百人一首

百人一首を解説するおすすめの本。小学生にわかりやすいのは?

百人一首を解説するおすすめの本。小学生にわかりやすいのは?

投稿日:2018年6月15日 更新日:

解説付きの百人一首の書籍はたくさんありますが、小学生の子どもも簡単に読める本はいったいどれなのでしょうか。基本的な古典文法から、恋にまつわる難しい言葉の意味まで、くわしく説明する本格的なもので、なおかつ手軽に手に取れる文庫本や漫画をご紹介します。また、当サイトでは小倉百人一首のすべての和歌に解説をつけました。それぞれの歌の解説ページでは、歌がよまれた事情や、作者がどのような人物だったのか、歴史的な背景をまじえてご紹介します。わかりやすい解説を心がけましたので、多くの方に百人一首の魅力が伝わればうれしいです。

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目次

おすすめの小倉百人一首の解説本

『百人一首』鈴木日出男・ちくま文庫

鈴木日出男(すずきひでお)先生は東京大学名誉教授の国文学者で、『新編日本古典文学全集 源氏物語』の編集も担当された有名な研究者です。

この本には現代語訳も作者の紹介も簡潔にまとめられているので、古典文学にくわしくない方でも簡単に読み進められるはずです。初心者の方が百人一首の「中級者」になるのにうってつけの本です。

 

『小学生のまんが百人一首辞典 改訂版』神作光一・学研プラス

監修者の神作光一(かんさくこういち)先生は東洋大学名誉教授の国文学者で、東洋大学学長や日本歌人クラブ会長もつとめられた研究者です。

この本は、かるた遊びの方法や歌の覚え方をまんがで解説しています。索引は上の句・下の句、両方ついているので、和歌の検索も自由自在です。カラフルな絵がたくさんのっているので、小さな子どもも楽しみながらスラスラ読めるはずです。

 

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百人一首のわかりやすい解説一覧

当サイトでは百人一首の一覧も公開中ですので、ご参照ください。
 

1~25

001 天智天皇 (てんじてんのう)

原文

秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ
(あきのたの かりほのいほの とまをあらみ わがころもでは つゆにぬれつつ)

解説

秋の田んぼの仮に作った小屋の苫があらいので、私の衣服のそでは露にぬれている。

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002 持統天皇 (じとうてんのう)

原文

春すぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山
(はるすぎて なつきにけらし しろたへの ころもほすてふ(ちょう) あまのかぐやま)

解説

春がすぎて夏が来たようだ。「夏になると衣をほす」という天の香具山に衣がほしてある。

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003 柿本人麻呂 (かきのもとのひとまろ)

原文

あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む
(あしひきの やまどりのを(お)の しだりを(お)の ながながしよを ひとりかもねむ(ん))

解説

山鳥の長くたれさがっている尾のように、長い夜をひとりでねるのだろうか。

くわしく見る

004 山辺赤人 (やまべのあかひと)

原文

田子の浦に うちいでて見れば 白妙の 富士の高嶺に 雪はふりつつ
(たごのうらに うちいでてみれば しろたへ(え)の ふじのたかねに ゆきはふりつつ)

解説

田子の浦に出てみると、富士の高嶺にまっ白な雪がふっている。

くわしく見る

005 猿丸大夫 (さるまるだゆう)

原文

奥山に 紅葉踏みわけ 鳴く鹿の 声聞くときぞ 秋は悲しき
(おくやまに もみぢふみわけ なくしかの こゑ(え)きくときぞ あきはかなしき)

解説

奥ぶかい山にもみじを踏みわけていき、鳴いている鹿の声を聞くときが、秋はとくに悲しいのだ。

くわしく見る

006 大伴家持 (おおとものやかもち)

原文

かささぎの わたせる橋に 置く霜の 白きを見れば 夜ぞふけにける
(かささぎの わたせるはし におくしもの しろきをみれば よぞふけにける)

解説

かささぎがつばさをならべてかけた橋、すなわち天の川に、霜がおいて白々とさえわたっているのを見ると、はやくも夜がふけたことだ。

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007 阿部仲麿 (あべのなかまろ)

原文

天の原 ふりさけみれば 春日なる 三笠の山に いでし月かも
(あまのはら ふりさけみれば かすがなる みかさのやまに いでしつきかも)

解説

ふりむいてひろびろとした大空を見わたすと、そこには夜空にかかる月、あれは、春日にある三笠の山にのぼった月なのだなあ。

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008 喜撰法師 (きせんほうし)

原文

わが庵は 都のたつみ しかぞ住む 世を宇治山と 人は言ふなり
(わがいほ(お)は みやこのたつみ しかぞすむ よをうぢやまと ひとはいふ(う)なり)

解説

私の仮の住まいは都の東南にあり、その「巽」(たつみ)という名のとおり慎ましく住んでいる。しかし、世間の人はここを、世間をさけて住む山、宇治山と言うらしい。

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009 小野小町 (おののこまち)

原文

花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに
(はなのいろは うつりにけりな いたづらに わがみよにふる ながめせしまに)

解説

花の色はおとろえてしまったなあ。私がこの世でむなしくすごしている間に、というわけではないけれど、ふりつづく長雨をぼんやりと見ながら物思いにふける間に。

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010 蝉丸 (せみまる)

