古典文法 助動詞

古文・古典の助動詞をわかりやすく解説!活用表(一覧)・意味・接続・勉強法・覚え方をまとめて紹介。

古文・古典の助動詞をわかりやすく解説!活用表(一覧)・意味・接続・勉強法・覚え方をまとめて紹介。

投稿日:2018年5月23日 更新日:

古文の助動詞の活用を覚えるポイントと、助動詞の種類の見分け方をわかりやすく紹介します。古典をむずかしいと感じる原因のひとつが助動詞です。活用や接続の種類が多くて大変と感じるかもしれませんが、覚え方にはコツがあります。覚えるべき接続・活用・意味を順序ただしく勉強していけばきっとできるようになるので、古文が苦手だと感じている方はこの解説をぜひ参考にしてください。

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目次

古文(古典)の助動詞の活用表(一覧表)と覚え方

古文の助動詞一覧(※クリックで拡大)

古文(古典)の助動詞の活用表(一覧表)

古文(古典)の助動詞の活用表(一覧表)

※各助動詞の解説に移動する

 
何も見ずに活用表を書けるようになるのが理想的です。

助動詞の活用表覚える順序は次のとおりです。

  1. 接続を覚える
  2. 活用と意味を覚える

 

①助動詞の接続を覚える

まず最初に、接続せつぞくの種類を覚えます。上の活用表で言えば、「基本の形」をヨコに覚えます。

つまり、未然形接続連用形接続終止形接続それ以外、以上の助動詞を順番どおりにすべて覚えます。

覚えるポイントは、音読です。20~30回を目安に繰り返し音読するのがおすすめです。

自分の口を動かし、自分の声を耳で聞く。そして時には自分の手を動かして書いてみる。そのようにして、いろいろな刺激を脳に与えることで、記憶が定着していきます。

忘れてしまってももう一度覚えなおせば大丈夫です。忘れては覚えなおす、という作業をくりかえすうちに、頭に入ってきますから安心してください。

この作業はめんどうに思えるかもしれませんが、結局のところ、これが一番の近道です。

古文の学習には欠かせない作業です。時間がかかっても良いので地道に取り組んでいきましょう。
 

接続助動詞の種類
未然形らるさすしむむずましまほし
連用形けりたりたしけむ
終止形
※1
べしらしまじらむめりなり
それ以外
※2
なりたりごとし

 

※1 終止形接続について
基本的に終止形に接続しますが、ラ変型活用語の場合は、連体形に接続します。

ラ変型活用語とは、ラ変動詞と同じ活用をする語です(ら・り・り・る・れ・れ)。

  • あり:ラ変動詞
  • けり:過去の助動詞
  • たり:完了の助動詞
  • めり:推量の助動詞
  • なり:推量の助動詞
  • なり:断定の助動詞
  • たり:断定の助動詞
  • り:完了の助動詞

 

※2 それ以外の接続について
それ以外の接続の助動詞は以下の通りです。

  • なり:連体形・体言など
  • たり:体言
  • ごとし:連体形・の・が
  • り:サ変動詞の未然形・四段動詞の已然形(※いわゆる「、リ」)

 

接続とは?

接続とは、たとえば、助動詞が動詞や形容詞のうしろにくっつくことです。

くっつくときに、助動詞は直前の動詞や形容詞のかたちを変えてしまいます。

言いかえると、動詞や形容詞のうしろに助動詞をくっつけたければ、助動詞の種類にあわせて動詞や形容詞のかたちを変えなければならない、ということです。

接続とは

接続とは

 

②助動詞の活用と意味を覚える

接続を覚えたら、その次に、意味を確認しながら活用かつようを覚えます。前述の活用表で言えば、未然形から命令形まで、順番どおりにタテに覚えます。
 

活用とは?

活用とは、言葉のかたちが変わることです。

助動詞に助動詞がつく場合もあるので、それぞれの助動詞の活用も覚える必要があるのです。

複数の接続

複数の接続

 

参考:活用形を覚える

活用形かつようけいは、未然みぜん連用れんよう終止しゅうし連体れんたい已然いぜん命令めいれい、以上の順番です。

この活用形は、自分の指と連動させると、実際に古文を読むときに役立ちます。ご参考までにご紹介します。

未然形・連用形・終止形・連体形・已然形・命令形

未然形・連用形・終止形・連体形・已然形・命令形

私は右利きなので、空いている左手を使います。

握りこぶしからスタートして、小指から順番に上げていきます。小指が未然形に対応していたり、薬指が連用形と対応していたりすると、古文を読むときに品詞分解がしやすくなります。

