古典文法

体言止めの意味や効果を例文で解説

体言止めの意味や効果を例文で解説

投稿日:2018年7月11日 更新日:

体言止めの使い方や意味を、例文をまじえながら解説します。そもそも体言とは何か、というところからご説明しますので、文法が苦手な方も大丈夫です。

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体言止めの意味:文が名詞で終わる

物事や人の名前のことを名詞(めいし)と言いますが、体言(たいげん)と役割は同じなので、「体言 = 名詞」と考えてしまって大丈夫です。

単語の分類 - 名詞(体言)

単語の分類 – 名詞(体言)

そして、体言(名詞)で文がしめくくられることを体言止めと言います。体言で文をいったん止めて、切り上げるので、体言止めです。

この記事のタイトルも、「意味や効果を解説する」ではなく、「意味や効果を解説」と体言(名詞)でしめくくっているので、体言止めですね。
 

体言止めの効果:新聞でよく見る技法

体言止めは新聞で見かけることが多いです。下に示したのは実際の新聞の見出しの例です。

大谷 6番DHで復帰
理事長が不正合格決定
文科前局長、申請書指南

新聞の場合は、紙面に限りがあるので文字数を節約しなければなりません。上の例では、「大谷が6番DHで復帰した」と書くよりも、「大谷 6番DHで復帰」と書いたほうが、文字数を少なくすることができます。このように、新聞の見出しでは、「て・に・を・は」を省略したり、語尾を省いたりすることがよくあります。

新聞では同じ理由から、見出しだけでなく記事本文にも体言止めが使われます。下の例は横綱の稀勢の里について書かれた記事の一部です(※読売新聞・2018年7月6日・朝刊16面)。

 新横綱で優勝した昨年春場所で左胸付近の筋肉を負傷。この影響で翌夏場所以降、一度も千秋楽までの15日間を全うできていない。8場所連続休場は、年6場所制となった1958年以降の横綱では、貴乃花の7場所を上回る最長記録。(後略)

「筋肉を負傷」「7場所を上回る最長記録」などの形で文がしめくくられているので、これらも体言止めです。この場合は、単に文字数を減らすだけではなく、「負傷した」「最長記録である」という語尾を省略することで、文章に変化をつけてリズムをもたらすという効果もあります。
 

体言止めの例文と注意点

フォーマルな場面では基本的に使用しない

上記のような理由から新聞には多用される体言止めですが、入学試験の出願書や小論文のテスト、会社で作成する文書など、あらたまった場面では使用を控えるのが一般的です。

使っても良いのは、感想文や作文など、くだけた場面です。
 

使いすぎると単調になる

体言止めに限ったことではありませんが、同じことをくり返すと単調になってしまいます。例文を見てみましょう。

①乗車したのは朝7時の新幹線だった。終着駅は東京駅だった。目の前にそびえていたのは見たこともない大きなビルだった。

上の例の場合、「だった」が多用されていて単調です。ためしにすべて省略して体言止めにしてみると、

②乗車したのは朝7時の新幹線。終着駅は東京駅。目の前にそびえていたのは見たこともない大きなビル。

となって、これまた単調です。文章として良くないので、真ん中だけ体言止めにしてみます。

③乗車したのは朝7時の新幹線だった。終着駅は東京駅。目の前にそびえていたのは見たこともない大きなビルだった。

このようにすると、「だった」をくり返した文章と比べて、文章に適度な変化をつけることができてリズムも生まれます。単調な文を続けない、ということが大切で、それは体言止めを使う時も同じなのです。

ただし、何度もくり返しますが、基本的に体言止めは普通の文章に使うものではありません。上の例も、「朝7時の新幹線に乗車し、終着駅である東京駅で下車して改札を出てみると、そこには見たこともない大きなビルが目の前にそびえていた」とでも書けば簡単ですしわかりやすいです。
 

体言止めは和歌で使われる技法

新聞のように一般的な文書に使用されることもありますが、そもそも体言止めは和歌で使われる技法のひとつです。体言止めの、だれかに呼びかけたり言いきったりするような形が、読み手や聞き手の余情(よじょう)をさそう、という効果があります。
 

そもそも和歌とは何か?