原文

これやこの 行くも帰るも わかれては 知るも知らぬも 逢坂の関
(これやこの ゆくもかへるも わかれては しるもしらぬも あふ(おう)さかのせき)

解説

これがあの、東のほうへ行く人も都へ帰る人もここで別れ、また、知っている人も知らない人もここで会うという逢坂(おうさか)の関なのだ。

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011 参議篁 (さんぎたかむら)

原文

わたの原 八十島かけて 漕ぎいでぬと 人にはつげよ あまのつり舟
(わたのはら やそしまかけて こぎいでぬと ひとにはつげよ あまのつりぶね)

解説

「ひろびろとした海へ、多くの島々をめざして舟を漕ぎだして行った」と、京の都にいる人々に告げてくれ、漁師の釣り舟よ。

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012 僧正遍昭 (そうじょうへんじょう)

原文

天つ風 雲の通ひ路 ふきとぢよ をとめの姿 しばしとどめむ
(あまつかぜ くものかよひ(い)ぢ ふきとぢよ をとめのすがた しばしとどめむ(ん))

解説

大空を吹く風よ、雲の間のとおり道を吹き閉じてしまってくれ。五節(ごせち)に舞う少女の姿をしばらくとどめておきたいのだ。

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013 陽成院 (ようぜいいん)

原文

つくばねの みねよりおつる みなの川 恋ぞつもりて 淵となりぬる
(つくばねの みねよりおつる みなのがは こひ(い)ぞつもりて ふちとなりぬる)

解説

筑波山の峰から流れ落ちるみなの川の深いところのように、私の恋も積もりに積もって淵のように深くなったのだ。

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014 河原左大臣 (かわらのさだいじん)

原文

陸奥の しのぶもぢずり 誰ゆゑに みだれそめにし われならなくに
(みちのくの しのぶもぢずり たれゆゑ(え)に みだれそめにし われならなくに)

解説

陸奥国の信夫郡(しのぶぐん)で作られる忍草(しのぶぐさ)のすり染めの模様がみだれているように、あなた以外のだれかのせいで思いみだれた私ではないのに。

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015 光孝天皇 (こうこうてんのう)

原文

君がため 春の野にいでて 若菜つむ わが衣手に 雪はふりつつ
(きみがため はるののにいでて わかなつむ わがころもでに ゆきはふりつつ)

解説

あなたのために、春の野に出て若菜をつんでいる私のそでに、雪がふりかかってきております。

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016 中納言行平 (ちゅうなごんゆきひら)

原文

立ちわかれ いなばの山の みねに生ふる まつとし聞かば いま帰り来む
(たちわかれ いなばのやまの みねにおふ(う)る まつとしきかば いまかへ(え)りこむ(ん))

解説

出立してお別れして、去っていったならば、そこはもう因幡(いなば)の国です。その因幡山の峰に生えている松ではないけれど、「私を待っている」と聞いたならば、今すぐにも帰ってまいりましょう。

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017 在原業平朝臣 (ありわらのなりひらあそん)

原文

ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは
(ちはやぶる かみよもきかず たつたがは(わ) からくれなゐ(い)に みづくくるとは)

解説

神代(かみよ)のむかしにも聞いたことがない。竜田川の水の流れを深紅(しんく)にくくり染めにするとは。

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018 藤原敏行朝臣 (ふじわらのとしゆきあそん)

原文

住江の 岸による波 よるさへや 夢の通ひ路 人目よくらむ
(すみのえの きしによるなみ よるさへ(え)や ゆめのかよひ(い)ぢ ひとめよくらむ(ん))

解説

住の江の岸によせる波ではないけれど、昼だけでなく夜までも、どうしてあの人は夢のなかの通い路で人目をさけているのだろうか。

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019 伊勢 (いせ)

原文

難波潟 みじかき葦の ふしの間も あはでこの世を すぐしてよとや
(なには(わ)がた みじかきあしの ふしのまも あは(わ)でこのよを すぐしてよとや)

解説

難波潟(なにわがた)に生えている葦(あし)の、その短い節(ふし)と節の間のように短い間も、あなたに会わずにこの世を過ごせと言うのでしょうか。

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020 元良親王 (もとよししんのう)

原文

わびぬれば 今はたおなじ 難波なる みをつくしても 逢はむとぞ思ふ
(わびぬれば いまはたおなじ なには(わ)なる みをつくしても あは(わ)む(ん)とぞおもふ(う))

解説

なげいているので、今となってはやはり同じことだ。難波にある澪標(みおつくし)ではないけれど、この身をほろぼしても会おうと思うのだ。

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021 素性法師 (そせいほうし)

原文

いま来むと いひしばかりに 長月の 有明の月を 待ちいでつるかな
(いまこむと いひしばかりに ながつきの ありあけのつきを まちいでつるかな)

解説

あなたが「いま行きます」と言ったばかりに、九月の長い夜の、有り明けの月が出るまで、私はあなたが来るのか来ないのか考えながら、お待ちしてしまったことだ。

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022 文屋康秀 (ふんやのやすひで)

原文

ふくからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を あらしといふらむ
(ふくからに あきのくさきの しをるれば むべやまかぜを あらしといふらむ)

