71~80番歌

百人一首の意味と文法解説(78)淡路島通ふ千鳥の鳴く声に幾夜ねざめぬ須磨の関守┃源兼昌

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-78

投稿日:2018年3月12日 更新日:

淡路島かよふ千鳥の鳴く声にいく夜ねざめぬ須磨の関守

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小倉百人一首から、源兼昌の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。

また、くずし字・変体仮名で書かれた江戸時代の本の画像も載せております。

ふだん我々が使っている字の形になおした(翻刻と言う)ものと、ひらがなのもとになった漢字(字母)も紹介しておりますので、ぜひ見比べてみてください。

原文

ogura-hyakunin-isshu-78

百人一首(78)淡路島通ふ千鳥の鳴く声に幾夜ねざめぬ須磨の関守


画像転載元
国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541162

翻刻(ほんこく)(普段使っている字の形になおす)

hyakuni-isshu-honkoku-78

百人一首(78)淡路島通ふ千鳥の鳴く声に幾夜ねざめぬ須磨の関守

釈文(しゃくもん)(わかりやすい表記)

源兼昌
淡路島 通ふ千鳥の 鳴く声に 幾夜ねざめぬ 須磨の関守
 

字母(じぼ)(ひらがなのもとになった漢字)

hyakunin-isshu-jibo-78

百人一首(78)淡路島通ふ千鳥の鳴く声に幾夜ねざめぬ須磨の関守

現代語訳(歌意)・文法解説

※「関所のある道にやってくる千鳥」といったことをよんだ歌。

淡路島からわたってくる千鳥の鳴く声に、幾晩目を覚ましたことか、須磨の関所の番人よ。

淡路島通ふ千鳥の鳴く声に幾夜ねざめぬ須磨の関守

淡路島通ふ千鳥の鳴く声に幾夜ねざめぬ須磨の関守

体言止め(たいげんどめ)。和歌を名詞(体言)でしめくくることを言います。

※「ぬ」は連用形接続の助動詞で、強意(きっと~)・完了(~た)の意味を表します。連用形に接続する助動詞はぜんぶで、「き・けり・つ・ぬ・たり・たし・けむ」の7種類です。くわしい解説は「古文の助動詞の意味と覚え方」をご覧ください。
 

補足:淡路島・須磨の地図

※須磨と淡路島は、どちらもいまの兵庫県にあります。

百人一首:淡路島・須磨

百人一首:淡路島・須磨


 

語釈(言葉の意味)

※特記のないかぎり『岩波 古語辞典 補訂版』(大野晋・佐竹昭広・前田金五郎 編集、岩波書店、1990年)による。
 

詞書(ことばがき)

※詞書とは、和歌のよまれた事情を説明する短い文のことで、和歌の前につけられます。

関路千鳥(せきぢのちどり)といへることをよめる(※「関所のある道にやってくる千鳥」といったことをよんだ歌。)

※詞書の引用は『新日本古典文学大系 金葉和歌集 詞花和歌集』(川村晃生・柏木由夫・工藤重矩、1989年、岩波書店、75ページ)によります。
 

淡路島

●あはぢしま【淡路島(あわじしま)】

「淡路潟」「淡路の瀬戸」「淡路島山」などともよまれた。兵庫県の淡路。『日本書紀』『古事記』に見えるいざなぎの命(みこと)・いざなみの命が最初に作った島として有名だが、和歌の世界においても、早く『万葉集』に数多くよまれている。平安時代に入ってからは、『源氏物語』明石の巻にも引かれた「淡路にてあはとはるかに見し月の近き今宵は所がらかも」(新古今集・雑上・躬恒、躬恒集)と『百人一首』『金葉集』に見える源兼昌の「淡路島かよふ千鳥の鳴く声に幾夜寝ざめぬ須磨の関守」(冬)が特に有名で、それによった表現が多かった。「住吉(すみよし)の浦よりをちになりにけり月見る西の淡路島山」(順徳院集)は前者の例であり、「淡路島瀬戸の潮干の夕暮に須磨よりかよふ千鳥鳴くなり」(山家集)は後者の例であるが、前者の「淡(あは)」からあわく霞んだ海上の雰囲気を「春といへば霞にけりな昨日まで波間に見えし淡路島山」(新古今集・春上・俊恵)のように霞を中心によんだり、逆に月の光はそれらをも完全に照らすとして「くまもなき淡路の水脈(みを)の月影は棚無小舟浦伝ひゆく」(出観集)のように「くまもなき」「月影」をよんだりすることが多い。
『歌枕 歌ことば辞典』片桐洋一、笠間書院、1999年

