51~60番歌

百人一首の意味と文法解説(56)あらざらむこの世のほかの思ひ出に今ひとたびの逢ふこともがな┃和泉式部

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-56

投稿日:2018年3月12日 更新日:

あらざらむこの世のほかの思ひ出にいまひとたびのあふこともがな

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小倉百人一首から、和泉式部の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。

また、くずし字・変体仮名で書かれた江戸時代の本の画像も載せております。

ふだん我々が使っている字の形になおした(翻刻と言う)ものと、ひらがなのもとになった漢字(字母)も紹介しておりますので、ぜひ見比べてみてください。

目次

原文

ogura-hyakunin-isshu-56

百人一首(56)あらざらむこの世のほかの思ひ出に今ひとたびの逢ふこともがな

画像転載元
国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541162

翻刻(ほんこく)(普段使っている字の形になおす)

hyakuni-isshu-honkoku-56

百人一首(56)あらざらむこの世のほかの思ひ出に今ひとたびの逢ふこともがな

釈文(しゃくもん)(わかりやすい表記)

和泉式部
あらざらむ この世のほかの 思ひ出に いまひとたびの 逢ふこともがな
 

字母(じぼ)(ひらがなのもとになった漢字)

hyakunin-isshu-jibo-56

百人一首(56)あらざらむこの世のほかの思ひ出に今ひとたびの逢ふこともがな

現代語訳(歌意)・文法解説

※気分がいつもとちがって悪かったころ、恋人のもとに、使者を立てて送った歌。

わたしはこのまま、この世からいなくなってしまうので、来世への思い出に、もう一度あなたにお逢いしたいのです。

あらざらむこの世のほかの思ひ出に今ひとたびの逢ふこともがな

あらざらむこの世のほかの思ひ出に今ひとたびの逢ふこともがな

※推量の助動詞「む」は基本的に、後ろに体言(名詞)が続くときは、婉曲(えんきょく)(~のような)の意味を表します。接続は未然形です。そのほかの未然形接続の助動詞は「古典の助動詞の活用表の覚え方」でご確認ください。

※終助詞「もがな」は願望(~だったらなあ、~があればなあ)の意味を表します。「もが・もがも・もがな・がな」は同じ意味を表す終助詞です。(例:「常にもがもな」・「言ふよしもがな」・「ながくもがな」・「命ともがな」・「くるよしもがな」など)。助詞の解説は「古典の助詞の覚え方」をご確認ください。
 

語釈(言葉の意味)

※特記のないかぎり『岩波 古語辞典 補訂版』(大野晋・佐竹昭広・前田金五郎 編集、岩波書店、1990年)による。
 

詞書(ことばがき)

※詞書とは、和歌のよまれた事情を説明する短い文のことで、和歌の前に置かれます。

心地(ここち)例ならず侍(はべ)りける頃、人のもとにつかはしける(※気分がふだんと異なり悪かったころ、恋人のもとに、使者を立てて送った歌。)

※詞書の引用は『新日本古典文学大系 後拾遺和歌集』(久保田淳・平田喜信、1994年、岩波書店、248ページ)によります。
 

あら

●あ・り【有り・在り】
一〘ラ変〙
➊空間的・時間的に存在する。あるいは他から存在が認識される。
①生物・無生物が(そこに)存在する。いる。「陸奥(みちのく)の小田なる山に黄金―・りと」〈万四〇九四〉。「葦鴨(あしがも)のすだく古江に〔鷹ハ〕一昨日(をとつひ)も昨日も―・りつ」〈万四〇一一〉
②この世に生きている。生きながらえる。「はしきやし妹が―・りせば」〈万四六六〉。「―・りけむさまなども、更に覚え侍らず」〈源氏手習〉
 

この世のほか

「来世なり」(百人一首改観抄)。(『新日本古典文学大系 後拾遺和歌集』248ページ)
 

いま【今】

〘名・副〙
①現在。まのあたり。「のちにも逢はむ―ならずとも」〈万六九九〉。「むかしを―になすよしもがな」〈伊勢三二〉
②(今度)あらたに加わる意。
㋺さらに。もう。「―二日あらば散りなむ」〈万三三九九〉。「―すこし寄りたまへ」〈源氏若紫〉
 

もがな

〘助〙《奈良時代のモガモの転。終助詞のモは平安時代にナに代られるのが一般であった》
①…が欲しい。「ながらへて君が八千代に逢ふよし―」〈古今三四七〉
②…でありたい。「世の中にさらぬ別れの無く―千代とも嘆く人の子の為」〈古今九〇一〉
 

百人一首の現代語訳と文法解説はこちらで確認

こちらは小倉百人一首の現代語訳一覧です。それぞれの歌の解説ページに移動することもできます。

●関連記事:娘の小式部内侍がよんだ和歌はこちら
大江山いくのの道の遠ければまだふみも見ず天の橋立(小式部内侍)

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あきぜにぎりすはるぎて
あきたのこころてにはるよの
ぬればこころかたの
あさふのひとをひといさ
あさぼらけたびはひとをし
あさぼらけすてふくからに
ひきのやこのととぎす
あはしまびしさにみかもり
あはともぶれどみかはら
みてのつゆにばやな
あふとのみのえののくの
あまかぜをはやみしのの
あまはらさごのらさめの
あららむのおとはぐりあひて
あらふくのうらにしきや
ありけのわかれともに
ありやまのをよらはで
しへのをかもむぐら
いまむとちぎりきしやまはに
いまただちぎりやまとは
りけるやぶるされば
みわびみればのとを
やまにばねのよのなか
にきくながらむよのなか
おほやまながへばすがら
おほなくなげつつこめて
ひわびなげとてわがほは
とだにのよはわがでは
さぎのなにおはばわするる
かぜよぐなにはわすじの
かぜいたみなにはわたのはら
きみがためはなそふわたのはら
きみがためはないろはぬれば
らやま

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都内の私立大学 文学部国文学専攻出身
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