91~100番歌

百人一首の意味と文法解説(94)み吉野の山の秋風小夜ふけてふるさと寒く衣うつなり┃参議雅経

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-94

投稿日:2018年3月12日 更新日:

みよしのの山の秋風さよふけてふるさと寒くころも打つなり

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小倉百人一首から、参議雅経の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。

また、くずし字・変体仮名で書かれた江戸時代の本の画像も載せております。

ふだん我々が使っている字の形になおした(翻刻と言う)ものと、ひらがなのもとになった漢字(字母)も紹介しておりますので、ぜひ見比べてみてください。

原文

ogura-hyakunin-isshu-94

百人一首(94)み吉野の山の秋風小夜ふけてふるさと寒く衣うつなり


画像転載元
国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541162

翻刻(ほんこく)(普段使っている字の形になおす)

hyakuni-isshu-honkoku-94

百人一首(94)み吉野の山の秋風小夜ふけてふるさと寒く衣うつなり

釈文(しゃくもん)(わかりやすい表記)

参議雅経
み吉野の 山の秋風 小夜ふけて ふるさと寒く 衣うつなり
 

字母(じぼ)(ひらがなのもとになった漢字)

hyakunin-isshu-jibo-94

百人一首(94)み吉野の山の秋風小夜ふけてふるさと寒く衣うつなり

現代語訳(歌意)

※きぬたを打つという趣向を、よんだ歌。

吉野山の秋風が夜ふけに吹き、古都、吉野には寒々ときぬたを打つ音が聞こえる。

み吉野の山の秋風小夜ふけてふるさと寒く衣うつなり

み吉野の山の秋風小夜ふけてふるさと寒く衣うつなり

※「なり」は伝聞(でんぶん)の助動詞で、耳から入ってくる情報から推量することを表します。直前には、音や声に関係する言葉が見られる場合が多いです。上の歌では「衣うつ」という言葉がそれにあたります。助動詞の解説は「古典の助動詞の活用表の覚え方」にまとめましたのでご確認ください。

本歌は『古今和歌集』冬・坂上是則

みよしのの山の白雪つもるらし古里さむく成りまさるなり(古今集・冬・坂上是則

※訳 … 吉野の山に白雪がつもっているらしい。この古い奈良の都はいっそう寒くなっている。

※古今集の引用は『新日本古典文学大系 古今和歌集』(小島憲之・新井栄蔵、岩波書店、1989年、108ページ)によります。
 

語釈(言葉の意味)・文法解説

※特記のないかぎり『岩波 古語辞典 補訂版』(大野晋・佐竹昭広・前田金五郎 編集、岩波書店、1990年)による。
 

詞書(ことばがき)

※詞書とは、和歌のよまれた事情を説明する短い文のことで、和歌の前に置かれます。

擣衣(とうい)の心を(※きぬたを打つという趣向を、よんだ歌。)

※詞書の引用は『新日本古典文学大系 新古今和歌集』(田中裕・赤瀬信吾、1992年、岩波書店、149ページ)によります。
 

みよしの【み吉野】

《ミは接頭語》
大和国吉野川流域一帯の称。吉野。山の桜・雪・川の滝瀬・里などが歌によまれる。「皆人の恋ふる―今日見ればうべも恋ひけり山川清み」〈万一一三一〉
 

さよ【小夜】

《サは接頭語》
夜。「―ふけて堀江漕ぐなる松浦船(まつらぶね)」〈万一一四三〉
 

ふるさと【古里・故郷】

①古びて荒れた里。昔、都などのあった土地。「―の飛鳥(あすか)はあれどあをによし平城(なら)の明日香(あすか)を見らくし好しも」〈万九九二〉

○ふるさと
本歌では奈良の京、ここは吉野の里ととるのがふさわしい。(『新日本古典文学大系 新古今和歌集』149ページ)
 

寒く

砧の音の聴覚的印象を主にしていう。(『新日本古典文学大系 新古今和歌集』149ページ)
 

ころもうつ

●きぬた【砧】
《キヌイタ(衣板)の約》
槌で布地を打ちやわらげ、艶(つや)を出すのに用いる板や石の台。また、それを打つこと。歌語としては秋のものとされた。「耳かしがましかりし―の音」〈源氏夕顔〉

●きぬた【砧】

「衣板(きぬいた)」の約かという。絹などの布地のつやを出したり、柔らかくしたりするために槌でたたく石または木の台。冬の仕度のために秋に作業することが多かったので、晩秋の歌によくよまれた。「風寒み我がからころも打つ時ぞ萩の下葉も色まさりける」(拾遺集・秋・貫之)のようにその仕事を和歌によむことは古くからあり、「み吉野の山の秋風さよふけてふるさと寒く衣うつなり」(新古今集・秋下・雅経、百人一首)などの名歌もその中に属するが、「きぬた」という語が和歌によまれるようになったのは、平安時代末期、『千載集』や『新古今集』の時代であり、「恋ひつつや妹(いも)が打つらむからころも砧(きぬた)の音の空になるまで」(千載集・秋下・公実)「千度(ちたび)打つ砧(きぬた)の音に夢さめて物思ふ袖の露ぞくだくる」(新古今集・秋下・式子内親王)などのすぐれた歌がよまれている。
『歌枕 歌ことば辞典』片桐洋一、笠間書院、1999年

 

なり

(※伝聞推定の助動詞「なり」終止形)
 

百人一首の現代語訳と文法解説はこちらで確認

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あきぜに ぎりす はるぎて
あきたの こころてに はるよの
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あさふの ひとを ひといさ
あさぼらけ たびは ひとをし
あさぼらけ すてふ くからに
ひきの やこの ととぎす
あはしま びしさに みかもり
あはとも ぶれど みかはら
みての つゆに ばやな
あふとの みのえの のくの
あまかぜ をはやみ しのの
あまはら さごの らさめの
あららむ のおとは ぐりあひて
あらふく のうらに しきや
ありけの わかれ ともに
ありやま のをよ らはで
しへの をかも むぐら
いまむと ちぎりきし やまはに
いまただ ちぎり やまとは
りける やぶる されば
みわび みれば のとを
やまに ばねの よのなか
にきく ながらむ よのなか
おほやま ながへば すがら
おほなく なげつつ こめて
ひわび なげとて わがほは
とだに のよは わがでは
さぎの なにおはば わするる
かぜよぐ なには わすじの
かぜいたみ なには わたのはら
きみがため はなそふ わたのはら
きみがため はないろは ぬれば
らやま

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都内の私立大学 文学部国文学専攻出身
お菓子メーカー勤務のサラリーマン
趣味は歌舞伎鑑賞(2012年~)
歌舞伎の観客のすそ野を広げるには古典教育から見直す必要があると考えているので、このブログで古文にまつわる情報を発信しております。


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