81~90番歌

百人一首の意味と文法解説(85)夜もすがらもの思ふ頃は明けやらでねやのひまさへつれなかりけり┃俊恵法師

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-85

投稿日:2018年3月12日 更新日:

夜もすがら物思ふ頃は明けやらで閨のひまさへつれなかりけり

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小倉百人一首から、俊恵法師の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。

また、くずし字・変体仮名で書かれた江戸時代の本の画像も載せております。

ふだん我々が使っている字の形になおした(翻刻と言う)ものと、ひらがなのもとになった漢字(字母)も紹介しておりますので、ぜひ見比べてみてください。

原文

ogura-hyakunin-isshu-85

百人一首(85)夜もすがらもの思ふ頃は明けやらでねやのひまさへつれなかりけり


画像転載元
国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541162

翻刻(ほんこく)(普段使っている字の形になおす)

hyakuni-isshu-honkoku-85

百人一首(85)夜もすがらもの思ふ頃は明けやらでねやのひまさへつれなかりけり

釈文(しゃくもん)(わかりやすい表記)

俊恵法師
夜もすがら 物思ふ頃は 明けやらで 閨の暇さへ つれなかりけり
 

字母(じぼ)(ひらがなのもとになった漢字)

hyakunin-isshu-jibo-85

百人一首(85)夜もすがらもの思ふ頃は明けやらでねやのひまさへつれなかりけり

現代語訳(歌意)・文法解説

一晩中、胸のうちでつれない人を思いつづけるころは、「早く朝になってほしい」と思うけれど明けきらずに、恋人だけでなく、なかなか白んでこない寝室の戸のすきままでもが、無情に思われることだ。

夜もすがらもの思ふ頃は明けやらでねやのひまさへつれなかりけり

夜もすがらもの思ふ頃は明けやらでねやのひまさへつれなかりけり

※副助詞「さへ」は添加(てんか)(AだけでなくBまでも)の意味を表します。ここでは、「恋人だけでなく、なかなか白んでこない(朝を告げない)戸のすきままでも」という意味です。助詞の解説は「古文の助詞の覚え方」にまとめましたのでご確認ください。

※過去の助動詞「けり」が和歌の中で使われる場合は基本的に、詠嘆(えいたん)(~だなあ・~ことだ)の意味を表します。

※参考:形容詞の活用表

古文の形容詞一覧

古文の形容詞一覧


 

語釈(言葉の意味)

※特記のないかぎり『岩波 古語辞典 補訂版』(大野晋・佐竹昭広・前田金五郎 編集、岩波書店、1990年)による。
 

夜もすがら

(※一晩中)
 

もの思ふころは

「ころは」とあるので、幾夜も物思いをしている意。(『新日本古典文学大系 千載和歌集』片野達郎・松野陽一、1993年、岩波書店、232ページ)
 

物思ふ

●ものおも・ひ ‥オモイ 【物思ひ】
一〘四段〙
胸のうちで思いにふける。物ごとを、悩み煩う。「春山の霧に惑(まと)へる鶯も我にまさりて―・はめや」〈万一八九二〉
 

やらで

●や・り【遣り】
〘四段〙《先行きがどうなるか構わずに人をつかわしたり、物事を進めたりする意》
①思い切って行かせる。命じて行かせる。「わが背子を大和へ―・るとさ夜更けて暁露にわが立ち濡れし」〈万一〇五〉。「人言を繁みと君に玉梓の使も―・らず忘ると思ふな」〈万二五八六〉。「かかるべしとだに知りたらば、今井を勢田へは―・らざらましを」〈平家九・河原合戦〉
⑨《動詞の連用形について》㋺《「―・らず」の形で》思い切ってその動作をしおおす。…しきる。「えも乗り―・らず」〈源氏桐壺〉。「うしろのみ顧みてさきへは進みも―・らざりけり」〈平家七・福原落〉

●で
(※~しないで)
 

閨のひまさへ

恋人がつれないだけでなく閨の隙間までも。(『新日本古典文学大系 千載和歌集』232ページ)
 

ねや【閨】

(※寝室)
 

ひま【隙・暇】

①物と物との割れ目。孔。すきま。「他の家の嚮(まど)の孔(ひま)の中に看ること」〈願経四分律平安初期点〉。「谷風にとくる氷の―ごとに打ち出づる波や春の初花」〈古今一二〉。「見ゆやと思せど―もなければ、しばし聞き給ふに」〈源氏帚木〉
 

さへ

(※副助詞:~までも)
 

つれな・し

〘形ク〙《「連れ無し」の意。二つの物事の間に何のつながりも無いさま》
①(働きかけに対して)何の反応もない。無情である。「我は物思ふ―・きものを」〈万二二四七〉。「いみじう聞え給へど、いと―・し」〈源氏夕霧〉
 

百人一首の現代語訳と文法解説はこちらで確認

こちらは小倉百人一首の現代語訳一覧です。それぞれの歌の解説ページに移動することもできます。

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あきぜに ぎりす はるぎて
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あさふの ひとを ひといさ
あさぼらけ たびは ひとをし
あさぼらけ すてふ くからに
ひきの やこの ととぎす
あはしま びしさに みかもり
あはとも ぶれど みかはら
みての つゆに ばやな
あふとの みのえの のくの
あまかぜ をはやみ しのの
あまはら さごの らさめの
あららむ のおとは ぐりあひて
あらふく のうらに しきや
ありけの わかれ ともに
ありやま のをよ らはで
しへの をかも むぐら
いまむと ちぎりきし やまはに
いまただ ちぎり やまとは
りける やぶる されば
みわび みれば のとを
やまに ばねの よのなか
にきく ながらむ よのなか
おほやま ながへば すがら
おほなく なげつつ こめて
ひわび なげとて わがほは
とだに のよは わがでは
さぎの なにおはば わするる
かぜよぐ なには わすじの
かぜいたみ なには わたのはら
きみがため はなそふ わたのはら
きみがため はないろは ぬれば
らやま

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都内の私立大学 文学部国文学専攻出身
お菓子メーカー勤務のサラリーマン
趣味は歌舞伎鑑賞(2012年~)
歌舞伎の観客のすそ野を広げるには古典教育から見直す必要があると考えているので、このブログで古文にまつわる情報を発信しております。


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