81~90番歌

百人一首の意味と文法解説(83)世の中よ道こそなけれ思ひ入る山の奥にも鹿ぞ鳴くなる┃皇太后宮大夫俊成

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-83

投稿日:2018年3月12日 更新日:

世の中よ道こそなけれ思ひ入る山の奥にも鹿ぞ鳴くなる

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小倉百人一首から、皇太后宮大夫俊成(藤原俊成)の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。

また、くずし字・変体仮名で書かれた江戸時代の本の画像も載せております。

ふだん我々が使っている字の形になおした(翻刻と言う)ものと、ひらがなのもとになった漢字(字母)も紹介しておりますので、ぜひ見比べてみてください。

原文

ogura-hyakunin-isshu-83

百人一首(83)世の中よ道こそなけれ思ひ入る山の奥にも鹿ぞ鳴くなる


画像転載元
国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541162

翻刻(ほんこく)(普段使っている字の形になおす)

hyakuni-isshu-honkoku-83

百人一首(83)世の中よ道こそなけれ思ひ入る山の奥にも鹿ぞ鳴くなる

釈文(しゃくもん)(わかりやすい表記)

皇太后宮大夫俊成
世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる
 

字母(じぼ)(ひらがなのもとになった漢字)

hyakunin-isshu-jibo-83

百人一首(83)世の中よ道こそなけれ思ひ入る山の奥にも鹿ぞ鳴くなる

現代語訳(歌意)・文法解説

※述懐百首歌(じゅっかいひゃくしゅうた)をよみました時、「鹿の歌」といってよんだ歌。

世の中よ、ここにはつらいことから逃れられるような道などないのだ。思いつめて入った山の奥にも、鹿が物悲しく鳴いているのが聞こえる。

世の中よ道こそなけれ思ひ入る山の奥にも鹿ぞ鳴くなる

世の中よ道こそなけれ思ひ入る山の奥にも鹿ぞ鳴くなる

※二句切れ。係り結びが切れ目となる場合が多いです。

※係り結びは、「ぞ・なむ・や・か=連体、こそ=已然形」とまとめて覚えます。

係助詞:ぞ・なむ・や・か・こそ

係助詞:ぞ・なむ・や・か・こそ

※「鳴くなる」の「なる」は、推量の助動詞「なり」の連体形で、耳で聞いた推量を表します(例:「衣うつなり」)。同じく終止形接続の助動詞に「めり」がありますが、これは目で見た推量を表します(例:「秋もいぬめり」)。助動詞の解説は「古文の助動詞の意味と覚え方」にまとめましたのでご確認ください。
 

語釈(言葉の意味)

 

詞書(ことばがき)

※詞書とは、和歌がよまれた事情を説明する短い文のことで、和歌の前につけられます。

述懐百首歌よみ侍(はべり)ける時、鹿の歌とてよめる(※述懐百首歌(じゅっかいひゃくしゅうた)をよみました時、「鹿の歌」といってよんだ歌。)

※詞書の引用は『新日本古典文学大系 千載和歌集』(片野達郎・松野陽一、1993年、岩波書店、344ページ)によります。
 

世の中よ

現世の住み憂さを歎息(たんそく)する表現。「世中(よのなか)」には俗世(ぞくせ)も山奥も含む。「よ」は詠歎(えいたん)。(『新日本古典文学大系 千載和歌集』344ページ)
 

遁(のが)れ出る道。手段の意を含める説もある。(『新日本古典文学大系 千載和歌集』344ページ)
 

思ひ入る

一つのこと深く思いこむ意。「入る」には、山に入る意も重ねる。(『新日本古典文学大系 千載和歌集』344ページ)
 

しか【鹿】

「秋鹿」「小牡鹿(さをしか)」「牡鹿(をじか)」などともよまれた。有名な「夕されば小倉の山に鳴く鹿は今宵は鳴かずいねにけらしも」(万葉集・巻八)のように夕暮れから夜になって鳴くものとされていたが、「よなばりの猪養(ゐかひ)の山に伏す鹿の妻呼ぶ声を聞くがともしさ」(万葉集・巻八)のように妻を求めて鳴くものであった。(後略)
『歌枕 歌ことば辞典』片桐洋一、笠間書院、1999年

 

なる

推量の助動詞で聴覚の確認。(『新日本古典文学大系 千載和歌集』344ページ)
 

百人一首の現代語訳と文法解説はこちらで確認

こちらは小倉百人一首の現代語訳一覧です。それぞれの歌の解説ページに移動することもできます。

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あさぼらけ たびは ひとをし
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あはとも ぶれど みかはら
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あふとの みのえの のくの
あまかぜ をはやみ しのの
あまはら さごの らさめの
あららむ のおとは ぐりあひて
あらふく のうらに しきや
ありけの わかれ ともに
ありやま のをよ らはで
しへの をかも むぐら
いまむと ちぎりきし やまはに
いまただ ちぎり やまとは
りける やぶる されば
みわび みれば のとを
やまに ばねの よのなか
にきく ながらむ よのなか
おほやま ながへば すがら
おほなく なげつつ こめて
ひわび なげとて わがほは
とだに のよは わがでは
さぎの なにおはば わするる
かぜよぐ なには わすじの
かぜいたみ なには わたのはら
きみがため はなそふ わたのはら
きみがため はないろは ぬれば
らやま

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都内の私立大学 文学部国文学専攻出身
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