71~80番歌

百人一首の意味と文法解説(79)秋風にたなびく雲の絶え間よりもれ出づる月の影のさやけさ┃左京大夫顕輔

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-79

投稿日:2018年3月12日 更新日:

秋風にたなびく雲の絶え間より漏れ出づる月の影のさやけさ

小倉百人一首から、左京大夫顕輔の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。

また、くずし字・変体仮名で書かれた江戸時代の本の画像も載せております。

ふだん我々が使っている字の形になおした(翻刻と言う)ものと、ひらがなのもとになった漢字(字母)も紹介しておりますので、ぜひ見比べてみてください。

Sponsored Link

原文

ogura-hyakunin-isshu-79

百人一首(79)秋風にたなびく雲の絶え間よりもれ出づる月の影のさやけさ

画像転載元
国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541162

翻刻(ほんこく)(普段使っている字の形になおす)

hyakuni-isshu-honkoku-79

百人一首(79)秋風にたなびく雲の絶え間よりもれ出づる月の影のさやけさ

Sponsored Link

釈文(しゃくもん)(わかりやすい表記)

左京大夫顕輔
秋風に たなびく雲の 絶え間より 漏れ出づる月の 影のさやけさ
 

字母(じぼ)(ひらがなのもとになった漢字)

hyakunin-isshu-jibo-79

百人一首(79)秋風にたなびく雲の絶え間よりもれ出づる月の影のさやけさ

現代語訳(歌意)・文法解説

崇徳上皇(すとくじょうこう)に百首歌を差しあげたときに、よんだ歌。

秋風に吹かれてたなびく雲の切れ間から漏れ出る月の光がはっきりとしている。

秋風にたなびく雲の絶え間よりもれ出づる月の影のさやけさ

秋風にたなびく雲の絶え間よりもれ出づる月の影のさやけさ

体言止め(たいげんどめ)。和歌が体言(名詞)で終わることを体言止めと言います。上の和歌は「さやけさ」という体言(名詞)でしめくくられています。
 

Sponsored Link

語釈(言葉の意味)

※特記のないかぎり『岩波 古語辞典 補訂版』(大野晋・佐竹昭広・前田金五郎 編集、岩波書店、1990年)による。
 

詞書(ことばがき)

※詞書とは、和歌がよまれた事情を説明する短い文のことで、和歌の前につけられます。

崇徳院(すとくゐん)に百首歌たてまつりけるに(※崇徳上皇に百首歌を差しあげたときに、よんだ歌。)

※注
久安(きゅうあん)六年(1150)、久安百首、二句「ただよふ雲の」。

※詞書と注の引用は『新日本古典文学大系 新古今和歌集』(田中裕・赤瀬信吾、1992年、岩波書店、130ページ)によります。
 

たなびく

霞(かすみ)や雲・煙が長く層状に続くさま。(『新日本古典文学大系 新古今和歌集』130ページ)
 

たえま【絶え間】

ものごとの途切れ目。切れま。「御文なども―なく遣はす」〈源氏薄雲〉
 

かげ【影】

(※光)
 

さやけさ

●さやけ・し【分明し・亮し】
〘形ク〙
①さえて、はっきりしている。「行く水の音も―・く」〈万四〇〇三〉。「山川の―・き見つつ」〈万四四六八〉。「さえわたる池の鏡の―・きに見なれし影を見ぬぞわびしき」〈源氏賢木〉

●さ
〘接尾〙
①方向を表わす。「縦(たた)―にもかにも横―も奴(やっこ)とそ吾(あれ)はありける主(ぬし)の殿戸に」〈万四一三二〉
③形容詞および形容詞的な活用を持つ語の語幹、物の性状を示す体言について、その状態・程度をあらわす。「よ―」「よろし―」「はなやか―」「うつくしげ―」「逢はまほし―」など。「母を離れて行くが悲し―」〈万四三三八〉
 

百人一首の現代語訳と文法解説はこちらで確認

こちらは小倉百人一首の現代語訳一覧です。それぞれの歌の解説ページに移動することもできます。

Sponsored Link

-71~80番歌
-, , , ,

執筆者:

小倉百人一首検索

▼テーマ別検索

全首一覧下の句決まり字
作者一覧六歌仙三十六歌仙
女性歌人恋の歌四季の歌

>>百人一首の読み上げ

>>五色百人一首一覧

▼初句検索

あきぜにぎりすはるぎて
あきたのこころてにはるよの
ぬればこころかたの
あさふのひとをひといさ
あさぼらけたびはひとをし
あさぼらけすてふくからに
ひきのやこのととぎす
あはしまびしさにみかもり
あはともぶれどみかはら
みてのつゆにばやな
あふとのみのえののくの
あまかぜをはやみしのの
あまはらさごのらさめの
あららむのおとはぐりあひて
あらふくのうらにしきや
ありけのわかれともに
ありやまのをよらはで
しへのをかもむぐら
いまむとちぎりきしやまはに
いまただちぎりやまとは
りけるやぶるされば
みわびみればのとを
やまにばねのよのなか
にきくながらむよのなか
おほやまながへばすがら
おほなくなげつつこめて
ひわびなげとてわがほは
とだにのよはわがでは
さぎのなにおはばわするる
かぜよぐなにはわすじの
かぜいたみなにはわたのはら
きみがためはなそふわたのはら
きみがためはないろはぬれば
らやま

和歌の語句・作者などを検索

おすすめ書籍

古文・古典文法の解説

  ➤ 文法基礎動詞
  ➤ 形容詞形容動詞
  ➤ 助詞助動詞
  ➤ 敬語参考書
  ➤ 古文単語単語帳


Sponsored Link


関連記事

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-72

百人一首の意味と文法解説(72)音に聞く高師の浜のあだ波はかけじや袖の濡れもこそすれ┃祐子内親王家紀伊

音に聞くたかしの浜のあだ波はかけじや袖の濡れもこそすれ 小倉百人一首から、祐子内親王家紀伊の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。 ▼ 現 …

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-78

百人一首の意味と文法解説(78)淡路島通ふ千鳥の鳴く声に幾夜ねざめぬ須磨の関守┃源兼昌

淡路島かよふ千鳥の鳴く声にいく夜ねざめぬ須磨の関守 小倉百人一首から、源兼昌の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。 ▼ 現代語訳・文法解 …

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-80

百人一首の意味と文法解説(80)ながからむ心も知らず黒髪の乱れて今朝はものをこそ思へ┃待賢門院堀河

長からむ心も知らず黒髪のみだれて今朝は物をこそ思へ 小倉百人一首から、待賢門院堀河の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。 ▼ 現代語訳・ …

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-75

百人一首の意味と文法解説(75)契りおきしさせもが露を命にてあはれ今年の秋もいぬめり┃藤原基俊

契りおきしさせもが露を命にてあはれ今年の秋も往ぬめり 小倉百人一首から、藤原基俊の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。 ▼ 現代語訳・文 …

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-71

百人一首の意味と文法解説(71)夕されば門田の稲葉おとづれて葦のまろやに秋風ぞ吹く┃大納言経信

ゆふされば門田の稲葉おとづれて葦のまろやに秋風ぞ吹く 小倉百人一首から、大納言経信の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。 ▼ 現代語訳・ …


運営者 : honda
都内の私立大学 文学部国文学専攻出身
お菓子メーカー勤務のサラリーマン
趣味は歌舞伎を見ること(2012年~)
古文や古典を楽しむ人が一人でも増えればよいなと考えながら情報発信しております。
その他、趣味で始めたプログラミングに関することや、通信制大学(放送大学)、各種資格試験の体験談などについても、記事にまとめております。


Sponsored Link