そもそも和歌とは?短歌との違いは?などと疑問に感じている方に向けて、和歌とは何かをご説明します。和歌とは、漢詩に対して言う文芸のことで、さまざまな形式があります。現在では、和歌と言えば「5・7・5・7・7、合計31音」の短歌が一般的ですが、そもそも短歌は和歌のさまざまな形式の一種です。

和歌・短歌・漢詩

和歌・短歌・漢詩

短歌というのはたしかに和歌の形式の一種なのですが、一般的には近代以降の和歌のことを指します。これは俳句という言葉も同じで、明治時代になってから正岡子規(まさおかしき)が革新運動を起こして広めた言葉です。
 

体言止めが使われている和歌

つぎに、体言止めが使われている和歌を見てみましょう。
 

百人一首の体言止め

これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関(蝉丸)
(これやこの ゆくもかえるも わかれては しるもしらぬも おうさかのせき)

現代語訳:これがあの、東国へ行く人も都へ帰る人もここで別れ、また、知っている人も知らない人もここで会うという逢坂の関なのだ。

 
大江山生野の道の遠ければまだ文も見ず天橋立(小式部内侍)
(おおえやま いくののみちの とおければ まだふみもみず あまのはしだて)

現代語訳:大江山を越え、生野を通って行く道のりが遠いので、母の和泉式部がいる天橋立へ行ったことはまだありませんし、母からの手紙をまだ見ておりません。

 
上の二つの和歌は「逢坂の関」「天橋立」のように、どちらも名詞でしめくくられている体言止めの歌です。百人一首には上の二つの和歌以外にも体言止めの歌があるので、興味のある方はご覧ください。

↓ ↓ ↓ ↓

 

三夕の歌(新古今和歌集)の体言止め

体言止めの和歌の中で、特に有名なのが「三夕の歌」(さんせきのうた)です。これは秋の夕暮れをよんだ3首の和歌のことで、すべて「秋の夕暮れ」という体言(名詞)でしめくくられています。

寂しさはその色としもなかりけり槙立つ山の秋の夕暮れ(361・寂蓮法師
(さびしさは そのいろとしも なかりけり まきたつやまの あきのゆうぐれ)

現代語訳:このさびしさはどこから来るというものでもないのだ。真木(まき)の生えている山の秋の夕暮れよ。

 
心なき身にもあはれは知られけり鴫立つ沢の秋の夕暮れ(362・西行法師
(こころなき みにもあわれは しられけり しぎたつさわの あきのゆうぐれ)

現代語訳:あわれなど理解するすべもない私にも、今はそれがよくわかるのだ。鴫(しぎ)が飛び立つ沢の秋の夕暮れよ。

 
見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮れ(363・藤原定家
(みわたせば はなももみじも なかりけり うらのとまやの あきのゆうぐれ)

現代語訳:見わたすと、花も紅葉もここにはない。海辺の仮小屋に訪れる秋の夕暮れよ。

 
 
上の3つの和歌はすべて3句切れなので、3句目でいったん歌の意味が切れます。そして、体言止めとして、「秋の夕暮れ」で和歌がしめくくられているので、和歌の雰囲気に余情が添えられます。体言止めは、本歌取りとならんで、新古今集の時代に代表される和歌の表現技法の一つです。

古文の基本はこちらの記事で確認

古典文法が苦手だと感じている方は、ぜひこちらの記事で基礎をご確認ください。

↓ ↓ ↓ ↓

古典文法の勉強法(基礎編)わかりやすい覚え方で用言の活用形から学ぶ


 

百人一首の現代語訳・解説

百人一首 現代語訳 一覧┃わかりやすい意味と解説で恋の歌も簡単に理解


 

動詞の解説はこちら

古文の動詞の活用と覚え方 – 見分け方のコツは種類の少ないものを暗記すること


 

助詞の解説はこちら

古文の助詞の覚え方 – まずは種類の確認から


 

助動詞の解説はこちら

古文の助動詞の意味と覚え方 – 活用表の一覧でまず接続を暗記


 
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趣味は歌舞伎鑑賞(2012年~)
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