解説

ちょっと風が吹くだけで秋の草木がぐったりするので、なるほど、それで山から吹く風を「嵐」と言うのだろう。

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023 大江千里 (おおえのちさと)

原文

月みれば ちぢにものこそ 悲しけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど
(つきみれば ちぢにものこそ かなしけれ わがみひとつの あきにはあらねど)

解説

月を見ると、心がさまざまにみだれて悲しいことだ。私ひとりだけにおとずれる秋ではないのだが。

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024 菅家 (かんけ)

原文

このたびは 幣もとりあへず 手向山 紅葉のにしき 神のまにまに
(このたびは ぬさもとりあへず たむけやま もみぢのにしき かみのまにまに)

解説

今回の旅は幣(ぬさ)の用意もできませんでした。手向山(たむけやま)の色とりどりの紅葉の葉を幣として差し上げますので、神のお心にしたがってお受け取りください。

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025 三条右大臣 (さんじょうのうだいじん)

原文

名にしおはば 逢坂山の さねかづら 人にしられで くるよしもがな
(なにしおはば あふさかやまの さねかづら ひとにしられで くるよしもがな)

解説

「逢(あ)って寝る」という名を持っているならば、逢坂山(おうさかやま)のさねかずらよ、人に知られずにあなたのところに来ることができたらなあ。

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26~50

026 貞信公 (ていしんこう)

原文

小倉山 みねのもみぢ葉 心あらば いまひとたびの みゆき待たなむ
(をぐらやま みねのもみぢば こころあらば いまひとたびの みゆきまたなむ)

解説

小倉山(おぐらやま)の峰のもみじ葉よ、もし心があるならば、もう一度、天皇のおでましがあるまで散らずに待っていてほしいものだ。

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027 中納言兼輔 (ちゅうなごんかねすけ)

原文

みかの原 わきて流るる いづみ川 いつみきとてか 恋しかるらむ
(みかのはら わきてながるる いづみがは いつみきとてか こひしかるらむ)

解説

「甕(みか)」という名をもつ「みかの原」にわいてながれるいづみ川の、その「いつみ」ではないけれど、いつ見たということから、これほどまで恋しいのだろうか。

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028 源宗于朝臣 (みなもとのむねゆきあそん)

原文

山里は 冬ぞさびしさ まさりける 人めも草も かれぬと思へば
(やまざとは ふゆぞさびしさ まさりける ひとめもくさも かれぬとおもへば)

解説

山里は、冬がとくにさびしさのまさって感じられることだ。人のおとずれもなくなって、草木も枯れてしまうから。

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029 凡河内躬恒 (おおしこうちのみつね)

原文

心あてに 折らばや折らむ 初霜の おきまどはせる 白菊の花
(こころあてに をらばやをらむ はつしもの おきまどはせる しらぎくのはな)

解説

あて推量に、もし折るならば折ってしまおうか。初霜が置いて見分けがつかなくなっている白菊の花を。

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030 壬生忠岑 (みぶのただみね)

原文

有明の つれなく見えし わかれより 暁ばかり うきものはなし
(ありあけの つれなくみえし わかれより あかつきばかり うきものはなし)

解説

月が空にのこっているうちに夜明けになったそのころに、つめたく見えたあなたとの無情な別れ以来、暁(あかつき)ほどつらいものはない。

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031 坂上是則 (さかのうえのこれのり)

原文

朝ぼらけ 有明の月と みるまでに 吉野の里に ふれる白雪
(あさぼらけ ありあけのつきと みるまでに よしののさとに ふれるしらゆき)

解説

夜がほんのりと明けて、物がほのかに見えるころ、有り明けの月と思われるほどに、吉野の里にふった白雪である。

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032 春道列樹 (はるみちのつらき)

原文

山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ もみぢなりけり
(やまがはに かぜのかけたる しがらみは ながれもあへぬ もみぢなりけり)

解説

山を流れる川に風がかけている柵(さく)だと思ったのは、流れきらずにいる紅葉の葉であった。

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033 紀友則 (きのとものり)

原文

ひさかたの 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ
(ひさかたの ひかりのどけき はるのひに しづごころなく はなのちるらむ)

解説

日の光がやわらかな春の日に、なぜ落ちついた心もなく桜の花は散るのだろうか。

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034 藤原興風 (ふじわらのおきかぜ)

原文

誰をかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに
(たれをかも しるひとにせむ たかさごの まつもむかしの ともならなくに)

解説

いったいだれを本当の友人にしようか。あの高砂(たかさご)の松も古いとはいえ、昔からの私の友人というわけではないのだ。

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035 紀貫之 (きのつらゆき)

原文

人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける
(ひとはいさ こころもしらず ふるさとは はなぞむかしの かににほひける)

解説

人のほうは、心が変わったのか、さあわかりません。昔なじみのこの里では、花が昔のとおりの香りでにおっていることです。

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036 清原深養父 (きよはらのふかやぶ)

原文

夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月やどるらむ
(なつのよは まだよひながら あけぬるを くものいづこに つきやどるらむ)