それでは次に、それぞれの助動詞の活用形を覚えていきましょう。

助動詞の活用は、それぞれ20~30回を目安に、音読しましょう。

なお、「○(まる)」は、「そこには何もない」ことを示しています。何もないことがわかるなら、「×」でも「-」でもかまいません。

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受身・尊敬・可能・自発の助動詞「る」「らる」

受身・尊敬・可能・自発の助動詞「る」「らる」

●活用
れ れ る るる るれ れよ
られ られ らる らるる らるれ られよ

●意味「る・らる “うそかじ”」
受身(うけみ):~れる、~られる
尊敬(そんけい):~なさる、お~になる
可能(かのう):~できる
自発(じはつ):自然に~になる

どうして「る」「らる」は同じ意味なのに活用が2種類あるのかと言うと、接続が少しちがうからです。

●接続
・る:未然形(四段・ナ変・ラ変)
・らる:未然形(四段・ナ変・ラ変以外)

助動詞:る・らる

助動詞:る・らる

 

受身「~れる、~られる」

「る・らる」の前に「~に」がある、またはおぎなうことができれば受身の意味です。ちなみに「に」は格助詞です。

例)百人一首・右近(うこん)の和歌

忘らるる身をば思はず誓ひてし人の命の惜しくもあるかな

訳)
あなたに忘れられる我が身のことは何ともおもわないが、心変わりしないと誓ったあなたの命が、誓いを破った罰で失われることがもったいなくも思われることだ。

忘らるる身

忘らるる身

※和歌のくわしい解説はこちらをご覧ください。
 

尊敬「お~になる、~なさる」

高貴な人物(天皇や貴族などの「えらい人」)が前にあったら(主語だったら)、尊敬の意味です。

例)古今和歌集(こきんわかしゅう)・春歌上、詞書(ことばがき)から

歌たてまつれ、と仰(おほ)せられし時、よみて、奉(たてまつ)れる

訳)
醍醐(だいご)天皇が「和歌を献上せよ」とおっしゃった時に、よんで、天皇に差し上げた和歌。(※『古今和歌集』は醍醐天皇の命令によってつくられました。)

仰せられし時

仰せられし時

※敬語についてはこちらのページにまとめました。
 

可能「~れる、~られる」

打消(うちけし)表現といっしょに使われることが多いです。

・知られず……知ることができない(わからない)

例)古今和歌集・離別歌

慕(した)はれて来(き)にし心の身にしあればかへるさまには道もしら

訳)
あなたをひたすらお慕いする思いにまかせて、ここまで見送りに来ることになってしまった。そのような心があってこその私の身なので、帰るほうの道もわかりません

道も知られず

道も知られず

 

自発「自然に~になる」

直前に感情をあらわす動詞が来れば、自発の意味です。

例)古今和歌集・離別歌

慕(した)はて来(き)にし心の身にしあればかへるさまには道もしられず

訳)
あなたをひたすらお慕いする思いにまかせて、ここまで見送りに来ることになってしまった。そのような心があってこその私の身なので、帰るほうの道もわかりません。

慕はれて

慕はれて

 

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使役・尊敬の助動詞「す」「さす」「しむ」

使役・尊敬の助動詞「す」「さす」「しむ」

●活用
せ せ す する すれ せよ
させ させ さす さする さすれ させよ
しめ しめ しむ しむる しむれ しめよ

●意味「す・さす・しむ “しそん”」
使役(しえき):~させる
尊敬(そんけい):~なさる、お~になる

●接続
・す:未然形(四段・ナ変・ラ変)
・さす:未然形(四段・ナ変・ラ変以外)
・しむ:未然形(すべての動詞)

助動詞:す・さす・しむ

助動詞:す・さす・しむ

 

使役「~させる」

基本的に使役の意味です。

例)竹取(たけとり)物語

妻(め)の嫗(おうな)にあづけてやしなは

訳)
おじいさんはかぐや姫を、妻のおばあさんにまかせて育てさせる

やしなはす

やしなはす

 
●しむ

なお、「しむ」は漢文でよく見る助動詞です。「AをしてB(せ)しむ」で「AにBさせる」の意味です。
 

尊敬「~なさる、お~になる」

尊敬の意味になるのは、うしろに尊敬語があって、格助詞の「に」がない場合だけです。

「せたまふ」「させたまふ」「しめたまふ」などの形で使われ、最高敬語(二重敬語)を意味します。

例)竹取物語

※天皇が、天に帰って行ったかぐや姫からおくられた手紙を見ながら、かぐや姫をひき止めることができなかったことを残念がる場面です。

ひろげて御覧じて、いとあはれがらたまひて、物もきこしめさず。

訳)
天皇はかぐや姫の手紙をひろげてご覧になって、たいへんしみじみとした気分になられ、何も召しあがらない。

※ご覧ず…「見る」の尊敬語
※きこしめす…「食ふ」の尊敬語

あはれがらせたまひ

あはれがらせたまひ

 

