71~80番歌

百人一首の意味と文法解説(73)高砂の尾の上の桜咲きにけり外山の霞たたずもあらなむ┃権中納言匡房

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-73

投稿日:2018年3月12日 更新日:

たかさごの尾の上の桜咲きにけり外山のかすみ立たずもあらなむ

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小倉百人一首から、権中納言匡房の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。

また、くずし字・変体仮名で書かれた江戸時代の本の画像も載せております。

ふだん我々が使っている字の形になおした(翻刻と言う)ものと、ひらがなのもとになった漢字(字母)も紹介しておりますので、ぜひ見比べてみてください。

原文

ogura-hyakunin-isshu-73

百人一首(73)高砂の尾の上の桜咲きにけり外山の霞たたずもあらなむ


画像転載元
国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541162

翻刻(ほんこく)(普段使っている字の形になおす)

hyakuni-isshu-honkoku-73

百人一首(73)高砂の尾の上の桜咲きにけり外山の霞たたずもあらなむ

釈文(しゃくもん)(わかりやすい表記)

前中納言匡房(権中納言匡房)
高砂の 尾の上の桜 咲きにけり 外山の霞 立たずもあらなむ
 

字母(じぼ)(ひらがなのもとになった漢字)

hyakunin-isshu-jibo-73

百人一首(73)高砂の尾の上の桜咲きにけり外山の霞たたずもあらなむ

現代語訳(歌意)・文法解説

※内大臣、藤原師道(ふじわらのもろみち)の邸宅で、人々が酒を飲んで、歌をよんでおりましたときに、「遠くに山桜をながめる」ということをよんだ歌。

小高い山の上に桜が咲いたことだ。まわりの人里に近い山々の霞は、どうか立たないでいてほしいものだ。

高砂の尾の上の桜咲きにけり外山の霞たたずもあらなむ

高砂の尾の上の桜咲きにけり外山の霞たたずもあらなむ

※三句切れ。終止形が和歌の切れ目となる場合が多いです。

※過去の助動詞「けり」は、和歌の中で使われる場合、基本的に詠嘆(えいたん)(~だなあ)の意味で訳します。

※「咲きにけり」のように、完了の助動詞と過去の助動詞を組み合わせて使う場合、多くの場合、「完了 → 過去」の順番です(例:「移りにけり」・「雲隠れにし」など)。助動詞の解説は「古文の助動詞の意味と覚え方」をご覧ください。

※「なむ」は他者に対する願望(~してほしい)の意味を表す終助詞です。いっぽう、自分の願望(~したい)を表す終助詞は「ばや」です。「なむ」も「ばや」も未然形接続です。

ばや・なむ

ばや・なむ

助詞の解説は「古文の助詞の覚え方」をご覧ください。
 

語釈(言葉の意味)

※特記のないかぎり『岩波 古語辞典 補訂版』(大野晋・佐竹昭広・前田金五郎 編集、岩波書店、1990年)による。
 

詞書(ことばがき)

※詞書とは、和歌のよまれた事情を説明する短い文のことで、和歌の前に置かれます。

内大(うちのおほい)まうちぎみの家にて、人々酒たうべて歌よみ侍(はべり)けるに、遥(はる)かに山桜を望むといふ心をよめる(※内大臣、藤原師道(ふじわらのもろみち)の邸宅で、人々が酒を飲んで、歌をよんでおりましたときに、「遠くに山桜をながめる」ということをよんだ歌。)

※注
○内大まうちぎみ ここでは藤原師道。

※詞書と注の引用は『新日本古典文学大系 後拾遺和歌集』(久保田淳・平田喜信、1994年、岩波書店、46ページ)によります。
 

たかさご【高砂】

 一般的には播磨国の歌枕として、今の兵庫県高砂市のこととする。高砂は本来加古川(かこがわ)の河口にできた三角洲で、「たか・いさご(高砂)」が約されたものかといわれている。しかし、和歌でよまれる場合は、本来的には、固有名詞ではなく普通名詞として小高い丘をいったようである。「高砂の尾上(をのへ)」と続けるのもそのためであり、『後撰集』にある素性法師の歌「山守(やまもり)は言はば言はなむ高砂の尾上(をのへ)の桜折りてかざさむ」が京都の花山にてよんだ歌であることによってもそれはわかる。なお、このことは『俊成髄脳』『奥義抄』『袖中抄』などの平安期の歌学書がすでに指摘しているところである。(後略)
『歌枕 歌ことば辞典』片桐洋一、笠間書院、1999年

○高砂
播磨国の歌枕。兵庫県高砂市、加古川河口付近の地名。ここは、「高」が掛詞となって高い山の意を添える。(『新日本古典文学大系 後拾遺和歌集』46ページ)
 

補足:高砂の地図

※高砂市(加古川の河口のあたり)の場所は下の図のとおりです。

高砂・加古川

高砂・加古川


 

をのへ

●をのへ ‥エ 【尾の上】
《ヲノウヘの約》
峠や丘や山頂などの、なだらかな高地の上。「秋萩の花咲きにけり高砂の―の鹿は今やなくらむ」〈古今二一八〉
 

とやま【外山】

奥山ではなく、人里に近い山。「深山(みやま)にはあられ降るらし―なるまさ木のかづら色づきにけり」〈古今一〇七七〉。「深からぬ―の庵(いほ)の寝ざめだに」〈新古今三九五〉
 

たつ

た・ち【立ち】
〘四段〙《自然界の現象や静止している事物の、上方・前方に向う動きが、はっきりと目に見える意。転じて、物が確実に位置を占めて存在する意》
➊自然界の現象が上方に向って動きを示し、確実にくっきりと目に見える。①(雲や霧などが)たちのぼる。「雲だにもしるくし―・たば何か嘆かむ」〈紀歌謡一一六〉。「君が行く海辺の宿に霧―・たば吾が立ち嘆く息と知りませ」〈万三五八〇〉
 

なむ

(※未然形+なむ:他者への願望(〜してほしい)の終助詞)
 

百人一首の現代語訳と文法解説はこちらで確認

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あきぜに ぎりす はるぎて
あきたの こころてに はるよの
ぬれば こころ かたの
あさふの ひとを ひといさ
あさぼらけ たびは ひとをし
あさぼらけ すてふ くからに
ひきの やこの ととぎす
あはしま びしさに みかもり
あはとも ぶれど みかはら
みての つゆに ばやな
あふとの みのえの のくの
あまかぜ をはやみ しのの
あまはら さごの らさめの
あららむ のおとは ぐりあひて
あらふく のうらに しきや
ありけの わかれ ともに
ありやま のをよ らはで
しへの をかも むぐら
いまむと ちぎりきし やまはに
いまただ ちぎり やまとは
りける やぶる されば
みわび みれば のとを
やまに ばねの よのなか
にきく ながらむ よのなか
おほやま ながへば すがら
おほなく なげつつ こめて
ひわび なげとて わがほは
とだに のよは わがでは
さぎの なにおはば わするる
かぜよぐ なには わすじの
かぜいたみ なには わたのはら
きみがため はなそふ わたのはら
きみがため はないろは ぬれば
らやま

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都内の私立大学 文学部国文学専攻出身
お菓子メーカー勤務のサラリーマン
趣味は歌舞伎鑑賞(2012年~)
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