71~80番歌

百人一首の意味と文法解説(77)瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ┃崇徳院

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-77

投稿日:2018年3月12日 更新日:

瀬を早み岩にせかるる滝川のわれてもすゑに逢はむとぞ思ふ

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小倉百人一首から、崇徳院の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。

また、くずし字・変体仮名で書かれた江戸時代の本の画像も載せております。

ふだん我々が使っている字の形になおした(翻刻と言う)ものと、ひらがなのもとになった漢字(字母)も紹介しておりますので、ぜひ見比べてみてください。

目次

原文

ogura-hyakunin-isshu-77

百人一首(77)瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ

画像転載元
国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541162

翻刻(ほんこく)(普段使っている字の形になおす)

hyakuni-isshu-honkoku-77

百人一首(77)瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ

釈文(しゃくもん)(わかりやすい表記)

崇徳院
瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ
 

字母(じぼ)(ひらがなのもとになった漢字)

hyakunin-isshu-jibo-77

百人一首(77)瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ

現代語訳(歌意)・文法解説

※この和歌の題やよまれた事情はあきらかでない。

川の浅い所は流れが速いので、岩にせき止められる急流が二つに分かれても最後には一つになるように、あの人といつかは一緒になろうと思うのだ。

百人一首:瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ

百人一首:瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ

※「名詞 + を + 形容詞の語幹 + み」で「○○が~なので」の意味を表します(例:「苫をあらみ」・「風をいたみ」など)。

※参考:形容詞の活用

古文の形容詞一覧

古文の形容詞一覧

※「滝川の」の「の」は、連用修飾(~のように)を意味する格助詞です。格助詞「の」には、①主格、②連体修飾、③同格、④体言の代用、⑤連用修飾の5つの用法があります。そのほかの用法は「古文の助詞の覚え方」にまとめましたのでご確認ください。

※係助詞「ぞ」は連体形で結びます。係り結びは「ぞ・なむ・や・か=連体、こそ=已然形」とまとめて覚えます。

係助詞:ぞ・なむ・や・か・こそ

係助詞:ぞ・なむ・や・か・こそ

 

語釈(言葉の意味)

※特記のないかぎり『岩波 古語辞典 補訂版』(大野晋・佐竹昭広・前田金五郎 編集、岩波書店、1990年)による。
 

詞書(ことばがき)

※詞書とは、和歌のよまれた事情を説明する短い文のことで、和歌の前に置かれます。

題不知(だいしらず)(※和歌の題やよまれた事情が明らかでないこと。)

※詞書の引用は『新日本古典文学大系 千載和歌集』(片野達郎・松野陽一、1993年、岩波書店、288ページ)によります。
 

せ【瀬】

①川の浅い所。多く、川を渡るのにここを通る。「しましくも行きて見てしか神名火の淵は浅(あせ)にて―にかなるらむ」〈万九六九〉
 

従来、接尾語として説かれている「瀬を早み」「風をいたみ」などの「み」は、その機能からみて、接続助詞と考えたい。形容詞(まれに、形容詞型活用の助動詞)の語幹につく。多く上に助詞「を」を伴い、「…のゆえに」「…なので」の意で、原因・理由をあらわす。
「いた泣かば人知りぬべ、幡舎(はさ)の山の鳩の下泣きに泣く」〈紀歌謡七一〉「采女の袖吹きかへす明日香風都を遠いたづらに吹く」〈万五一〉「山高川雄大(とほしろ)し、野を広草こそ繁き」〈万四〇一一〉「瀬を早岩にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ」〈詞花二二八〉
 

せく

●せ・き【塞き】
一〘四段〙
①狭くして流れをとめる。「明日香川しがらみ渡し―・かませば流るる水ものどにかあらまし」〈万一九七〉。「―・きがたき涙の雨のみ降りまされば」〈源氏幻〉
 

たき【滝】

①水がわき立ち、激しく流れる所。激流。「石(いは)走る―もとどろに鳴く蟬の声をし聞けば都し思ほゆ」〈万三六一七〉
 

われても

波が砕け割れるの意に、心を砕くの意を掛ける。「をとこ、われて逢はむといふ」(伊勢物語六十九段)。「宵の間に出でて入りぬる三日月のわれて物思ふ頃にもあるかな」(古今・諧謔(かいぎゃく)・読人(よみひと)しらず)。(『新日本古典文学大系 千載和歌集』288ページ)
 

われ

●わ・れ【割れ・破れ】
一〘下ニ〙
①まっ二つに分れる。「法を聞きつるのちは卵(かひ)の破(わ)れて出でぬるが如し」〈東大寺諷誦文稿〉
 

すゑ【末】

①先。端。「佩かせる太刀本(もと)つるき(吊リ佩キ)―振ゆ」〈記歌謡四七〉。「秋風の―吹きなびく萩の花」〈万四五一五〉
⑥《時間に転用して》現在から遠い行く末。のちのち。また、最後。「―果しても闘(あ)はむとぞ思ふ」〈紀歌謡八九〉。「契りふかくて語らふ人の―まで仲よきはかたし」〈枕七五〉
 

逢ふ

●あ・ひ アイ 【合ひ・会ひ・逢ひ】
一〘四段〙
❶二つのものが互いに寄って行き、ぴったりとぶつかる。①対面する。「昔の人にまたも―・はめやも」〈万三一〉
❷二つのものが近寄って、しっくりと一つになる。⑤契りを結ぶ。結婚する。「男は女に―・ふことをす」〈竹取〉
 

百人一首の現代語訳と文法解説はこちらで確認

こちらは小倉百人一首の現代語訳一覧です。それぞれの歌の解説ページに移動することもできます。

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あきたのこころてにはるよの
ぬればこころかたの
あさふのひとをひといさ
あさぼらけたびはひとをし
あさぼらけすてふくからに
ひきのやこのととぎす
あはしまびしさにみかもり
あはともぶれどみかはら
みてのつゆにばやな
あふとのみのえののくの
あまかぜをはやみしのの
あまはらさごのらさめの
あららむのおとはぐりあひて
あらふくのうらにしきや
ありけのわかれともに
ありやまのをよらはで
しへのをかもむぐら
いまむとちぎりきしやまはに
いまただちぎりやまとは
りけるやぶるされば
みわびみればのとを
やまにばねのよのなか
にきくながらむよのなか
おほやまながへばすがら
おほなくなげつつこめて
ひわびなげとてわがほは
とだにのよはわがでは
さぎのなにおはばわするる
かぜよぐなにはわすじの
かぜいたみなにはわたのはら
きみがためはなそふわたのはら
きみがためはないろはぬれば
らやま

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