解説

夏の夜は、まだ宵(よい)でありながら明けてしまうが、(西の空にしずむひまなどないはずだから)いったい雲のどのあたりに、月は宿をとっているのだろうか。

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037 文屋朝康 (ふんやのあさやす)

原文

白露に 風のふきしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける
(しらつゆに かぜのふきしく あきののは つらぬきとめぬ たまぞちりける)

解説

白露に風がしきりに吹きつける秋の野は、まるで糸につらぬきとめない玉を散らしたようだ。

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038 右近 (うこん)

原文

忘らるる 身をば思はず 誓ひてし 人の命の 惜しくもあるかな
(わすらるる みをばおもはず ちかひてし ひとのいのちの をしくもあるかな)

解説

あなたに忘れられる我が身のことは何とも思わないが、「心がわりしない」と誓ったあなたの命が、誓いをやぶった罰でうしなわれることがもったいなくも思われることだ。

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039 参議等 (さんぎひとし)

原文

浅茅生の をののしの原 しのぶれど あまりてなどか 人の恋しき
(あさぢふの をののしのはら しのぶれど あまりてなどか ひとのこひしき)

解説

浅茅(あさじ)の生えている野原の篠原(しのはら)よ、その「しの」ではないが、いくらたえしのんでも、こらえきれないほど、どうしてあなたが恋しいのか。

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040 平兼盛 (たいらのかねもり)

原文

しのぶれど 色にいでにけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで
(しのぶれど いろにいでにけり わがこひは ものやおもふと ひとのとふまで)

解説

かくしても顔色に出てしまった、私の恋は。「物思いをしているのか」と人がたずねるほどに。

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041 壬生忠見 (みぶのただみ)

原文

恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり 人しれずこそ 思ひそめしか
(こひすてふ わがなはまだき たちにけり ひとしれずこそ おもひそめしか)

解説

「恋をしている」という私の評判は早くも立ってしまった。人知れず心ひそかに思いそめたのに。

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042 清原元輔 (きよはらのもとすけ)

原文

契りきな かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 波こさじとは
(ちぎりきな かたみにそでを しぼりつつ すゑのまつやま なみこさじとは)

解説

心がわりすることはあるまいと、あなたと約束いたしましたのに。おたがいに涙でぬれた袖をしぼりながら、「すえの松山を波が越えることはあるまい」と。

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043 権中納言敦忠 (ごんちゅうなごんあつただ)

原文

逢ひ見ての のちの心に くらぶれば 昔はものを 思はざりけり
(あひみての のちのこころに くらぶれば むかしはものを おもはざりけり)

解説

あなたにお会いして契りを結んでから(夜をともに過ごし、いっしょに寝てから)後の、恋しい心にくらべると、それ以前は何の物思いもしなかったと同じことだ。

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044 中納言朝忠 (ちゅうなごんあさただ)

原文

逢ふことの 絶えてしなくは なかなかに 人をも身をも うらみざらまし
(あふことの たえてしなくは なかなかに ひとをもみをも うらみざらまし)

解説

会うということがまったく期待できないならば、もうあきらめてしまって、そうすればかえって、相手の無情さも自分の不運さも、うらむことがないだろうに。

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045 謙徳公 (けんとくこう)

原文

あはれとも 言ふべき人は 思ほえで 身のいたづらに なりぬべきかな
(あはれとも いふべきひとは おもほえで みのいたづらに なりぬべきかな)

解説

たとえ恋こがれて死んだとしても、私を「ああ、かわいそうだ」と言ってくれそうな人は思いうかばず、きっと私はむなしく死んでしまうのだろうな。

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046 曽祢好忠 (そねのよしただ)

原文

由良のとを わたる舟人 かぢをたえ ゆくへも知らぬ 恋の道かな
(ゆらのとを わたるふなびと かぢをたえ ゆくへもしらぬ こひのみちかな)

解説

由良(ゆら)の水路を漕いでわたる舟人がかじをうしなって困りはてるように、たよりとする人をうしなって、行方もわからない恋の道であることだ。

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047 恵慶法師 (えぎょうほうし)

原文

八重むぐら しげれる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋はきにけり
(やへむぐら しげれるやどの さびしきに ひとこそみえね あきはきにけり)

解説

たくさんの雑草が生えている宿で、荒れはてているように感じられる宿に、人は見えないが、秋はやってきたのだ。

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048 源重之 (みなもとのしげゆき)

原文

風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ くだけてものを 思ふころかな
(かぜをいたみ いはうつなみの おのれのみ くだけてものを おもふころかな)

解説

風が強いので、岩はまったく動じずに、岩にぶつかる波だけがくだけちるように、あなたはまったく心を動かさずに自分だけが、心もくだけるばかりに胸のうちで思いにふけるこのごろであるよ。

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049 大中臣能宣朝臣 (おおなかとみのよしのぶあそん)

原文

みかきもり 衛士のたく火の 夜は燃え 昼は消えつつ ものをこそ思へ
(みかきもり ゑじのたくひの よるはもえ ひるはきえつつ ものをこそおもへ)

解説

内裏(だいり)の御垣守(みかきもり)である衛士(えじ)の焚(た)く火のように、夜は恋の思いに燃えて、昼は心も消えいりそうになって、毎日のように思いわずらっていることだ。