 

千鳥

●ちどり【千鳥】
①多くの鳥。「朝猟(あさかり)に五百(いほ)つ鳥立て夕猟に―踏み立て」〈万四〇一一〉
②チドリ科の鳥。海や河の水辺に住み、ちちと鳴いて群をなして飛ぶ。「淡海の海夕浪―汝が鳴けば心もしのに古へ思ほゆ」〈万二六六〉
 

(※完了の助動詞「ぬ」終止形)
 

すま【須磨】

 「須磨の浦」「須磨の関」という形でもよまれた摂津国の歌枕。今の兵庫県神戸市須磨区の一部。特に海岸に近いあたりをいった。(中略)
 歌枕としての須磨を考える場合忘れてはならないのは『源氏物語』須磨・明石両巻の存在である。なかでも「友千鳥もろ声に鳴くあかつきは一人寝覚めの床もたのもし」(須磨の巻)「遥かにも思ひやるかな知らざりし浦より遠(をち)に浦伝ひして」(明石の巻)などの影響は大きく、「明石潟須磨も一つに空冴えて月に千鳥も浦伝ふなり」(秋篠月清集)のように「月」「千鳥」「浦伝ふ」などの語がよくよみ込まれた。
 また摂津国と播磨国の境をなす「須磨の関守」は平安時代後期には廃されていたが、そのゆえにかえって歌枕として定着し、「淡路島かよふ千鳥の鳴く声に幾夜寝覚めぬ須磨の関守」(金葉集・冬・兼昌、百人一首)とか「播磨路(はりまぢ)や須磨の関屋の板廂月漏れとてやまばらなるらむ」(千載集・覉旅・師俊)をはじめ数多くよまれた。
『歌枕 歌ことば辞典』片桐洋一、笠間書院、1999年

 

ねざめ

●ねざ・め【寝覚め】
一〘下二〙
《当然もっと続くはずの眠りから覚める意》
眠りの途中で目をさます。「夜ぐたちに(夜中過ギテ)―・めて居れば」〈万四一四六〉。「さよふけて山ほととぎす鳴くごとに誰も―・めて」〈古今一〇〇二〉
 

せきもり【関守】

関所を守る役人。関所の番人。「わが背子が跡ふみ求め追ひ行かば紀伊(き)の―い留(とど)めてむかも」〈万五四五〉
 

せき【関】

①《「塞き」の意》
非常に備え、不慮の災いを警戒する所。道路の要所、或いは国境に設置する。令制に、美濃不破・伊勢鈴鹿・越前愛発(あらち)(平安時代には近江逢坂)を三関といい、武器・兵士を常設し、畿内の守護を目的とした。中世には道路・交通施設の使用料・修理費の徴収などを目的として関所が乱設された。「過所(くわそ)なしに―飛び越ゆるほととぎすまねく吾子にも止まず通はむ」〈万三七五四〉。「夢に道行く心地して、愛発の―をも通り給ふ」〈義経記七〉。
 

百人一首の現代語訳と文法解説はこちらで確認

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あきぜに ぎりす はるぎて
あきたの こころてに はるよの
ぬれば こころ かたの
あさふの ひとを ひといさ
あさぼらけ たびは ひとをし
あさぼらけ すてふ くからに
ひきの やこの ととぎす
あはしま びしさに みかもり
あはとも ぶれど みかはら
みての つゆに ばやな
あふとの みのえの のくの
あまかぜ をはやみ しのの
あまはら さごの らさめの
あららむ のおとは ぐりあひて
あらふく のうらに しきや
ありけの わかれ ともに
ありやま のをよ らはで
しへの をかも むぐら
いまむと ちぎりきし やまはに
いまただ ちぎり やまとは
りける やぶる されば
みわび みれば のとを
やまに ばねの よのなか
にきく ながらむ よのなか
おほやま ながへば すがら
おほなく なげつつ こめて
ひわび なげとて わがほは
とだに のよは わがでは
さぎの なにおはば わするる
かぜよぐ なには わすじの
かぜいたみ なには わたのはら
きみがため はなそふ わたのはら
きみがため はないろは ぬれば
らやま

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都内の私立大学 文学部国文学専攻出身
お菓子メーカー勤務のサラリーマン
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