91~100番歌

百人一首の意味と文法解説(92)わが袖は潮干に見えぬ沖の石の人こそ知らねかわく間もなし┃二条院讃岐

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-92

投稿日:2018年3月12日 更新日:

わが袖はしほひに見えぬ沖の石の人こそ知らねかわく間もなし

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小倉百人一首から、二条院讃岐の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。

また、くずし字・変体仮名で書かれた江戸時代の本の画像も載せております。

ふだん我々が使っている字の形になおした(翻刻と言う)ものと、ひらがなのもとになった漢字(字母)も紹介しておりますので、ぜひ見比べてみてください。

原文

ogura-hyakunin-isshu-92

百人一首(92)わが袖は潮干に見えぬ沖の石の人こそ知らねかわく間もなし


画像転載元
国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541162

翻刻(ほんこく)(普段使っている字の形になおす)

hyakuni-isshu-honkoku-92

百人一首(92)わが袖は潮干に見えぬ沖の石の人こそ知らねかわく間もなし

釈文(しゃくもん)(わかりやすい表記)

二条院讃岐
わが恋(袖)は 潮干に見えぬ 沖の石の 人こそ知らね かわく間もなし
 

字母(じぼ)(ひらがなのもとになった漢字)

hyakunin-isshu-jibo-92

百人一首(92)わが袖は潮干に見えぬ沖の石の人こそ知らねかわく間もなし

現代語訳(歌意)・文法解説

※「石に関連づける恋」といったことを、よんだ歌。

私の袖は、干潮の時でも見えない沖の石のように、人は知らないでしょうが、涙にぬれてかわくひまもないのです。

わが袖は潮干に見えぬ沖の石の人こそ知らねかわく間もなし

わが袖は潮干に見えぬ沖の石の人こそ知らねかわく間もなし

※「石の」の「の」は、連用修飾(~のように)の意味を表す格助詞です。格助詞「の」には、①主格、②連体修飾、③同格、④体言の代用、⑤連用修飾、の5つの用法がありますが、ここでは連用修飾の意味です。そのほかの用法は「古文の助詞の覚え方」でご確認ください。

※係助詞「こそ」は強意の格助詞ですが、文中に使われた場合、逆接(~けれど)の意味を表すことがあります。「人こそ知らね」は「人は知らないけれど」の意味です。係り結びは已然形です(「ぞ・なむ・や・か=連体、こそ=已然形」)。

係助詞:ぞ・なむ・や・か・こそ

係助詞:ぞ・なむ・や・か・こそ

 
▽「寄石恋(いしによするこい)」という歌題から「沖の石」を引き出し、深く秘めた恋と夜昼乾くことのない涙の袖を象徴した。作者はこの歌で「沖の石の讃岐」の異名(いみょう)をとる。(『新日本古典文学大系 千載和歌集』片野達郎・松野陽一、1993年、岩波書店、230ページ)
 

語釈(言葉の意味)

※特記のないかぎり『岩波 古語辞典 補訂版』(大野晋・佐竹昭広・前田金五郎 編集、岩波書店、1990年)による。
 

詞書(ことばがき)

※詞書とは、和歌がよまれた事情を説明する短い文のことで、和歌の前に置かれます。

レ スル恋(いしによするこひ)といへる心を(※「石に関連づける恋」といったことを、よんだ歌。)

※詞書の引用は『新日本古典文学大系 千載和歌集』(230ページ)によります。
 

●そで【袖】

 (前略)しかし、「袖」によって連想されるものは、やはり「涙」である。「天の川恋しき瀬にぞ渡りぬるたきつ涙に袖は濡れつつ」(後撰集・秋上・読人不知)「つれづれのながめにまさる涙川袖のみ濡れて逢ふよしもなし」(古今集・恋三・敏行)のように「涙」に「濡れ」、「契りきなかたみに袖をしぼりつつ末の松山浪越さじとは」(後拾遺集・恋四・元輔、百人一首)のように「袖をしぼり」、「我ながら思ふか物をとばかりに袖にしぐるる庭の松風」(新古今集・雑中・有家)のように「袖」が「時雨」に濡れそぼち、「ぬばたまの夜渡る月をおもしろみ吾が居る袖に露ぞおきにける」(万葉集・巻七)のように「時雨」や「露」が袖を濡らし、「袖の雫(しづく)」(伊勢物語・七十五段)「袖の滝つせ」(新拾遺集・恋一)などにもたとえられたが、いっぽうそのように落ちる涙をとめるものとして「袖」を「柵(しがらみ)」(拾遺集・恋四)として用いたりもした。(後略)
『歌枕 歌ことば辞典』片桐洋一、笠間書院、1999年

●袖を絞・る
涙でぬれた袖をしぼる。袖をしぼるほど涙を流して泣く。「上一人より下万人に至るまで―・らぬはなかりけり」〈保元下・為義の北の方〉
 

しほひ

●しほひシオ ‥ 【潮干】
①潮水がひくこと。「難波潟(なにはがた)―のなごりよく見てむ」〈万九七六〉
 

沖の石の

(※沖の石のように)

●おきのいし【沖の石】

『百人一首』にもとられている「我が袖は潮干に見えぬ沖の石の人こそ知らね乾く間もなし」(千載集・恋二・讃岐)は『千載集』や『二条院讃岐集』では「石に寄する恋」という題をよんだ題詠歌で特定の地をよんだものではなかったが、後世、宮城県多賀城市(芭蕉『奥の細道』)や福井県小浜市(香川景樹『百首異見』)のように、特定の地名に付会されるようになった。
『歌枕 歌ことば辞典』片桐洋一、笠間書院、1999年

 

人こそ知らね

人は知らないが。(『新日本古典文学大系 千載和歌集』230ページ)
 

百人一首の現代語訳と文法解説はこちらで確認

こちらは小倉百人一首の現代語訳一覧です。それぞれの歌の解説ページに移動することもできます。

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あきぜに ぎりす はるぎて
あきたの こころてに はるよの
ぬれば こころ かたの
あさふの ひとを ひといさ
あさぼらけ たびは ひとをし
あさぼらけ すてふ くからに
ひきの やこの ととぎす
あはしま びしさに みかもり
あはとも ぶれど みかはら
みての つゆに ばやな
あふとの みのえの のくの
あまかぜ をはやみ しのの
あまはら さごの らさめの
あららむ のおとは ぐりあひて
あらふく のうらに しきや
ありけの わかれ ともに
ありやま のをよ らはで
しへの をかも むぐら
いまむと ちぎりきし やまはに
いまただ ちぎり やまとは
りける やぶる されば
みわび みれば のとを
やまに ばねの よのなか
にきく ながらむ よのなか
おほやま ながへば すがら
おほなく なげつつ こめて
ひわび なげとて わがほは
とだに のよは わがでは
さぎの なにおはば わするる
かぜよぐ なには わすじの
かぜいたみ なには わたのはら
きみがため はなそふ わたのはら
きみがため はないろは ぬれば
らやま

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都内の私立大学 文学部国文学専攻出身
お菓子メーカー勤務のサラリーマン
趣味は歌舞伎鑑賞(2012年~)
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