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050 藤原義孝 (ふじわらのよしたか)

原文

君がため 惜しからざりし 命さへ ながくもがなと 思ひけるかな
(きみがため をしからざりし いのちさへ ながくもがなと おもひけるかな)

解説

あなたに会うために、惜しくはないと思った命までも、こうしてお会いできたあとは、ながく生きていたいと思われることです。

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51~75

051 藤原実方朝臣 (ふじわらのさねかたあそん)

原文

かくとだに えやは伊吹の さしも草 さしも知らじな もゆる思ひを
(かくとだに えやはいぶきの さしもぐさ さしもしらじな もゆるおもひを)

解説

「わたしはこのように恋をしている」とだけでも言うことができないので、伊吹山(いぶきやま)のさしも草ではないけれど、これほど燃えているわたしの思いを、あなたは知らないでしょうね。

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052 藤原道信朝臣 (ふじわらのみちのぶあそん)

原文

明けぬれば 暮るるものとは 知りながら なほうらめしき 朝ぼらけかな
(あけぬれば くるるものとは しりながら なほうらめしき あさぼらけかな)

解説

「夜が明けるといつも日が暮れて、そして、あなたに会えるのだ」とは知っていながら、やはりうらめしいのは(恋人と別れる時間の)夜が明けるころであるよ。

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053 右大将道綱母 (うだいしょうみちつなのはは)

原文

なげきつつ ひとりぬる夜の 明くる間は いかに久しき ものとかは知る
(なげきつつ ひとりぬるよの あくるまは いかにひさしき ものとかはしる)

解説

あなたが来ないのをなげきながら、一人で寝る夜が明けるまでの間は、どれほど長いものなのか、あなたは知っているだろうか、いや、知らないだろう。

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054 儀同三司母 (ぎどうさんしのはは)

原文

わすれじの 行く末までは かたければ 今日をかぎりの 命ともがな
(わすれじの ゆくすゑまでは かたければ けふをかぎりの いのちともがな)

解説

あなたが私を忘れまいとおっしゃる、その遠い将来のことまでは、たのみにしがたいことなので、こうしてお会いしている今日かぎりの命であってほしいものです。

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055 大納言公任 (だいなごんきんとう)

原文

滝の音は 絶えてひさしく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ
(たきのおとは たえてひさしく なりぬれど なこそながれて なほきこえけれ)

解説

滝の流れ落ちる音は、聞えなくなってから長い時間がたったが、その評判は世間に流れて今も知られている。

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056 和泉式部 (いずみしきぶ)

原文

あらざらむ この世のほかの 思ひ出に いまひとたびの 逢ふこともがな
(あらざらむ このよのほかの おもひでに いまひとたびの あふこともがな)

解説

この世からいなくなってしまうので、思い出にもう一度、あなたにお会いしたいのです。

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057 紫式部 (むらさきしきぶ)

原文

めぐりあひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲がくれにし 夜半の月かな
(めぐりあひて みしやそれとも わかぬまに くもがくれにし よはのつきかな)

解説

ひさびさに再会して、むかし見た面影かどうかも見わけがつかない間に、雲にかくれた夜の月のように、帰ってしまったあの人よ。

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058 大弐三位 (だいにのさんみ)

原文

有馬山 猪名の笹原 風ふけば いでそよ人を 忘れやはする
(ありまやま ゐなのささはら かぜふけば いでそよひとを わすれやはする)

解説

有馬山にほど近い猪名(いな)の笹原に風が吹くと、笹の葉がそよそよと音をたてるように、さあ、そうですよ、あなたのことを忘れることがありましょうか、いや、けっして忘れません。

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059 赤染衛門 (あかぞめえもん)

原文

やすらはで 寝なましものを 小夜ふけて かたぶくまでの 月をみしかな
(やすらはで ねなましものを さよふけて かたぶくまでの つきをみしかな)

解説

あなたが来ないと知っていたら、ためらわずに寝てしまったのだが。夜がふけて、西の空にかたむくほどの月を見てしまったことだ。

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060 小式部内侍 (こしきぶのないし)

原文

大江山 いくのの道の 遠ければ まだふみもみず 天の橋立
(おほえやま いくののみちの とほければ まだふみもみず あまのはしだて)

解説

大江山(おおえやま)を越え、生野(いくの)をとおって行く道のりが遠いので、母の和泉式部(いずみしきぶ)がいる天橋立(あまのはしだて)へ行ったことはまだありませんし、母からの手紙をまだ見ておりません。

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061 伊勢大輔 (いせのたいふ)

原文

いにしへの 奈良の都の 八重桜 今日九重に にほひぬるかな
(いにしへの ならのみやこの やへざくら けふここのへに にほひぬるかな)

解説

昔の奈良の都に咲いた八重桜が、今日はこの宮中に美しく咲いたことだ。

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062 清少納言 (せいしょうなごん)

原文

夜をこめて 鳥のそらねは はかると よに逢坂の 関はゆるさじ
(よをこめて とりのそらねは はかるとも よにあふさかの せきはゆるさじ)

解説

夜がふかいうちに、ニワトリの鳴きまねをしてだまそうとしても、函谷関(かんこくかん)で通行がゆるされたのとはちがって、私があなたと会うという、その逢坂(おうさか)の関は、けっしてお通りになれますまい。

