21~30番歌

百人一首の意味と文法解説(28)山里は冬ぞさびしさまさりける人めも草もかれぬと思へば┃源宗于朝臣

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-28

投稿日:2018年3月11日 更新日:

山里は冬ぞさびしさまさりける人めも草もかれぬと思へば

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小倉百人一首から、源宗于朝臣の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。

また、くずし字・変体仮名で書かれた江戸時代の本の画像も載せております。

ふだん我々が使っている字の形になおした(翻刻と言う)ものと、ひらがなのもとになった漢字(字母)も紹介しておりますので、ぜひ見比べてみてください。

目次

原文

ogura-hyakunin-isshu-28

百人一首(28)山里は冬ぞさびしさまさりける人めも草もかれぬと思へば

画像転載元
国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541162

翻刻(ほんこく)(普段使っている字の形になおす)

hyakuni-isshu-honkoku-28

百人一首(28)山里は冬ぞさびしさまさりける人めも草もかれぬと思へば

釈文(しゃくもん)(わかりやすい表記)

源宗于朝臣
山里は 冬ぞさびしさ まさりける 人目も草も かれぬと思へば
 

字母(じぼ)(ひらがなのもとになった漢字)

hyakunin-isshu-jibo-28

百人一首(28)山里は冬ぞさびしさまさりける人めも草もかれぬと思へば

現代語訳(歌意)・文法解説

※冬の歌といって、よんだ歌。

山里は、冬が特にさびしさのまさって感じられることだ。人のおとずれもとだえて、草木も枯れてしまうから。

冬ぞさびしさまさりける

冬ぞさびしさまさりける

人目も草もかれぬと思へば

人目も草もかれぬと思へば

※係り結びと係助詞の解説は「古典の助詞の覚え方」をご覧ください。

※倒置(とうち)。倒置とは、文の順番を逆にいれかえて強調することです。第4・5句目(人のおとずれもとだえて、草木も枯れてしまうから)から、第1~3句目(山里は冬が特にさびしさのまさって感じられることだ)につながっていきます。

※3句切れ。終止形や係り結びのあるところで、和歌の意味が切れる場合が多いです。
 

語釈(言葉の意味)

※特記のないかぎり『岩波 古語辞典 補訂版』(大野晋・佐竹昭広・前田金五郎 編集、岩波書店、1990年)による。
 

詞書(ことばがき)

※詞書とは、和歌のよまれた事情や背景を説明した短い文で、和歌の前につけます。

冬の歌とて、よめる(※冬の歌といって、よんだ歌。)

※詞書の引用は『新日本古典文学大系 古今和歌集』(小島憲之・新井栄蔵、岩波書店、1989年、105ページ)によります。
 

やまざと【山里】

①普通は人の住まない山にある人里。山の中の里。「春たてど花も匂はぬ―は物憂かるねにうぐひすぞ鳴く」〈古今一五〉
 

ひとめ【人目】

①他人の見る目。世人の注目。「止まず行かば―を多み、まねく行かば人知りぬべみ」〈万二〇七〉
④人が会いにくること。人の出入り。「山里は冬ぞさびしさまさりける―も草もかれぬと思へば」〈古今三一五〉。「宮のうち、やうやう―見え」〈源氏蓬生〉
 

かれ

(※「枯れ」と「離れ」を掛ける。)

●か・れ【離れ】
〘下二〙《空間的・心理的に、密接な関係にある相手が疎遠になり、関係が絶える意。多く歌に使われ、「枯れ」と掛詞になる場合が多い。(略)》
①間遠になる。途絶える。「珠に貫(ぬ)く楝(あふち)を家に植ゑたらば山ほととぎす―・れず来むかも」〈万三九一〇〉。「世の中の人の心は、目―・るれば忘れぬべき物にこそあめれ」〈伊勢四六〉
 

作者:源宗于(みなもとのむねゆき)について

光孝天皇の孫

生年未詳。源宗于の生まれた年はよくわかっていません。天慶(てんぎょう)2年(939)に没しました。

光孝天皇(こうこうてんのう)の皇子、是忠(これただ)親王の子です。

源宗于の系図:仁明・文徳・清和・陽成・光孝・宇多・醍醐・朱雀・村上

源宗于の系図:仁明・文徳・清和・陽成・光孝・宇多・醍醐・朱雀・村上

 

右京大夫(うきょうのだいぶ)

承平(じょうへい)3年(933)、正四位下(しょうしいのげ)右京大夫(うきょうのだいぶ)になりました。

※右京大夫…右京職(うきょうしき)の長官。京の行政・司法・警察を担当するのが京職(きょうしき)で、左京と右京にわかれました。南を向いた(南面した)天皇から見て、左側が左京(京の東半分)、右側が右京(京の西半分)です。

右京と左京

右京と左京

 

三十六歌仙(さんじゅうろっかせん)

源宗于は三十六歌仙の一人にあげられます。

三十六歌仙とは、平安時代中期に藤原公任(ふじわらのきんとう)(966~1041年)がつくった『三十六人集』(『三十六人撰』とも言う)にもとづく36人のすぐれた歌人のことです。

人麿・貫之・躬恒・伊勢・家持・赤人・業平・遍昭・素性・友則・猿丸大夫・小町・兼輔・朝忠・敦忠・高光・公忠・忠岑・斎宮女御・頼基・敏行・重之・宗于・信明・清正・順・興風・元輔・是則・元真・小大君・仲文・能宣・忠見・兼盛・中務

人麿・貫之・躬恒・伊勢・家持・赤人・業平・遍昭・素性・友則・猿丸大夫・小町・兼輔・朝忠・敦忠・高光・公忠・忠岑・斎宮女御・頼基・敏行・重之・宗于・信明・清正・順・興風・元輔・是則・元真・小大君・仲文・能宣・忠見・兼盛・中務

 

百人一首の現代語訳と文法解説はこちらで確認

こちらは小倉百人一首の現代語訳一覧です。それぞれの歌の解説ページに移動することもできます。

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あきぜにぎりすはるぎて
あきたのこころてにはるよの
ぬればこころかたの
あさふのひとをひといさ
あさぼらけたびはひとをし
あさぼらけすてふくからに
ひきのやこのととぎす
あはしまびしさにみかもり
あはともぶれどみかはら
みてのつゆにばやな
あふとのみのえののくの
あまかぜをはやみしのの
あまはらさごのらさめの
あららむのおとはぐりあひて
あらふくのうらにしきや
ありけのわかれともに
ありやまのをよらはで
しへのをかもむぐら
いまむとちぎりきしやまはに
いまただちぎりやまとは
りけるやぶるされば
みわびみればのとを
やまにばねのよのなか
にきくながらむよのなか
おほやまながへばすがら
おほなくなげつつこめて
ひわびなげとてわがほは
とだにのよはわがでは
さぎのなにおはばわするる
かぜよぐなにはわすじの
かぜいたみなにはわたのはら
きみがためはなそふわたのはら
きみがためはないろはぬれば
らやま

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