81~90番歌

百人一首の意味と文法解説(90)見せばやな雄島のあまの袖だにも濡れにぞ濡れし色は変はらず┃殷富門院大輔

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-90

投稿日:2018年3月12日 更新日:

みせばやなをじまのあまの袖だにも濡れにぞ濡れし色は変はらず

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小倉百人一首から、殷富門院大輔の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。

また、くずし字・変体仮名で書かれた江戸時代の本の画像も載せております。

ふだん我々が使っている字の形になおした(翻刻と言う)ものと、ひらがなのもとになった漢字(字母)も紹介しておりますので、ぜひ見比べてみてください。

原文

ogura-hyakunin-isshu-90

百人一首(90)見せばやな雄島のあまの袖だにも濡れにぞ濡れし色は変はらず

画像転載元
国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541162

翻刻(ほんこく)(普段使っている字の形になおす)

hyakuni-isshu-honkoku-90

百人一首(90)見せばやな雄島のあまの袖だにも濡れにぞ濡れし色は変はらず

釈文(しゃくもん)(わかりやすい表記)

殷富門院大輔
見せばやな 雄島のあまの 袖だにも 濡れにぞ濡れし 色は変はらず
 

字母(じぼ)(ひらがなのもとになった漢字)

hyakunin-isshu-jibo-90

百人一首(90)見せばやな雄島のあまの袖だにも濡れにぞ濡れし色は変はらず

現代語訳(歌意)・文法解説

あなたにお見せしたいものだ。雄島の海人の袖さえ、いくら濡れても色は変わらない。それなのに、血の涙に濡れて色が変わってしまった私の袖を。

見せばやな雄島のあまの袖だにも濡れにぞ濡れし色は変はらず

見せばやな雄島のあまの袖だにも濡れにぞ濡れし色は変はらず

※初句切れ・四句切れ。係り結びが切れ目となる場合が多いです。

※「ばや」は、自分の願望(~したい)の意味を表す終助詞で、未然形に接続します。いっぽう、「なむ」は、他者に対する願望(~してほしい)の意味を表す終助詞で、同じく未然形に接続します(例:「外山の霞たたずもあらなむ」・「みゆき待たなむ」など)。「なむ」は、連用形につく場合、「強意の助動詞『ぬ』の未然形 + 推量の助動詞『む』」なので注意が必要です。

ばや・なむ

ばや・なむ

※係助詞「ぞ」は連体形で結びます。係り結びは「ぞ・なむ・や・か=連体、こそ=已然形」とまとめて覚えます。

係助詞:ぞ・なむ・や・か・こそ

係助詞:ぞ・なむ・や・か・こそ

助詞の解説は「古文の助詞の覚え方」にまとめましたのでご確認ください。
 

語釈(言葉の意味)

 

ばや

(※願望の終助詞「~たい」)
 

雄島の海人

「雄島」は松島の雄島、陸奥国(むつのくに)の歌枕。雄島の海人の袖は潮に濡れている、というのが和歌の世界の通念。「海人」は「海士」「海女」男女ともに用いる。ここは「海女」か。(『新日本古典文学大系 千載和歌集』片野達郎・松野陽一、1993年、岩波書店、265ページ)
 

をじま【雄島(おじま)】

「雄島が磯」の形でもよまれた陸奥(みちのく)の歌枕。陸前国、今の宮城県松島湾内の島。源重之の「松島や雄島の磯にあさりせし海人(あま)の袖こそかくは濡れしか」(後拾遺集・恋四)が有名で、以後も「海人(あま)」をよみ込むことが多く、併せて「袖」「濡る」などの語もよく用いられた。「見せばやな雄島の海人(あま)の袖だにもぬれにぞぬれし色はかはらず」(千載集・恋四・殷富門院大輔、百人一首)などがその例である。そのほか「たちかへりまたも来てみむ松島や雄島の苫屋(とまや)浪にあらすな」(新古今集・羇旅・俊頼)「秋の夜の月や雄島のあまの原あけ方近き沖の釣舟」(同・秋上・家隆)などのように、「松島」の地名とともによんだり、「月」「千鳥」「松」などをよみ込むことが多かった。
『歌枕 歌ことば辞典』片桐洋一、笠間書院、1999年

 

補足:雄島の地図

※宮城県の松島湾の場所は下記のとおりです。

百人一首:雄島・松島

百人一首:雄島・松島

 

だに

(※副助詞:「~さえ」の意。)
 

濡れにぞ濡れし

濡れに濡れた。「しかし…」と下に続く句法。
 

百人一首の現代語訳と文法解説はこちらで確認

こちらは小倉百人一首の現代語訳一覧です。それぞれの歌の解説ページに移動することもできます。

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あきぜに ぎりす はるぎて
あきたの こころてに はるよの
ぬれば こころ かたの
あさふの ひとを ひといさ
あさぼらけ たびは ひとをし
あさぼらけ すてふ くからに
ひきの やこの ととぎす
あはしま びしさに みかもり
あはとも ぶれど みかはら
みての つゆに ばやな
あふとの みのえの のくの
あまかぜ をはやみ しのの
あまはら さごの らさめの
あららむ のおとは ぐりあひて
あらふく のうらに しきや
ありけの わかれ ともに
ありやま のをよ らはで
しへの をかも むぐら
いまむと ちぎりきし やまはに
いまただ ちぎり やまとは
りける やぶる されば
みわび みれば のとを
やまに ばねの よのなか
にきく ながらむ よのなか
おほやま ながへば すがら
おほなく なげつつ こめて
ひわび なげとて わがほは
とだに のよは わがでは
さぎの なにおはば わするる
かぜよぐ なには わすじの
かぜいたみ なには わたのはら
きみがため はなそふ わたのはら
きみがため はないろは ぬれば
らやま

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都内の私立大学 文学部国文学専攻出身
お菓子メーカー勤務のサラリーマン
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