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063 左京大夫道雅 (さきょうのだいぶみちまさ)

原文

いまはただ 思ひ絶えなむ とばかりを 人づてならで 言ふよしもがな
(いまはただ おもひたえなむ とばかりを ひとづてならで いふよしもがな)

解説

会っていただけない今となっては、「あなたに対する思いもきっと途切れさせてしまいましょう」とだけ、人づてではなく、直接お目にかかって言う方法があればなあ。

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064 権中納言定頼 (ごんちゅうなごんさだより)

原文

朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに あらはれわたる 瀬々の網代木
(あさぼらけ うぢのかはぎり たえだえに あらはれわたる せぜのあじろぎ)

解説

夜がほんのりと明けて、ものがほのかに見えるころ、宇治川にたちこめた霧の切れ間切れ間から、一面にあらわれる浅瀬(あさせ)のあちらこちらの網代(あじろ)であるよ。

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065 相模 (さがみ)

原文

うらみわび ほさぬ袖だに あるものを 恋に朽ちなむ 名こそ惜しけれ
(うらみわび ほさぬそでだに あるものを こひにくちなむ なこそをしけれ)

解説

うらみなげき、涙でかわくひまもない袖さえあるのに、恋の評判にきっとむなしくなってしまうだろう我が名がもったいないことだ。

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066 前大僧正行尊 (さきのだいそうじょうぎょうそん)

原文

もろともに あはれと思へ 山桜 花よりほかに しる人もなし
(もろともに あはれとおもへ やまざくら はなよりほかに しるひともなし)

解説

私が花をなつかしく思うように、私をなつかしく思ってくれ、山桜よ。花以外に私の心を理解する人はいないのだ。

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067 周防内侍 (すおうのないし)

原文

春の夜の 夢ばかりなる 手枕に かひなく立たむ 名こそ惜しけれ
(はるのよの ゆめばかりなる たまくらに かひなくたたむ なこそをしけれ)

解説

春の夜の夢のようにはかないものとして、あなたの腕(うで=かいな)を枕にお借りして、つまらなくも知れわたるような我が浮名(うきな)がもったいなく思われることです。

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068 三条院 (さんじょういん)

原文

こころにも あらでうき世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな
(こころにも あらでうきよに ながらへば こひしかるべき よはのつきかな)

解説

本心とはちがって、このつらい世の中に生きながらえていたならば、今夜のこの月が、きっと恋しく思い出されるだろうなあ。

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069 能因法師 (のういんほうし)

原文

あらしふく 三室の山の もみぢ葉は 龍田の川の にしきなりけり
(あらしふく みむろのやまの もみぢばは たつたのかはの にしきなりけり)

解説

嵐が吹いて三室の山のもみじの葉は散って、竜田川の水の流れは錦(にしき)のようにいろどられている。

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070 良暹法師 (りょうぜんほうし)

原文

さびしさに 宿を立ちいでて ながむれば いづこもおなじ 秋の夕暮れ
(さびしさに やどをたちいでて ながむれば いづこもおなじ あきのゆふぐれ)

解説

さびしさのために、住まいを出て、あたりをながめると、どこもおなじようにわびしい秋の夕暮れであるよ。

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071 大納言経信 (だいなごんつねのぶ)

原文

夕されば 門田の稲葉 おとづれて 葦のまろやに 秋風ぞふく
(ゆふされば かどたのいなば おとづれて あしのまろやに あきかぜぞふく)

解説

夕方になると、門前の田の稲の葉に音を立てさせ、葦(あし)の仮小屋に秋風が吹いてくるのだ。

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072 祐子内親王家紀伊 (ゆうしないしんのうけのきい)

原文

音にきく 高師の浜の あだ波は かけじや袖の ぬれもこそすれ
(おとにきく たかしのはまの あだなみは かけじやそでの ぬれもこそすれ)

解説

評判の高い高師(たかし)の浜のいたずらに立ちさわぐ波ではないけれど、浮気者のあなたを心に掛けることはいたしません。涙で袖をぬらすことになるといけないから。

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073 権中納言匡房 (ごんちゅうなごんまさふさ)

原文

高砂の 尾の上の桜 さきにけり 外山の霞 たたずもあらなむ
(たかさごの をのへのさくら さきにけり とやまのかすみ たたずもあらなむ)

解説

小高い山のうえに桜が咲いたことだ。人里に近い山の霞(かすみ)よ、どうか立たないでいてほしい。

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074 源俊頼朝臣 (みなもとのとしよりあそん)

原文

うかりける 人を初瀬の 山おろしよ はげしかれとは いのらぬものを
(うかりける ひとをはつせの やまおろしよ はげしかれとは いのらぬものを)

解説

つれなくなった人を、初瀬(はつせ)の山おろしよ、その風がはげしく吹きつけるようにあの人がますますつれない態度をとるようにとは、いのらなかったのだが。

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075 藤原基俊 (ふじわらのもととし)

原文

ちぎりおきし させもが露を 命にて あはれ今年の 秋もいぬめり
(ちぎりおきし させもがつゆを いのちにて あはれことしの あきもいぬめり)

