ほえで身のいたづらになりぬべきかな

現代語訳(歌意)・文法解説

※情を通わせていた女性が、その後、冷淡になって、まったく逢(あ)わなくなってしまったので、よんだ歌。

たとえ恋こがれて死んだとしても、私を「ああ、かわいそうだ」と言ってくれそうな人は思い浮かばず、きっと私はむなしく死んでしまうのだろうな。

あはれともいふべき人は思ほえで身のいたづらになりぬべきかな

あはれともいふべき人は思ほえで身のいたづらになりぬべきかな

※完了の助動詞「ぬ」は、推量の助動詞の前について、強意(きっと~)の意味を表す場合が多いです。

▽つれない相手に憐憫の情を求め、切実に訴えかけたもの。(『新日本古典文学大系 拾遺和歌集』小町谷照彦、岩波書店、1990年、272ページ)
 

語釈(言葉の意味)

※特記のないかぎり『岩波 古語辞典 補訂版』(大野晋・佐竹昭広・前田金五郎 編集、岩波書店、1990年)による。
 

詞書(ことばがき)

※詞書とは、和歌がよまれた事情を説明する短い文のことで、和歌の前に置かれます。

もの言ひ侍(はべり)ける女の後(のち)につれなく侍(はべり)て、さらに逢(あ)はず侍(はべり)ければ(※情を通わせていた女性が、その後、冷淡になって、まったくあわなくなってしまったので、よんだ歌。)

※詞書の引用は『新日本古典文学大系 拾遺和歌集』(272ページ)によります。
 

あはれ

①讃嘆・喜びの気持を表わす声。「あな―、布当(ふたぎ)の原、いと貴(たふと)、大宮処」〈万一〇五〇〉。「―、あな面白」〈古語拾遺〉
③愛情・愛惜の気持を表わす声。「門(かど)ささず―吾妹子(わぎもこ)待ちつつあらむ」〈万二五九四〉。「〔死人ヲ見テ〕旅に臥(こや)せるこの旅人―」〈万四一五〉。「〔家ガ〕みな荒れにたれば―とぞ人人言ふ」〈土佐二月十六日〉
 

あはれとも言ふべき人

自分に対して、同情共感してくれそうな人。(『新日本古典文学大系 拾遺和歌集』272ページ)
 

べし

〔意味〕
「べし」の意味の根本は、物事の動作・状態を「必然・当然の理として納得する外はない状態である」と判断を下す点にある。個人の好き嫌い・希望などを超えた必然的な状態と判断することであるから、道理から当然であること、あるいは、「…すべきである」と義務を表わす場合もあり(1)、運命であることを示すこともある(2)。(中略)第三人称の動作についた推量の場合にも、「まさに…しそうである」「必ずそうなる、…に相違ない」という極めて強い確信を表わすので、確認を表わす「つ」「ぬ」と共に使われることが多い(5)。(中略)

(1)「食す国天の下の政は平けく安く仕へ奉るべしとなも思ほしめす」〈続紀宣命二四〉「大夫は名をし立つべし後の代に聞き継ぐ人も語り継ぐがね」〈万四一六五〉「艶に物恥ぢして恨み言ふべき事をも見知らぬさまに忍びて」〈源氏・帚木〉
(2)「世の中は数なきものか春花の散りのまがひに死ぬべき思へば」〈万三九六三〉「あから引く色妙の子をしば見れば人妻故に吾恋ひぬべし」〈万一九九九〉
(5)「わが宿に盛りに咲ける梅の花散るべくなりぬ見む人もがも」〈万八五一〉「秋づけば尾花が上に置く露の〔ヨウニ〕消ぬべくも吾は思ほゆるかも」〈万一五六四〉「家に行きていかにか吾がせむ枕付く妻屋さぶしく思ほゆべしも」〈万七九五〉
 

思ほえで

(※ヤ行下二「思ほゆ」未然形 + 打消の接続助詞「で」:「思われずに」の意。)

●おもほ・え【思ほえ】
〘下二〙
自然に、思われる。ひとりでに、思われてくる。「〔死ンダ子供ガ〕間(あひだ)もなくも―・ゆるかも」〈紀歌謡一一八〉。「苦しければ、何ごとも―・えず(感興ガワカナイ)」〈土佐一月十八日〉

●で
(※~ないで)
 

み【身】

一〘名〙
①人や動物の肉体。身体。「吾が―こそ関山越えてここにあらめ心は妹に寄りにしものを」〈万三七五七〉
②わが身。自分。「これは―の為も人の御為も、よろこびには侍らずや」〈枕八二〉
 

いたづらになる

●いたづら【徒ら】
《当然の期待に反して、無為・無用で、何の役にも立たないことが原義》
①なにもすることがない状態。ひま。「時の盛りを―に過ぐしやりつれ(スゴシタノデ)」〈万三九六九〉。「船も出さで―なれば〔歌ヲヨム〕」〈土佐一月十八日〉。「又―に、いとまありげなる博士ども召し集めて〔文作リナドスル〕」〈源氏賢木〉

●―にな・る
むなしく終る。死ぬことなどにいう。「―・る人多かる水(宇治川)に侍り」〈源氏浮舟〉

べし

(※上記「べし」の(2)の意味。)
 

百人一首の現代語訳と文法解説はこちらで確認

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あきぜに ぎりす はるぎて
あきたの こころてに はるよの
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あさふの ひとを ひといさ
あさぼらけ たびは ひとをし
あさぼらけ すてふ くからに
ひきの やこの ととぎす
あはしま びしさに みかもり
あはとも ぶれど みかはら
みての つゆに ばやな
あふとの みのえの のくの
あまかぜ をはやみ しのの
あまはら さごの らさめの
あららむ のおとは ぐりあひて
あらふく のうらに しきや
ありけの わかれ ともに
ありやま のをよ らはで
しへの をかも むぐら
いまむと ちぎりきし やまはに
いまただ ちぎり やまとは
りける やぶる されば
みわび みれば のとを
やまに ばねの よのなか
にきく ながらむ よのなか
おほやま ながへば すがら
おほなく なげつつ こめて
ひわび なげとて わがほは
とだに のよは わがでは
さぎの なにおはば わするる
かぜよぐ なには わすじの
かぜいたみ なには わたのはら
きみがため はなそふ わたのはら
きみがため はないろは ぬれば
らやま

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都内の私立大学 文学部国文学専攻出身
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