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百人一首の意味と文法解説(2)春過ぎてなつきにけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山┃持統天皇

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-2

投稿日:2018年3月10日 更新日:

春すぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山

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小倉百人一首から、持統天皇の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。

また、くずし字・変体仮名で書かれた江戸時代の本の画像も載せております。

ふだん我々が使っている字の形になおした(翻刻と言う)ものと、ひらがなのもとになった漢字(字母)も紹介しておりますので、ぜひ見比べてみてください。

原文

ogura-hyakunin-isshu-2

百人一首(2)春過ぎてなつきにけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山


画像転載元
国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541162

翻刻(ほんこく)(普段使っている字の形になおす)

hyakuni-isshu-honkoku-2

百人一首(2)春過ぎて夏きにけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山

釈文(しゃくもん)(わかりやすい表記)

持統天皇
春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山
 

字母(じぼ)(ひらがなのもとになった漢字)

hyakunin-isshu-jibo-2

百人一首(2)春過ぎてなつきにけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山

現代語訳(歌意)・文法解説

※この和歌の題やよまれた事情は明らかでない。

春が過ぎて夏が来たらしい。「夏になると衣を干す」という天の香具山に衣が干してある。

春過ぎて夏来にけらし白妙(しろたえ)の衣干すてふ天の香具山

春過ぎて夏来にけらし白妙(しろたえ)の衣干すてふ天の香具山

※二句切れ(にくぎれ)。終止形や係り結びがあるところで、和歌の意味の切れ目となる場合が多いです。

体言止め。和歌が「天の香具山」という体言(名詞)でしめくくられています。

※「らし」は終止形接続の助動詞ですが、ラ変型活用語には連体形に接続します。終止形接続の助動詞はぜんぶで、「べし・らし・まじ・らむ・めり・なり」の6種類です。助動詞の接続や活用は「古典の助動詞の活用表の覚え方」をご覧ください。
 

語釈(言葉の意味)

※特記のないかぎり『岩波 古語辞典 補訂版』(大野晋・佐竹昭広・前田金五郎 編集、岩波書店、1990年)による。
 

詞書(ことばがき)

※詞書とは、和歌がよまれた事情を説明する短い文のことで、和歌の前につけられます。

題しらず(※和歌の題やよまれた事情が明らかでないこと。)

原歌は万葉集一、四句「ころもさらせり(ほしたり)」。古来風体抄(※こらいふうていしょう。式子内親王の要請により藤原俊成が書いた歌学書。古来の名歌を引用して論じる。)、二・四句「なつぞきぬらし…ころもかわかす」。

▽万葉集の第四句は実景を写すのに止まるが、ここでは実景に伝承が重なり、現在と過去が結び合う。そこにむしろ強く時代の共感をよぶものがあった。夏山の青と白衣の取合せも新古今集にふさわしい。

※詞書と注の引用は『新日本古典文学大系 新古今和歌集』(田中裕・赤瀬信吾、岩波書店、1992年、67ページ)によります。
 

けらし

けらし
〘連語〙《回想の助動詞ケリの連体形ケルに推量の助動詞ラシのついたケルラシの約》
①過去の推量を表わす。…たらしい。「鳴く鹿は今夜(こよひ)は鳴かずい寝に―も」〈万一五一一〉
 

しろたへ【白栲・白妙(しろたえ)】

梶の木などの木の皮の繊維で織った素朴な白い布。「我がためと七夕(たなばた)つ妻(め)のそのやどに織(お)る白栲(しろたへ)は織(お)りてけむかも」(万葉集・巻十)は「布」そのものをよんだ例である。「……玉ほこの 道来る人の 泣く涙 こさめに降れば 白たへの 衣ひちて……」(万葉集・巻二)「さ寝(ね)そめていくだもあらねば白栲(しろたへ)の帯乞(こ)ふべしや恋も過ぎねば」(同・巻十)のように必ずしも白色とは思えない繊維製品に枕詞として掛かる例がある一方、「まそ鏡照るべき月を白妙の雲か隠せる天つ霧かも」(万葉集・巻七)「わたつ海のかざしにさせる白妙の浪もてゆへる淡路島山」(古今集・雑上・読人不知)のように「雲」や「浪」に枕詞として掛かるのはその「雲」や「浪」が白かったからであろう。(後略)
歌枕 歌ことば辞典』片桐洋一、笠間書院、1999年

