秋風にたなびく雲の絶え間より漏れ出づる月の影のさやけさ
小倉百人一首から、左京大夫顕輔の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。
また、くずし字・変体仮名で書かれた江戸時代の本の画像も載せております。
ふだん我々が使っている字の形になおした(翻刻と言う)ものと、ひらがなのもとになった漢字(字母)も紹介しておりますので、ぜひ見比べてみてください。
目次
原文
画像転載元国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541162
翻刻(ほんこく)(普段使っている字の形になおす)
釈文(しゃくもん)(わかりやすい表記)
左京大夫顕輔
秋風に たなびく雲の 絶え間より 漏れ出づる月の 影のさやけさ
字母(じぼ)(ひらがなのもとになった漢字)
現代語訳(歌意)・文法解説
※崇徳上皇(すとくじょうこう)に百首歌を差しあげたときに、よんだ歌。
秋風に吹かれてたなびく雲の切れ間から漏れ出る月の光がはっきりとしている。
※体言止め(たいげんどめ)。和歌が体言(名詞)で終わることを体言止めと言います。上の和歌は「さやけさ」という体言(名詞)でしめくくられています。
語釈(言葉の意味)
※特記のないかぎり『岩波 古語辞典 補訂版』(大野晋・佐竹昭広・前田金五郎 編集、岩波書店、1990年)による。
詞書(ことばがき)
※詞書とは、和歌がよまれた事情を説明する短い文のことで、和歌の前につけられます。
崇徳院(すとくゐん)に百首歌たてまつりけるに(※崇徳上皇に百首歌を差しあげたときに、よんだ歌。)
※注
久安(きゅうあん)六年(1150)、久安百首、二句「ただよふ雲の」。
※詞書と注の引用は『新日本古典文学大系 新古今和歌集』(田中裕・赤瀬信吾、1992年、岩波書店、130ページ)によります。
たなびく
霞(かすみ)や雲・煙が長く層状に続くさま。(『新日本古典文学大系 新古今和歌集』130ページ)
たえま【絶え間】
ものごとの途切れ目。切れま。「御文なども―なく遣はす」〈源氏薄雲〉
かげ【影】
(※光)
さやけさ
●さやけ・し【分明し・亮し】
〘形ク〙
①さえて、はっきりしている。「行く水の音も―・く」〈万四〇〇三〉。「山川の―・き見つつ」〈万四四六八〉。「さえわたる池の鏡の―・きに見なれし影を見ぬぞわびしき」〈源氏賢木〉
●さ
〘接尾〙
①方向を表わす。「縦(たた)―にもかにも横―も奴(やっこ)とそ吾(あれ)はありける主(ぬし)の殿戸に」〈万四一三二〉
③形容詞および形容詞的な活用を持つ語の語幹、物の性状を示す体言について、その状態・程度をあらわす。「よ―」「よろし―」「はなやか―」「うつくしげ―」「逢はまほし―」など。「母を離れて行くが悲し―」〈万四三三八〉
百人一首の現代語訳と文法解説はこちらで確認
こちらは小倉百人一首の現代語訳一覧です。それぞれの歌の解説ページに移動することもできます。