41~50番歌

百人一首の意味と文法解説(48)風をいたみ岩うつ波のおのれのみ砕けてものを思ふころかな┃源重之

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-48

投稿日:2018年3月12日 更新日:

風をいたみ岩うつ波のおのれのみ砕けてものを思ふころかな

小倉百人一首から、源重之の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。

また、くずし字・変体仮名で書かれた江戸時代の本の画像も載せております。

ふだん我々が使っている字の形になおした(翻刻と言う)ものと、ひらがなのもとになった漢字(字母)も紹介しておりますので、ぜひ見比べてみてください。

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原文

ogura-hyakunin-isshu-48

百人一首(48)風をいたみ岩うつ波のおのれのみ砕けてものを思ふころかな

画像転載元
国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541162

翻刻(ほんこく)(普段使っている字の形になおす)

hyakuni-isshu-honkoku-48

百人一首(48)風をいたみ岩うつ波のおのれのみ砕けてものを思ふころかな

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釈文(しゃくもん)(わかりやすい表記)

源重之
風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ 砕けて物を 思ふ頃かな
 

字母(じぼ)(ひらがなのもとになった漢字)

hyakunin-isshu-jibo-48

百人一首(48)風をいたみ岩うつ波のおのれのみ砕けてものを思ふころかな

現代語訳(歌意)・文法解説

※まだ皇太子だったころの冷泉天皇(れいぜいてんのう)に、百首歌を差しあげた時に、よんだ歌。

風が強いので、岩は全く動じずに、岩にぶつかる波だけがくだけちるように、あなたは全く心を動かさずに自分だけが、心もくだけるばかりに胸のうちで思いにふけるこのごろであるよ。

風をいたみ岩うつ波のおのれのみ砕けてものを思ふころかな

風をいたみ岩うつ波のおのれのみ砕けてものを思ふころかな

※「名詞 + を + 形容詞の語幹 + み」の形で、「○○が~なので」の意味を表します。(例:「瀬をはやみ」「苫をあらみ」など)

序詞(じょことば)。音や意味から特定の言葉を導きだす言葉のことで、5音(5文字)以上のものを言います。同じようなはたらきをするものに枕詞(まくらことば)がありますが、枕詞は5音(5文字)におさまります。

▽初・二句は序。岩をつれなき女に、波を我身になぞらえる(九代集抄)。(『新日本古典文学大系 金葉和歌集 詞花和歌集』川村晃生・柏木由夫・工藤重矩、1989年、岩波書店、283ページ)
 

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語釈(言葉の意味)

※特記のないかぎり『岩波 古語辞典 補訂版』(大野晋・佐竹昭広・前田金五郎 編集、岩波書店、1990年)による。
 

詞書(ことばがき)

※詞書とは、和歌がよまれた事情を説明する短い文のことで、和歌の前に置かれます。

冷泉院(れいぜいいん)春宮(とうぐう)と申(もうし)ける時、百首歌たてまつりけるによめる(※まだ皇太子だったころの冷泉天皇に、百首歌を差しあげた時に、よんだ歌。)

※詞書の引用は『新日本古典文学大系 金葉和歌集 詞花和歌集』(283ページ)によります。
 

いたし

●いた・し【甚し】
〘形ク〙
①甚だしい。ひどい。「水穂の国は―・くさやぎてありなり」〈記神代〉
 

従来、接尾語として説かれている「瀬を早み」「風をいたみ」などの「み」は、その機能からみて、接続助詞と考えたい。形容詞(まれに、形容詞型活用の助動詞)の語幹につく。多く上に助詞「を」を伴い、「…のゆえに」「…なので」の意で、原因・理由をあらわす。
「いた泣かば人知りぬべ、幡舎(はさ)の山の鳩の下泣きに泣く」〈紀歌謡七一〉「采女の袖吹きかへす明日香風都を遠いたづらに吹く」〈万五一〉「山高川雄大(とほしろ)し、野を広草こそ繁き」〈万四〇一一〉「瀬を早岩にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ」〈詞花二二八〉
 

波の

(※波のように)
 

のみ

(※だけ)
 

もの

●もの【物・者】
一〘名〙
➊物体・物品などを一般的にとらえて指す。「いとのきて短き―の端(はし)切ると言へるが如く」〈万八九二〉。「みどり児の乞ひ泣くごとに取り与ふる―し無ければ」〈万二一〇〉。「内蔵寮(くらづかさ)納殿(をさめどの)の―(品物)をつくして、いみじうせさせ給ふ」〈源氏桐壺〉。「さるは、たよりごとに―(贈物)も絶えず得させたり」〈土佐二月十六日〉。「散るまでも我が―にして花は見てまし」〈後撰一〇一〉
➌《対象の性質や状態が、はっきりとは言えないが、ともかく意識の対象となる存在》
①いろいろの状態・事態。「ねもころに―や悲しききりぎりす草のやどりにこゑたえず鳴く」〈後撰二五八〉。「右近は―も覚えず、君につと添ひ奉りて、わななき死ぬべし」〈源氏夕顔〉

●ものおも・ひ ‥オモイ 【物思ひ】
一〘四段〙
胸のうちで思いにふける。物ごとを、悩み煩う。「春山の霧に惑(まと)へる鶯も我にまさりて―・はめや」〈万一八九二〉
二〘名〙
思い悩むこと。心配すること。「光なき谷には春もよそなれば咲きてとく散る―もなし」〈古今九六七〉。「―絶ゆまじき身かなと思ふ」〈和泉式部日記〉
 

百人一首の現代語訳と文法解説はこちらで確認

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あきぜにぎりすはるぎて
あきたのこころてにはるよの
ぬればこころかたの
あさふのひとをひといさ
あさぼらけたびはひとをし
あさぼらけすてふくからに
ひきのやこのととぎす
あはしまびしさにみかもり
あはともぶれどみかはら
みてのつゆにばやな
あふとのみのえののくの
あまかぜをはやみしのの
あまはらさごのらさめの
あららむのおとはぐりあひて
あらふくのうらにしきや
ありけのわかれともに
ありやまのをよらはで
しへのをかもむぐら
いまむとちぎりきしやまはに
いまただちぎりやまとは
りけるやぶるされば
みわびみればのとを
やまにばねのよのなか
にきくながらむよのなか
おほやまながへばすがら
おほなくなげつつこめて
ひわびなげとてわがほは
とだにのよはわがでは
さぎのなにおはばわするる
かぜよぐなにはわすじの
かぜいたみなにはわたのはら
きみがためはなそふわたのはら
きみがためはないろはぬれば
らやま

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