11~20番歌

百人一首の意味と文法解説(19)難波潟みじかき葦のふしの間もあはでこの世を過ぐしてよとや┃伊勢

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-19

投稿日:2018年3月11日 更新日:

難波潟みじかき葦のふしの間もあはでこの世を過ぐしてよとや

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小倉百人一首から、伊勢の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。

また、くずし字・変体仮名で書かれた江戸時代の本の画像も載せております。

ふだん我々が使っている字の形になおした(翻刻と言う)ものと、ひらがなのもとになった漢字(字母)も紹介しておりますので、ぜひ見比べてみてください。

目次

原文

ogura-hyakunin-isshu-19

百人一首(19)難波潟みじかき葦のふしの間もあはでこの世を過ぐしてよとや

画像転載元
国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541162

翻刻(ほんこく)(普段使っている字の形になおす)

hyakuni-isshu-honkoku-19

百人一首(19)難波潟みじかき葦のふしの間もあはでこの世を過ぐしてよとや

釈文(しゃくもん)(わかりやすい表記)

伊勢
難波潟 短き葦の ふしの間も 逢はでこの世を 過ぐしてよとや
 

字母(じぼ)(ひらがなのもとになった漢字)

hyakunin-isshu-jibo-19

百人一首(19)難波潟みじかき葦のふしの間もあはでこの世を過ぐしてよとや

現代語訳(歌意)・文法解説

難波潟に生えている葦の、その短い節と節の間のように短い間も、あなたに逢わずにこの世を過ごせと言うのでしょうか。

難波潟短き葦の節の間もあはでこの世を過ぐしてよとや

難波潟短き葦の節の間もあはでこの世を過ぐしてよとや

序詞(じょことば)。音や意味から特定の言葉を導きだす言葉で、5音(5文字)以上のものを序詞と言います。枕詞(まくらことば)も同じようなはたらきをしますが、5音(5文字)におさまります。

※掛詞(かけことば)。音が同じことを利用して、二つの意味を表わすことです。

※「や」は係助詞ですが係り結びが省略されています。「あらむ」が省略されているとも考えられます。係り結びについては「古典の助詞の覚え方」をご覧ください。
 

語釈(言葉の意味)

※特記のないかぎり『岩波 古語辞典 補訂版』(大野晋・佐竹昭広・前田金五郎 編集、岩波書店、1990年)による。
 

難波潟

●なには ナニワ 【難波・浪速】
今の大阪市およびその付近の古称。「―の碕(みさき)に到るときに奔(はや)き潮有りて太(はなは)だ急(はや)きに会ひぬ。因りて名(なづ)けて浪速(なみはや)の国とす。亦、浪花(なみはな)といふ。今―といふは訛(よこなま)れるなり」〈紀神武即位前〉

●―がた【難波潟】
「難波江」に同じ。「―潮干に立ちて見渡せば」〈万一一六〇〉

●―え【難波江】
大阪市淀川河口付近の海の古称。また特に、難波の堀江。「―の潮満つまでに」〈平中二三〉

●なには【難波(なにわ)】

摂津国の淀川の河口周辺。今の大阪市のこと。「昔こそ難波ゐなかと言はれけめいま都引き都びにけり」(万葉集・巻三・宇合)とあるが、上町台地を除けば海ともつかず陸ともつかずというような低湿地であって、葦が生い茂り、荒涼としたイメージであったようである。「津の国の難波の葦の目もはるに繁き我が恋人知るらめや」(古今集・恋二・貫之)「津の国の難波の春は夢なれや葦の枯葉に風わたるなり」(新古今集・冬・西行)など「葦」をよんだ歌はきわめて多い。(中略)なお、「難波人(びと)」「難波舟」「難波女(め)」「難波江」「難波潟」「難波津」「難波の海」「難波の浦」「難波の御津(みつ)」「難波堀江」などという形でもよく歌によまれたが、とらえ方は「難波」の場合とおおむね同じと言ってよかろう。
歌枕 歌ことば辞典』片桐洋一、笠間書院、1999年

 

あし【葦・蘆】

イネ科の多年草。水辺に生える。茎は屋根をふき、また垣・簾(すだれ)を作るのに使う。奈良時代には難波のアシが有名だった。「―刈ると海士(あま)の小舟は」〈万四〇〇六〉。「―を伊勢には浜荻(はまをぎ)と云ふ也。摂津国には―といひ、東(あづま)にはよしといふなど云へり」〈仙覚抄四〉
 

逢ふ

●あ・ひ アイ 【合ひ・会ひ・逢ひ】
一〘四段〙
❶二つのものが互いに寄って行き、ぴったりとぶつかる。①対面する。「昔の人にまたも―・はめやも」〈万三一〉
❷二つのものが近寄って、しっくりと一つになる。⑤契りを結ぶ。結婚する。「男は女に―・ふことをす」〈竹取〉
 

この世

(※「節(ふし)」の縁語、「節(よ)」から「世」を導く。)

よ【節】《ヨ(代・世)と同根か》
竹などの、ふしとふしとの間。「節(ふし)を隔てて―ごとに金(こがね)ある竹を見つくる事かさなりぬ」〈竹取〉。「両節間、ヨ」〈名義抄〉
 

百人一首の現代語訳と文法解説はこちらで確認

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あきぜにぎりすはるぎて
あきたのこころてにはるよの
ぬればこころかたの
あさふのひとをひといさ
あさぼらけたびはひとをし
あさぼらけすてふくからに
ひきのやこのととぎす
あはしまびしさにみかもり
あはともぶれどみかはら
みてのつゆにばやな
あふとのみのえののくの
あまかぜをはやみしのの
あまはらさごのらさめの
あららむのおとはぐりあひて
あらふくのうらにしきや
ありけのわかれともに
ありやまのをよらはで
しへのをかもむぐら
いまむとちぎりきしやまはに
いまただちぎりやまとは
りけるやぶるされば
みわびみればのとを
やまにばねのよのなか
にきくながらむよのなか
おほやまながへばすがら
おほなくなげつつこめて
ひわびなげとてわがほは
とだにのよはわがでは
さぎのなにおはばわするる
かぜよぐなにはわすじの
かぜいたみなにはわたのはら
きみがためはなそふわたのはら
きみがためはないろはぬれば
らやま

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