41~50番歌

百人一首の意味と文法解説(43)あひみての後の心にくらぶれば昔はものを思はざりけり┃権中納言敦忠

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-43

投稿日:2018年3月11日 更新日:

逢ひ見ての後の心にくらぶれば昔はものを思はざりけり

小倉百人一首から、権中納言敦忠の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。

また、くずし字・変体仮名で書かれた江戸時代の本の画像も載せております。

ふだん我々が使っている字の形になおした(翻刻と言う)ものと、ひらがなのもとになった漢字(字母)も紹介しておりますので、ぜひ見比べてみてください。

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原文

ogura-hyakunin-isshu-43

百人一首(43)あひみての後の心にくらぶれば昔はものを思はざりけり

画像転載元
国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541162

翻刻(ほんこく)(普段使っている字の形になおす)

hyakuni-isshu-honkoku-43

百人一首(43)あひみての後の心にくらぶれば昔はものを思はざりけり

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釈文(しゃくもん)(わかりやすい表記)

中納言敦忠
逢ひ見ての のちの心に 比ぶれば 昔は物を 思はざりけり
 

字母(じぼ)(ひらがなのもとになった漢字)

hyakunin-isshu-jibo-43

百人一首(43)あひみての後の心にくらぶれば昔はものを思はざりけり

現代語訳(歌意)・文法解説

あなたにお逢いして契りを結んでから後の、恋しい心に比べると、それ以前は何の物思いもしなかったと同じくらい、取るに足らないものであった。

あひみての後の心にくらぶれば昔はものを思はざりけり

あひみての後の心にくらぶれば昔はものを思はざりけり

※「已然形 + ば」の形で、「~なので」「~すると」などの意味になります。それぞれの意味は文脈から判断します。

順接確定条件

順接確定条件

※係助詞「」「」は係り結びを伴いません。それ以外の係助詞は連体形や已然形で結びます。「ぞ・なむ・や・か=連体、こそ=已然形」です。

係助詞:ぞ・なむ・や・か・こそ

係助詞:ぞ・なむ・や・か・こそ

その他の助詞については「古典の助詞の覚え方」をご覧ください。

※過去の助動詞「けり」は、和歌の中では詠嘆(~だなあ)の意味で訳すのが一般的です。「けり」は連用形接続の助動詞です。連用形接続の助動詞はぜんぶで、「き・けり・つ・ぬ・たり・たし・けむ」の7種類です。そのほかの助動詞の解説は「古典の助動詞の活用表の覚え方」をご確認ください。

▽後朝(きぬぎぬ)の歌。(『新日本古典文学大系 拾遺和歌集』小町谷照彦、岩波書店、1990年、208ページ)
 

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語釈(言葉の意味)

※特記のないかぎり『岩波 古語辞典 補訂版』(大野晋・佐竹昭広・前田金五郎 編集、岩波書店、1990年)による。
 

きぬぎぬ【衣衣・後朝】

①脱いだ衣を重ねて共寝をした翌朝、めいめいの着物を身につけること。また、そのようにして別れること。また、その朝。「しののめのほがらほがらと明け行けばおのが―なるぞ悲しき」〈古今六三七〉。「―とは、我が衣をば我が着、人の衣をば人に着せて起きわかるるによりて云ふなり」〈古今集註〉
 

逢ひ

●あ・ひ アイ 【合ひ・会ひ・逢ひ】
一〘四段〙
❶二つのものが互いに寄って行き、ぴったりとぶつかる。①対面する。「昔の人にまたも―・はめやも」〈万三一〉
❷二つのものが近寄って、しっくりと一つになる。⑤契りを結ぶ。結婚する。「男は女に―・ふことをす」〈竹取〉
 

見る

●み【見】
〘上一〙
❶①目をとめる。「あかねさす紫野行きしめ野行き野守は見(み)ずや君が袖振る」〈万二〇〉
❹互いに見る。②男女の交りをする。平安時代、成人の女が男に顔を見せるのは時別な場合であった。「よし、今は見(み)きとなかけそ(口ニナサルナ)とて、〔女ノ〕思へるさま、げにいとことわりなり」〈源氏帚木〉
 

逢ひ見ての後の心

逢瀬(おうせ)の後にますます募(つの)る思慕(しぼ)の情。(『新日本古典文学大系 拾遺和歌集』208ページ)
 

後朝の現在に対して、逢瀬以前をさす。(『新日本古典文学大系 拾遺和歌集』208ページ)
 

もの

●もの【物・者】
一〘名〙
➊物体・物品などを一般的にとらえて指す。「いとのきて短き―の端(はし)切ると言へるが如く」〈万八九二〉。「みどり児の乞ひ泣くごとに取り与ふる―し無ければ」〈万二一〇〉。「内蔵寮(くらづかさ)納殿(をさめどの)の―(品物)をつくして、いみじうせさせ給ふ」〈源氏桐壺〉。「さるは、たよりごとに―(贈物)も絶えず得させたり」〈土佐二月十六日〉。「散るまでも我が―にして花は見てまし」〈後撰一〇一〉
➌《対象の性質や状態が、はっきりとは言えないが、ともかく意識の対象となる存在》
①いろいろの状態・事態。「ねもころに―や悲しききりぎりす草のやどりにこゑたえず鳴く」〈後撰二五八〉。「右近は―も覚えず、君につと添ひ奉りて、わななき死ぬべし」〈源氏夕顔〉
 

物も思はざりけり

現在の思慕の切実さに比較すれば、以前の思慕は、物思いとは言えないような、軽い程度のものであったというのである。(『新日本古典文学大系 拾遺和歌集』208ページ)
 

百人一首の現代語訳と文法解説はこちらで確認

こちらは小倉百人一首の現代語訳一覧です。それぞれの歌の解説ページに移動することもできます。

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あきぜにぎりすはるぎて
あきたのこころてにはるよの
ぬればこころかたの
あさふのひとをひといさ
あさぼらけたびはひとをし
あさぼらけすてふくからに
ひきのやこのととぎす
あはしまびしさにみかもり
あはともぶれどみかはら
みてのつゆにばやな
あふとのみのえののくの
あまかぜをはやみしのの
あまはらさごのらさめの
あららむのおとはぐりあひて
あらふくのうらにしきや
ありけのわかれともに
ありやまのをよらはで
しへのをかもむぐら
いまむとちぎりきしやまはに
いまただちぎりやまとは
りけるやぶるされば
みわびみればのとを
やまにばねのよのなか
にきくながらむよのなか
おほやまながへばすがら
おほなくなげつつこめて
ひわびなげとてわがほは
とだにのよはわがでは
さぎのなにおはばわするる
かぜよぐなにはわすじの
かぜいたみなにはわたのはら
きみがためはなそふわたのはら
きみがためはないろはぬれば
らやま

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都内の私立大学 文学部国文学専攻出身
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