11~20番歌

百人一首の意味と文法解説(15)君がため春の野に出でて若菜つむ我が衣手に雪はふりつつ┃光孝天皇

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-15

投稿日:2018年3月11日 更新日:

きみがため春の野に出でてわかなつむ我がころもでに雪は降りつつ

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小倉百人一首から、光孝天皇の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。

また、くずし字・変体仮名で書かれた江戸時代の本の画像も載せております。

ふだん我々が使っている字の形になおした(翻刻と言う)ものと、ひらがなのもとになった漢字(字母)も紹介しておりますので、ぜひ見比べてみてください。

原文

ogura-hyakunin-isshu-15

百人一首(15)君がため春の野にいでて若菜つむわがころもでに雪はふりつつ


画像転載元
国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541162

翻刻(ほんこく)(普段使っている字の形になおす)

hyakuni-isshu-honkoku-15

百人一首(15)君がため春の野にいでて若菜つむわが衣手に雪はふりつつ

釈文(しゃくもん)(わかりやすい表記)

光孝天皇
君がため 春の野に出でて 若菜摘む わが衣手に 雪はふりつつ
 

字母(じぼ)(ひらがなのもとになった漢字)

hyakunin-isshu-jibo-15

百人一首(15)君が為春の野に出でて若菜摘む我が衣手に雪はふりつつ

現代語訳(歌意)・文法解説

※光孝(こうこう)天皇が、親王でいらっしゃった時に、人に若菜をお与えになった御(おん)和歌。

あなたのために、春の野に出て若菜を摘んでいる私の袖に、雪が降りかかってきております。

君がため春の野にいでて若菜つむわがころもでに雪はふりつつ

君がため春の野にいでて若菜つむわがころもでに雪はふりつつ

※格助詞や接続助詞などの解説は、「古典の助詞の覚え方」にまとめましたのでご確認ください。
 

語釈(言葉の意味)

※特記のないかぎり『岩波 古語辞典 補訂版』(大野晋・佐竹昭広・前田金五郎 編集、岩波書店、1990年)による。
 

詞書(ことばがき)

※詞書とは和歌の前についている、和歌がよまれた事情を説明した短い文です。

仁和帝(にんなのみかど)、親王(みこ)におまし\/(※繰返し記号 引用者補)ける時に、人に若菜(わかな)賜(たま)ひける御歌(※光孝天皇が、親王でいらっしゃった時に、人に若菜をお与えになった御和歌。)

○親王におまし\/ける
光孝天皇が親王であったの意。光孝天皇は元慶八年(五十五歳)まで親王の位にいた。「おまし\/」は他に例がなく不明、「おはします」の意か。

※詞書本文と注の引用は『新日本古典文学大系 古今和歌集』(小島憲之・新井栄蔵、岩波書店、1989年、24・25ページ)によります。
 

わかな【若菜】

①初春に摘む菜。「明日よりは―摘まむと標(し)めし野に昨日も今日も雪は降りつつ」〈万一四二七〉
 

ころもで【衣手】

①袖。「朝露に裳の裾ひづち、夕霧に―ぬれて」〈万三六九一〉
 

つつ

奈良時代に極めて多く用いられ、平安時代以後、次第に「ながら」に取って代られた語である。語源については多くの説があるが、首肯されるものはない。動詞型活用語の連用形を承け、主に同じ動作の反覆される意を表わす(1)。(中略)なお、歌で、「つつ」が文末に来て、そこで歌いとめる用法がある。形式上断止の形とならず、下文が予想される状態で言いさすので、何とない余情のこもる用法である(6)。

(1)「しきたへの袖返しつつ寝る夜おちず夢には見れど」〈万三九七八〉「玉の緒のくくり寄せつつ末終にゆきは分れず同じ緒にあらむ」〈万四一五〇〉
(6)「三島野に霞たなびきしかすがに昨日も今日も雪は降りつつ」〈万四〇七九〉「こと降らば袖さへ濡れてとほるべく降りなむ雪の空に消(け)につつ」〈万二三一七〉
 

作者:光孝天皇(こうこうてんのう)について

仁明天皇の子

天長(てんちょう)7年(830)~仁和(にんな)3年(887)。諱(いみな)(生前の名前のこと)は時康。仁明(にんみょう)天皇の第三皇子。仁和帝(にんなのみかど)・小松帝(こまつのみかど)と呼ばれました。

光孝天皇の系図:仁明・文徳・清和・陽成・光孝・宇多・醍醐・朱雀・村上

光孝天皇の系図:仁明・文徳・清和・陽成・光孝・宇多・醍醐・朱雀・村上


 

小松帝の由来

光孝天皇は小松殿(こまつどの)で生まれたので、小松帝と呼ばれるようになりました。

小松殿は、平安京大内裏(だいだいり)の郁芳門(いくほうもん)の北側にありました。郁芳門の近くには、米の管理や食料支給を担当する大炊寮(おおいりょう)という役所があったため、郁芳門は大炊御門(おおいのみかど)とも言われました。

平安京大内裏の外郭十二門:小松殿は郁芳門(大炊御門)の北側にあった

平安京大内裏の外郭十二門:小松殿は郁芳門(大炊御門)の北側にあった


 

仁和寺(にんなじ)

仁和寺は光孝天皇の勅願(ちょくがん)により造営され、光孝天皇の死後の仁和4年(888)、皇子の宇多(うだ)天皇によって建立(こんりゅう)されました。

宇多天皇は昌泰(しょうたい)2年(899)に仁和寺で出家し、初の法皇(ほうおう)となりました。

仁和寺は応仁(おうにん)の乱(1467年)により全焼し、江戸時代に再建されました。仁和寺の近くには光孝天皇が葬られたとされる墓所があります。

●参考文献
・『新詳日本史』浜島書店、2009年
・真言宗御室派 総本山 仁和寺HP「仁和寺の歴史」(http://www.ninnaji.jp/about_history/ 最終閲覧2018年6月10日)
 

百人一首の現代語訳と文法解説はこちらで確認

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あきぜに ぎりす はるぎて
あきたの こころてに はるよの
ぬれば こころ かたの
あさふの ひとを ひといさ
あさぼらけ たびは ひとをし
あさぼらけ すてふ くからに
ひきの やこの ととぎす
あはしま びしさに みかもり
あはとも ぶれど みかはら
みての つゆに ばやな
あふとの みのえの のくの
あまかぜ をはやみ しのの
あまはら さごの らさめの
あららむ のおとは ぐりあひて
あらふく のうらに しきや
ありけの わかれ ともに
ありやま のをよ らはで
しへの をかも むぐら
いまむと ちぎりきし やまはに
いまただ ちぎり やまとは
りける やぶる されば
みわび みれば のとを
やまに ばねの よのなか
にきく ながらむ よのなか
おほやま ながへば すがら
おほなく なげつつ こめて
ひわび なげとて わがほは
とだに のよは わがでは
さぎの なにおはば わするる
かぜよぐ なには わすじの
かぜいたみ なには わたのはら
きみがため はなそふ わたのはら
きみがため はないろは ぬれば
らやま

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都内の私立大学 文学部国文学専攻出身
お菓子メーカー勤務のサラリーマン
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