解説

お約束くださったお言葉、させも草の露のようにはかない言葉をたよりに、命を長らえましたが、ああ今年の秋も去っていくようです。

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76~100

076 法性寺入道前関白太政大臣 (ほっしょうじにゅうどうさきのかんぱくだいじょうだいじん)

原文

わたの原 漕ぎいでて見れば ひさかたの 雲居にまがふ 沖つ白波
(わたのはら こぎいでてみれば ひさかたの くもゐにまがふ おきつしらなみ)

解説

ひろびろとした海に舟を漕ぎだして見ると、雲と見わけのつかない沖の白波であることだ。

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077 崇徳院 (すとくいん)

原文

瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ
(せをはやみ いはにせかるる たきがはの われてもすゑに あはむとぞおもふ)

解説

川の浅いところは流れが速いので、岩にせきとめられる急流が二つにわかれても最後には一つになるように、いつかは一緒になろうと思うのだ。

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078 源兼昌 (みなもとのかねまさ)

原文

淡路島 かよふ千鳥の 鳴く声に 幾夜ねざめぬ 須磨の関守
(あはぢしま かよふちどりの なくこゑに いくよねざめぬ すまのせきもり)

解説

淡路島(あわじしま)からわたってくる千鳥の鳴く声に、幾晩目を覚ましたことか、須磨の関所の番人よ。

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079 左京大夫顕輔 (さきょうのだいぶあきすけ)

原文

秋風に たなびく雲の 絶え間より もれいづる月の 影のさやけさ
(あきかぜに たなびくくもの たえまより もれいづるつきの かげのさやけさ)

解説

秋風に吹かれてたなびく雲の切れ間から漏れ出る月の光がはっきりとしている。

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080 待賢門院堀河 (たいけんもんいんのほりかわ)

原文

ながからむ 心も知らず 黒髪の みだれて今朝は ものをこそ思へ
(ながからむ こころもしらず くろかみの みだれてけさは ものをこそおもへ)

解説

あなたの私に対するお心が長くつづくかもわからず、いっしょに寝てわかれた今朝の私の心は、黒髪のようにみだれて思いなやむことです。

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081 後徳大寺左大臣 (ごとくだいじのさだいじん)

原文

ほととぎす 鳴きつるかたを ながむれば ただ有明の 月ぞのこれる
(ほととぎす なきつるかたを ながむれば ただありあけの つきぞのこれる)

解説

ほととぎすが鳴いた方角に目をむけると、ただ夜明けの月だけが空にのこっていることだ。

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082 道因法師 (どういんほうし)

原文

思ひわび さても命は あるものを 憂きにたへぬは 涙なりけり
(おもひわび さてもいのちは あるものを うきにたへぬは なみだなりけり)

解説

思いなげきながら、それにしても命はあるのだが、つらさにこらえきれないのは涙だったのだ。

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083 皇太后宮大夫俊成 (こうたいごうぐうのだいぶしゅんぜい)

原文

よのなかよ 道こそなけれ 思ひ入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる
(よのなかよ みちこそなけれ おもひいる やまのおくにも しかぞなくなる)

解説

世の中に道はないのだ。思いつめて入った山の奥にも鹿が物悲しく鳴いている。

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084 藤原清輔朝臣 (ふじわらのきよすけあそん)

原文

ながらへば またこのごろや しのばれむ 憂しと見し世ぞ 今は恋しき
(ながらへば またこのごろや しのばれむ うしとみしよぞ いまはこひしき)

解説

生き長らえたら、やはり今この時が思い出されるのだろうか。つらいと思った世の中も、今ではなつかしく思われるのだから。

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085 俊恵法師 (しゅんえほうし)

原文

夜もすがら もの思ふころは 明けやらで ねやのひまさへ つれなかりけり
(よもすがら ものおもふころは あけやらで ねやのひまさへ つれなかりけり)

解説

一晩中、胸のうちで思いにふけってねむれないころは、夜も明けきらずに、寝室の戸のすきままでもが無情に思われることだ。

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086 西行法師 (さいぎょうほうし)

原文

なげけとて 月やはものを 思はする かこち顔なる わが涙かな
(なげけとて つきやはものを おもはする かこちがほなる わがなみだかな)

解説

「なげけ」と言って、月は私に物思いをさせるのか、いや、そうではない。うらめしそうな顔つきで、流れ落ちる私の涙であることだ。

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087 寂蓮法師 (じゃくれんほうし)

原文

村雨の 露もまだひぬ まきの葉に 霧たちのぼる 秋の夕暮れ
(むらさめの つゆもまだひぬ まきのはに きりたちのぼる あきのゆふぐれ)

解説

にわか雨の露(つゆ)も、まだかわかない真木の葉のあたりに、霧(きり)が立ちのぼる秋の夕暮れだ。

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088 皇嘉門院別当 (こうかもんいんのべっとう)

原文

難波江の 葦のかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや 恋ひわたるべき
(なにはえの あしのかりねの ひとよゆゑ(え) みをつくしてや こひわたるべき)

解説

難波(なにわ)に生えている葦(あし)の、刈り根の一節(ひとよ)のように短い一夜をともに過ごしたせいで、澪標(みおつくし)ではないけれど、身をほろぼすような恋をしつづけることになったのだろうか。

