11~20番歌

百人一首の意味と文法解説(20)わびぬれば今はた同じ難波なるみをつくしても逢はむとぞ思ふ┃元良親王

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-20

投稿日:2018年3月11日 更新日:

わびぬれば今はた同じ難波なるみをつくしても逢はむとぞ思ふ

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小倉百人一首から、元良親王の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。

また、くずし字・変体仮名で書かれた江戸時代の本の画像も載せております。

ふだん我々が使っている字の形になおした(翻刻と言う)ものと、ひらがなのもとになった漢字(字母)も紹介しておりますので、ぜひ見比べてみてください。

原文

ogura-hyakunin-isshu-20

百人一首(20)わびぬれば今はた同じ難波なるみをつくしても逢はむとぞ思ふ


画像転載元
国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541162

翻刻(ほんこく)(普段使っている字の形になおす)

hyakuni-isshu-honkoku-20

百人一首(20)わびぬれば今はた同じ難波なるみをつくしても逢はむとぞ思ふ

釈文(しゃくもん)(わかりやすい表記)

元良親王
わびぬれば 今はた同じ 難波なる みをつくしても 逢はむとぞ思ふ
 

字母(じぼ)(ひらがなのもとになった漢字)

hyakunin-isshu-jibo-20

百人一首(20)わびぬれば今はた同じ難波なるみをつくしても逢はむとぞ思ふ

現代語訳(歌意)・文法解説

※元良親王(もとよししんのう)と京極御息所(きょうごくのみやすんどころ)の関係が世間に知られてから後に、元良親王が使者に持たせて京極御息所へ送った歌。

すでに恋に苦しんでいるので、あなたとの関係が世間に知られてしまっても、今となっては苦しみも同じことだ。難波(なにわ)にある澪標(みおつくし)ではないけれど、この身をほろぼしてもお逢いしたいと思うのです。

わびぬれば今はた同じ難波なるみをつくしても逢はむとぞ思ふ

わびぬれば今はた同じ難波なるみをつくしても逢はむとぞ思ふ

※二句切れ。終止形が和歌の切れ目となることが多いです。

※「已然形 + ば」の形で、「~なので」「~すると」などの意味をあらわします。それぞれの意味は文脈によって判断します。

順接確定条件

順接確定条件

掛詞(かけことば)。音が同じことを利用して二つの意味をあらわすことです。「みをつくし」が「身を尽くし」と「澪標」を掛けます。

※「ぞ」は強意の係助詞で、連体形で結びます。係り結びの解説は「古典の助詞の覚え方」でご確認ください。
 

語釈(言葉の意味)

※特記のないかぎり『岩波 古語辞典 補訂版』(大野晋・佐竹昭広・前田金五郎 編集、岩波書店、1990年)による。
 

詞書(ことばがき)

※詞書とは、和歌がよまれた事情を説明する短い文のことで、和歌の前に置かれます。

事(こと)出(い)で来てのちに京極御息所(きょうごくのみやすんどころ)につかはしける(※元良親王と京極御息所の関係が世間に知られてから後に、元良親王が使者に持たせて京極御息所へ送った歌。)

※京極御息所…藤原時平(ふじわらのときひら)の女(むすめ)、褒子(ほうし)。宇多法皇(867~931年)(※光孝天皇の皇子)の寵愛(ちょうあい)を受けて3人の子供をもうけましたが、元良親王と密通(みっつう)していました。この和歌は、元良親王との密通が世間に知られてしまった時に、元良親王が褒子に書き送った歌です。

※詞書の引用は『新日本古典文学大系 後撰和歌集』(片桐洋一、岩波書店、1990年、282ページ)によります。
 

わびぬれば

(※「わぶ」 嘆く。困る。)

既に恋に苦しんでいるので。(※『新日本古典文学大系 後撰和歌集』282ページ)
 

はた【将】

〘副〙
《甲乙二つ並んだ状態や見解などが考えられる場合に、甲に対して、もしや乙はと考えるとき、あるいは、やはり乙だと判断するときなどに使う》
①もしや一方で。あるいはひょっとして。「将(はた)、敗らるること無からむや」〈紀崇峻即位前〉。「痩す痩すも生けらばあらむを―や―鰻(むなぎ)を取ると川に流るな」〈万三八五四〉
④(別のことを考えてみても)どう思ってもやはり。「み吉野の山のあらしの寒けくに―や今宵も我が独り寝む」〈万七四〉。「ほととぎす初声きけばあぢきなくぬし定まらぬ恋せらる―」〈古今一四三〉。「〔コノ男ハ〕人もあてなり。これよりまさりて事事しききは(身分)の人、―、かかる〔受領風情ノ〕あたりを…尋ね寄らじ」〈源氏東屋〉
 

みをつくし【澪標 / 身を尽くし】

●みをつくし【澪標】
《「水脈(みを)つ串」の意》
水先案内のために、水脈の標識としてさす杭。難波のものが名高い。歌で「身を尽し」に掛けて使われることが多い。「遠江(とほつあふみ)引佐(いなさ)細江の―吾(あれ)を頼めてあさましものを」〈万三四二九〉

●みをつくし【澪標(みおつくし)】

平安時代、難波(なにわ)は淀川の河口がいたずらに広がって浅瀬が多く、船の航行に難渋したので、水脈や水深を示すために串(くし)を立てた。「水脈(みを)つ串」の「つ」は、「の」の意味だから「水脈」を示す「串」のことである。和歌によまれる場合は「身を尽(つ)くし」の意を掛けることが多く、また「難波(なには)」と呼応することも多かった。「君恋ふる涙の床にみちぬればみをつくしとぞ我はなりぬる」(古今集・恋二・興風)「わびぬれば今はた同じ難波なる身をつくしてもあはむとぞ思ふ」(後撰集・恋五・元良親王、百人一首)などがその例である。
歌枕 歌ことば辞典』片桐洋一、笠間書院、1999年

●つく・し【尽し】
〘四段〙《ツキ(尽)の他動詞形》
①ありたけの力を使い果たす。「情(こころ)―・すな大夫(ますらを)にして」〈万四二一六〉
 

百人一首の現代語訳と文法解説はこちらで確認

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あさぼらけ たびは ひとをし
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あはしま びしさに みかもり
あはとも ぶれど みかはら
みての つゆに ばやな
あふとの みのえの のくの
あまかぜ をはやみ しのの
あまはら さごの らさめの
あららむ のおとは ぐりあひて
あらふく のうらに しきや
ありけの わかれ ともに
ありやま のをよ らはで
しへの をかも むぐら
いまむと ちぎりきし やまはに
いまただ ちぎり やまとは
りける やぶる されば
みわび みれば のとを
やまに ばねの よのなか
にきく ながらむ よのなか
おほやま ながへば すがら
おほなく なげつつ こめて
ひわび なげとて わがほは
とだに のよは わがでは
さぎの なにおはば わするる
かぜよぐ なには わすじの
かぜいたみ なには わたのはら
きみがため はなそふ わたのはら
きみがため はないろは ぬれば
らやま

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都内の私立大学 文学部国文学専攻出身
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趣味は歌舞伎鑑賞(2012年~)
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