11~20番歌

百人一首の意味と文法解説(13)つくばねの峰よりおつるみなの川恋ぞつもりて淵となりぬる┃陽成院

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-13

投稿日:2018年3月11日 更新日:

筑波嶺のみねより落つるみなの川恋ぞつもりて淵となりぬる

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小倉百人一首から、陽成院の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。

また、くずし字・変体仮名で書かれた江戸時代の本の画像も載せております。

ふだん我々が使っている字の形になおした(翻刻と言う)ものと、ひらがなのもとになった漢字(字母)も紹介しておりますので、ぜひ見比べてみてください。

原文

ogura-hyakunin-isshu-13

百人一首(13)つくばねの峰よりおつるみなの川恋ぞつもりて淵となりぬる


画像転載元
国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541162

翻刻(ほんこく)(普段使っている字の形になおす)

hyakuni-isshu-honkoku-13

百人一首(13)つくばねの峰よりおつるみなの川恋ぞつもりて淵となりぬる

釈文(しゃくもん)(わかりやすい表記)

陽成院
筑波嶺の 峰より落つる みなの川 恋ぞ積もりて 淵となりぬる
 

字母(じぼ)(ひらがなのもとになった漢字)

hyakunin-isshu-jibo-13

百人一首(13)つくばねの峰よりおつるみなの川恋ぞつもりて淵となりぬる

現代語訳(歌意)・文法解説

※使者に持たせて釣殿内親王(つりどののみこ)に送った歌。

筑波山の峰から流れ落ちるみなの川の深いところのように、私の恋も積もりに積もって淵のように深くなったのだ。

筑波嶺の峰より落つる男女川恋ぞ積もりて淵となりぬる

筑波嶺の峰より落つる男女川恋ぞ積もりて淵となりぬる

※三句切れ。

※係り結びや係助詞の解説は「古典の助詞の覚え方」をご確認ください。
 

語釈(言葉の意味)

※特記のないかぎり『岩波 古語辞典 補訂版』(大野晋・佐竹昭広・前田金五郎 編集、岩波書店、1990年)による。
 

詞書(ことばがき)

※詞書とは、和歌がよまれた事情を説明する短い文のことで、和歌の前に置かれます。

釣殿(つりどの)の皇女(みこ)につかはしける(※使者に持たせて釣殿内親王に送った歌。)

※詞書の引用は『新日本古典文学大系 後撰和歌集』(片桐洋一、岩波書店、1990年、227ページ)によります。
 

筑波嶺【つくばね】

●つくば【筑波】《奈良時代、ツクハと清音》
常陸国筑波郡地方、筑波山南西の地。「新治(にひばり)―を過ぎて幾夜か寝つる」〈記歌謡二五〉

●―やま【筑波山】
①常陸国筑波郡の東北端にある名山。「―隠れぬほどに」〈万三三八九東歌〉
 
●つくばね【筑波嶺】つくばやま【筑波山】

『万葉集』の時代には「つくはね」「つくはやま」というように清音であったらしい。常陸国の歌枕。今のつくば市、真壁(まかべ)町、八郷(やさと)町にまたがる山。山頂が男体山と女体山の二峰に分かれているので「筑波嶺(つくばね)の峰より落つる男女川(みなのがは)恋(こひ)ぞつもりて淵となりぬる」(後撰集・恋三・陽成院、百人一首)というような表現が生まれたのである。関東平野のいずれからでも望見できるので、古代人の憧れの山となり、古来多くの歌によまれた。(後略)
歌枕 歌ことば辞典』片桐洋一、笠間書院、1999年

(※筑波山の様子は茨城県公式観光情報サイト 観光いばらきで見られます。)

補足:筑波山

※筑波山は茨城県のほぼ中央に位置します。

筑波山・茨城県

筑波山・茨城県

 

みなの川

筑波山から発する河。筑波山の山頂が男体山と女体山に分かれているので、男女の河とも書く。(『新日本古典文学大系 後撰和歌集』227ページ))

 

ふち【淵】

①湖・池・川などで、水が淀んで深くなっているところ。「わが行きは久にはあらじ夢のわだ瀬にはならずて―にあらぬかも」〈万三三五〉
 

作者:陽成院(ようぜいいん) 陽成天皇(ようぜいてんのう)について

貞観(じょうがん)10年(868)~天暦(てんりゃく)3年(949)。父は清和天皇(せいわてんのう)、母は二条后高子(にじょうのきさきたかいこ)。

元良親王(もとよししんのう)は陽成天皇の子供です。

陽成天皇の系図:陽成―元良親王

陽成天皇の系図:陽成―元良親王

貞観18年(876)に9歳で天皇に即位し、元慶(がんぎょう)8年(884)に17歳で退位し、上皇(じょうこう)となりました。「院」は、上皇や法皇などを指す言葉です。

陽成天皇が退位したあと、光孝天皇(こうこうてんのう)が次の天皇になります。天皇の系統は光孝・宇多・醍醐とつづいていき、清和・陽成の系統にもどることはありませんでした。
 

百人一首の現代語訳と文法解説はこちらで確認

こちらは小倉百人一首の現代語訳一覧です。それぞれの歌の解説ページに移動することもできます。

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あきぜに ぎりす はるぎて
あきたの こころてに はるよの
ぬれば こころ かたの
あさふの ひとを ひといさ
あさぼらけ たびは ひとをし
あさぼらけ すてふ くからに
ひきの やこの ととぎす
あはしま びしさに みかもり
あはとも ぶれど みかはら
みての つゆに ばやな
あふとの みのえの のくの
あまかぜ をはやみ しのの
あまはら さごの らさめの
あららむ のおとは ぐりあひて
あらふく のうらに しきや
ありけの わかれ ともに
ありやま のをよ らはで
しへの をかも むぐら
いまむと ちぎりきし やまはに
いまただ ちぎり やまとは
りける やぶる されば
みわび みれば のとを
やまに ばねの よのなか
にきく ながらむ よのなか
おほやま ながへば すがら
おほなく なげつつ こめて
ひわび なげとて わがほは
とだに のよは わがでは
さぎの なにおはば わするる
かぜよぐ なには わすじの
かぜいたみ なには わたのはら
きみがため はなそふ わたのはら
きみがため はないろは ぬれば
らやま

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都内の私立大学 文学部国文学専攻出身
お菓子メーカー勤務のサラリーマン
趣味は歌舞伎鑑賞(2012年~)
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