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089 式子内親王 (しょくしないしんのう)

原文

玉の緒よ 絶えなば絶えね 長らへば しのぶることの 弱りもぞする
(たまのをよ たえなばたえね ながらへば しのぶることの よわりもぞする)

解説

私の命よ、絶えてしまうならば絶えてしまえ。生き長らえていたら、胸のうちに秘める力がよわまって、秘めていられなくなってしまうとこまるから。

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090 殷富門院大輔 (いんぷもんいんのたいふ)

原文

見せばやな 雄島のあまの 袖だにも ぬれにぞぬれし 色は変はらず
(みせばやな をじまのあまの そでだにも ぬれにぞぬれし いろはかはらず)

解説

あなたにお見せしたいものだ。雄島(おじま)の海人(あま)の袖さえ、いくら濡れても色は変わらない。それなのに、血の涙に濡れて色が変わってしまった私の袖を。

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091 後京極摂政前太政大臣 (ごきょうごくせっしょうさきのだいじょうだいじん)

原文

きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに ころもかたしき ひとりかも寝む
(きりぎりす なくやしもよの さむしろに ころもかたしき ひとりかもねむ)

解説

こおろぎが鳴く霜のおりる寒い夜の、むしろの上に自分の片袖だけしいて、私はただひとり寝るのだろうか。

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092 二条院讃岐 (にじょういんのさぬき)

原文

わが袖は 潮干にみえぬ 沖の石の 人こそ知らね かわく間もなし
(わがそでは しほひにみえぬ おきのいしの ひとこそしらね かわくまもなし)

解説

私の袖は、干潮のときでも見えない沖の石のように、人は知らないが、涙にぬれてかわくひまもない。

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093 鎌倉右大臣 (かまくらのうだいじん)

原文

世の中は つねにもがもな 渚こぐ あまの小舟の 綱手かなしも
(よのなかは つねにもがもな なぎさこぐ あまのをぶねの つなでかなしも)

解説

世の中は変わらないものであってほしい。なぎさを漕ぐ漁師が小舟を綱(つな)でひいていく様子が悲しく感じられる。

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094 参議雅経 (さんぎまさつね)

原文

み吉野の 山の秋風 小夜ふけて ふるさとさむく 衣うつなり
(みよしのの やまのあきかぜ さよふけて ふるさとさむく ころもうつなり)

解説

吉野山(よしのやま)の秋風が夜ふけに吹き、古都、吉野には寒々と砧(きぬた)を打つ音が聞こえる。

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095 前大僧正慈円 (さきのだいそうじょうじえん)

原文

おほけなく うき世の民に おほふかな わがたつ杣に すみぞめのそで
(おほけなく うきよのたみに おほふかな わがたつそまに すみぞめのそで)

解説

身のほど知らずであるが、つらい世の中の人々をおおうのだ。比叡山(ひえいざん)に住みはじめてから着ている僧衣の袖を。

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096 入道前太政大臣 (にゅうどうさきのだいじょうだいじん)

原文

花さそふ あらしの庭の 雪ならで ふりゆくものは わが身なりけり
(はなさそふ あらしのにはの ゆきならで ふりゆくものは わがみなりけり)

解説

花をさそって散らせる強風が吹く庭に、つもっている雪のような花びらではなく、老いていくのは私の身であることだ。

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097 権中納言定家 (ごんちゅうなごんていか)

原文

こぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ
(こぬひとを まつほのうらの ゆふなぎに やくやもしほの みもこがれつつ)

解説

いつまでたっても来ない恋人を待っております。松帆(まつほ)の浦の風がとまった、夕方に焼く藻塩(もしお)のように、私の身も恋いこがれながら。

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098 従二位家隆 (じゅにいいえたか)

原文

風そよぐ ならの小川の 夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける
(かぜそよぐ ならのをがはの ゆふぐれは みそぎぞなつの しるしなりける)

解説

風がふいてそよそよと楢(なら)の葉が鳴る、ならの小川(上賀茂神社の小川)の夕暮れはすずしいけれど、みそぎがおこなわれているのが夏の証拠であることだ。

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099 後鳥羽院 (ごとばいん)

原文

人も惜し 人もうらめし あぢきなく 世を思ふゆゑに もの思ふ身は
(ひともをし ひともうらめし あぢきなく よをおもふゆゑに ものおもふみは)

解説

どうにもならないと世の中を思うために、あれこれと物思いにふける私にとっては、人がいとしくも、うらめしくも思われる。

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100 順徳院 (じゅんとくいん)

原文

百敷や ふるき軒端の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり
(ももしきや ふるきのきばの しのぶにも なほあまりある むかしなりけり)

解説

宮中の古い軒端(のきば)に生えている忍ぶ草ではないけれど、やはりしのびつくせないほど、したわしく思われる昔であることだ。

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あまかぜをはやみしのの
あまはらさごのらさめの
あららむのおとはぐりあひて
あらふくのうらにしきや
ありけのわかれともに
ありやまのをよらはで
しへのをかもむぐら
いまむとちぎりきしやまはに
いまただちぎりやまとは
りけるやぶるされば
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