 

てふ

てふ チョウ
〘連語〙「と言ふ」の約。「うぐひすの笠に縫ふ―梅の花折りてかざさむ老隠るやと」〈古今三六〉
 

あまのかぐやま【天香具山】

「あまのかご山」の形でもよまれた。大和国の歌枕。今の奈良県橿原市。大和三山(※天の香具山・畝傍山・耳成山 引用者補)の一つとして神聖視されていた。『万葉集』に多く見えるが、特に持統天皇の「春すぎて夏来たるらし白妙の衣ほしたり天の香具山」(巻一。新古今集・百人一首では「夏来にけらし」「衣ほすてふ」)の歌が有名で、平安時代後期以降さかんに利用された。「ほのぼのと春こそ空に来にけらし天の香具山霞たなびく」(新古今集・春上・後鳥羽院)をはじめとして、「白妙の」「衣」「ほす」「霞」などの語をよみ込んだ歌が多い。(後略)
『歌枕 歌ことば辞典』片桐洋一、笠間書院、1999年

 

作者とされる持統天皇(じとうてんのう)について

天智天皇の娘。天武天皇の皇后。

大化(たいか)元年(645)~大宝(たいほう)2年(702)。天智天皇(てんじてんのう)の第二皇女。

持統天皇の系図:舒明・皇極・孝徳・斉明・天智・弘文・天武・持統・文武

持統天皇の系図:舒明・皇極・孝徳・斉明・天智・弘文・天武・持統・文武

天智天皇の弟の大海人皇子(おおあまのみこ)の后となりました。

672年の壬申(じんしん)の乱で、大海人皇子が勝利して天武(てんむ)天皇となると、その皇后となりました。そして天武天皇の死後、即位して第41代の天皇となりました。

※壬申の乱…671年に天智天皇が死去した翌年の672年に起きた戦乱。天智の子の大友皇子(おおとものみこ)と、天智の弟の大海人皇子が皇位継承をめぐって争い、結局、大海人皇子が勝利し、天武天皇となりました。

672年:壬申の乱(吉野方の勝利)

672年:壬申の乱(吉野方の勝利)


 

藤原京遷都

持統天皇8年(694)に、飛鳥浄御原宮(あすかきよみはらのみや)から藤原京(ふじわらきょう)へ都がうつされました。

藤原京は、長安や洛陽などの中国の都をモデルにしてつくられ、和銅(わどう)3年(710)に元明(げんめい)天皇が平城京(へいじょうきょう)に遷都するまで、持統・文武(もんむ)・元明の3代にわたって使用されました。
 

百人一首の現代語訳と文法解説はこちらで確認

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あきぜに ぎりす はるぎて
あきたの こころてに はるよの
ぬれば こころ かたの
あさふの ひとを ひといさ
あさぼらけ たびは ひとをし
あさぼらけ すてふ くからに
ひきの やこの ととぎす
あはしま びしさに みかもり
あはとも ぶれど みかはら
みての つゆに ばやな
あふとの みのえの のくの
あまかぜ をはやみ しのの
あまはら さごの らさめの
あららむ のおとは ぐりあひて
あらふく のうらに しきや
ありけの わかれ ともに
ありやま のをよ らはで
しへの をかも むぐら
いまむと ちぎりきし やまはに
いまただ ちぎり やまとは
りける やぶる されば
みわび みれば のとを
やまに ばねの よのなか
にきく ながらむ よのなか
おほやま ながへば すがら
おほなく なげつつ こめて
ひわび なげとて わがほは
とだに のよは わがでは
さぎの なにおはば わするる
かぜよぐ なには わすじの
かぜいたみ なには わたのはら
きみがため はなそふ わたのはら
きみがため はないろは ぬれば
らやま

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都内の私立大学 文学部国文学専攻出身
お菓子メーカー勤務のサラリーマン
趣味は歌舞伎鑑賞(2012年~)
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