61~70番歌

百人一首の意味と文法解説(68)心にもあらで憂き世にながらへば恋しかるべき夜半の月かな┃三条院

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-68

投稿日:2018年3月12日 更新日:

心にもあらでうきよにながらへば恋しかるべき夜半の月かな

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小倉百人一首から、三条院の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。

また、くずし字・変体仮名で書かれた江戸時代の本の画像も載せております。

ふだん我々が使っている字の形になおした(翻刻と言う)ものと、ひらがなのもとになった漢字(字母)も紹介しておりますので、ぜひ見比べてみてください。

原文

ogura-hyakunin-isshu-68

百人一首(68)心にもあらで憂き世にながらへば恋しかるべき夜半の月かな

画像転載元
国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541162

翻刻(ほんこく)(普段使っている字の形になおす)

hyakuni-isshu-honkoku-68

百人一首(68)心にもあらで憂き世にながらへば恋しかるべき夜半の月かな

釈文(しゃくもん)(わかりやすい表記)

三条院
心にも あらでうき世に 長らへば 恋しかるべき 夜半の月かな
 

字母(じぼ)(ひらがなのもとになった漢字)

hyakunin-isshu-jibo-68

百人一首(68)心にもあらで憂き世にながらへば恋しかるべき夜半の月かな

現代語訳(歌意)・文法解説

※三条天皇(さんじょうてんのう)はご病気で、「天皇の位を去ろう」とお思いになったころ、月が明るいのをご覧になって、よんだ歌。

本心とはちがって、このつらい世の中に生きながらえていたならば、今夜のこの月が、きっと恋しく思い出されるだろうなあ。

心にもあらで憂き世にながらへば恋しかるべき夜半の月かな

心にもあらで憂き世にながらへば恋しかるべき夜半の月かな

※断定の助動詞「なり」は、断定の助動詞「なり」の連用形「に」と、ラ変動詞「あり」に分解することができます。「に + あり」の形で「なり」と同じ意味になります。

※「未然形 + ば」の形で、「もし~ならば」の意味になります。「ながらふ」は下二段活用なので、活用は「へ・へ・ふ・ふる・ふれ・へよ」ですね。

順接仮定条件

順接仮定条件

動詞の活用は「古典の動詞の活用表の覚え方」でご確認ください。

※「べし」は終止形接続の助動詞(全部で「べし・らし・まじ・らむ・めり・なり」の6種類)です。終止形接続の助動詞は、ラ変型活用語(形容詞の補助活用(カリ活用)・形容動詞をふくむ)には、連体形に接続します。ラ変型の活用語はこのほかに、「あり・けり・たり・めり・なり・なり・り」などです。助動詞の解説は「古典の助動詞の活用表の覚え方」にまとめましたので、ご確認ください。

参考:形容詞の活用表

古文の形容詞一覧

古文の形容詞一覧

 

語釈(言葉の意味)

※特記のないかぎり『岩波 古語辞典 補訂版』(大野晋・佐竹昭広・前田金五郎 編集、岩波書店、1990年)による。
 

詞書(ことばがき)

※詞書とは、和歌のよまれた事情を説明する短い文のことで、和歌の前に置かれます。

例(れい)ならずおはしまして、位(くらゐ)など去(さ)らんとおぼしめしける頃(ころ)、月の明(あか)かりけるを御覧(ごらん)じて(※三条天皇はご病気で、「天皇の位を去ろう」とお思いになったころ、月が明るいのをご覧になって、よんだ歌。)

※注
○例ならずおはしまして
ご病気で。三条院は眼病をわずらっていたことが大鏡(おおかがみ)などでよく知られているが、この歌を詠(えい)じた長和(ちょうわ)四年(1015)十二月頃には風病(ふうびょう)にかかっていたか(小右記※1・長和四年十二月九日条)。

▽栄花物語(えいがものがたり)によれば、「師走(しわす)の十余日(とおかあまり/じゅうよにち)」の明るい月を見て、「上の御局」(藤壺)で「宮の御前」(中宮妍子)に対して詠んだ歌。

※1小右記(しょうゆうき)…藤原実資(ふじわらのさねすけ)の日記。

※詞書本文と注の引用は『新日本古典文学大系 後拾遺和歌集』(久保田淳・平田喜信、1994年、岩波書店、275ページ)により、適宜よみがなを付けました。
 

(※〜ないで。未然形につく。)
 

うきよ

●うきよ【憂き世・浮世】
《平安時代には「憂き世」で、生きることの苦しい此の世、つらい男女の仲、また、定めない現世。のちには単に此の世の中、人間社会をいう。「憂き」が同音の「浮き」と意識されるようになって、室町時代末頃から、うきうきと浮かれ遊ぶ此の世の意にも使うようになった》
①無常の現世。はかない此の世。つらい世の中。「散ればこそいとど桜はめでたけれ―に何か久しかるべき」〈伊勢八二〉。「生死無常の習ひ、―の坂とは知りながら」〈神道集一〇〉

●うきよ【憂世】

つらい人生。つらい恋愛などの意で多く用いられた。「をしからで悲しきものは身なりけりうき世そむかむ方を知らねば」(後撰集・雑二・貫之)「死出の山たどるたどるも越えななでうき世の中になに帰りけむ」(同・読人不知)のように逃れたいほどのつらい人生であったり、「うき世とは思ふものから天(あま)の戸(と)のあくるはつらきものにぞありける」(後撰集・恋六・読人不知)のように二人だけの厳しい人生であったりするのである。
歌枕 歌ことば辞典』片桐洋一、笠間書院、1999年

 

夜半

●よは ヨワ【夜は】
《平安・鎌倉時代、多くは和歌に使う雅語》
夜。夜ふけ。「風吹けば沖つ白波たつた山―にや君がひとり越ゆらむ」〈古今九九四〉。「いとどしき水の音に目もさめて、―の嵐に山鳥の心地して明かしかね給ふ」〈源氏総角〉。「夜中(よなか)をば―と云ふ」〈能因歌枕〉
 

百人一首の現代語訳と文法解説はこちらで確認

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あきぜに ぎりす はるぎて
あきたの こころてに はるよの
ぬれば こころ かたの
あさふの ひとを ひといさ
あさぼらけ たびは ひとをし
あさぼらけ すてふ くからに
ひきの やこの ととぎす
あはしま びしさに みかもり
あはとも ぶれど みかはら
みての つゆに ばやな
あふとの みのえの のくの
あまかぜ をはやみ しのの
あまはら さごの らさめの
あららむ のおとは ぐりあひて
あらふく のうらに しきや
ありけの わかれ ともに
ありやま のをよ らはで
しへの をかも むぐら
いまむと ちぎりきし やまはに
いまただ ちぎり やまとは
りける やぶる されば
みわび みれば のとを
やまに ばねの よのなか
にきく ながらむ よのなか
おほやま ながへば すがら
おほなく なげつつ こめて
ひわび なげとて わがほは
とだに のよは わがでは
さぎの なにおはば わするる
かぜよぐ なには わすじの
かぜいたみ なには わたのはら
きみがため はなそふ わたのはら
きみがため はないろは ぬれば
らやま

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都内の私立大学 文学部国文学専攻出身
お菓子メーカー勤務のサラリーマン
趣味は歌舞伎鑑賞(2012年~)
歌舞伎の観客のすそ野を広げるには古典教育から見直す必要があると考えているので、このブログで古文にまつわる情報を発信しております。


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