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打消の助動詞「ず」

打消の助動詞「ず」

●活用
・ず ず ず ぬ ね ○
・ざら ざり ○ ざる ざれ ざれ
・な に ○ ぬ ね ○

●意味
打消(うちけし):~ない

基本的には、「ず ず ず ぬ ね ○」の活用を使いますが、うしろに助動詞がくっつくときは、補助活用である「ざら ざり ○ ざる ざれ ざれ」のほうを使います。

●うしろに助動詞がない場合

例)百人一首・大江千里(おおえのちさと)

月見れば千々(ちぢ)にものこそ悲しけれわが身ひとつの秋にはあら

訳)
月を見ると、心がさまざまに乱れて悲しいことだ。私ひとりだけの秋ではないのだけれど。

秋にはあらねど

秋にはあらねど

※和歌のくわしい解説はこちらをご覧ください。

●うしろに助動詞がある場合

例)百人一首・藤原義孝(ふじわらのよしたか)

君がため惜(を)しからざりし命さへながくもがなと思ひけるかな

訳)
あなたに会うために、惜しくはないと思った命までも、いまは長く生きていたいと思われることだ。

惜しからざりし命

惜しからざりし命

※和歌のくわしい解説はこちらをご覧ください。
 

ずは:打消「ず」+ 係助詞「は」

「~ないならば」

例)青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)(※通称「白浪五人男(しらなみごにんおとこ)」)

知らざぁ言って聞かせやしょう。

訳)
知らないならば、言って聞かせましょう。

ずは①~ないならば

ずは①~ないならば

 

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打消推量・打消意志の助動詞「じ」

打消推量・打消意志の助動詞「じ」

●活用
○ ○ じ じ じ ○

●意味
打消推量:~ないだろう、~まい
打消意志:~ないようにしよう

例)百人一首・清少納言(せいしょうなごん)

夜をこめて鳥のそらねははかるともよに逢坂(あふさか)の関(せき)は許さ

訳)
夜が深いうちに、鶏の鳴きまねをしてだまそうとしても、函谷関(かんこくかん)で通行がゆるされたのとはちがって、私があなたと逢うという(いっしょに寝るという)、その逢坂(おうさか)の関は、決してお通りになれますまい

よに逢坂の関は許さじ

よに逢坂の関は許さじ

※打消の意味を強めるはたらきをする副詞は「よに」以外にもあります。ヨドバシカメラのCMソングのメロディにのせて、まとめて覚えましょう。

●打消を強める副詞「まったく・けっして~ない」
・あへて
・おほかた
・かけて
・さらに
・すべて
・たえて
・つやつや
・ゆめゆめ
・つゆ
・よに

まったく・けっして~ない

まったく・けっして~ない

 

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推量の助動詞「む」「むず」

推量の助動詞「む」「むず」

●活用
○ ○ む む め ○
○ ○ むず むずる むずれ ○

●意味「えんいすいてきかりかん」

婉曲(えんきょく):~ような
意志(いし):~しよう、~よう
推量(すいりょう):~だろう
適当(てきとう):~がよいだろう
仮定(かてい):もし~としたら
勧誘(かんゆう):~たらどうか

以上の意味を文脈にあわせて判断します。

「むず」は、「むとす」が短くなった言葉で、「む」を強めた表現だと言われています。
 

婉曲「~ような」

うしろに体言(名詞)がある場合、婉曲の意味が多いです。

例)百人一首・待賢門院堀河(たいけんもんいんのほりかわ)

ながから心も知らず黒髪のみだれて今朝はものをこそ思へ

訳)
私を愛してくださるお心が長く続くかもわからず、夜をともに過ごし、いっしょに寝て、別れた今朝の私の心は、黒髪のように乱れて思い悩むことです。

長からむ心

長からむ心

※和歌のくわしい解説はこちらをご覧ください。
 

意志「~しよう」

主語が一人称(わたし)の場合は意志の意味で、「と」と一緒に使われることが多いです。

ちなみに、「~と」「~とて」は、人物のセリフを表わすことが多いので、「」でくくって「。」をうつと文が読み取りやすくなります。

例)百人一首・崇徳院(すとくいん)

瀬をはやみ岩にせかるる滝川(たきがわ)のわれても末に逢はとぞ思ふ

訳)
川の浅い所は流れが速いので、岩にせき止められる急流が二つに分かれても最後には一つになるように、いつかは一緒になろうと思うのだ。

あはむとぞおもふ

あはむとぞおもふ

※和歌のくわしい解説はこちらをご覧ください。
 

推量「~だろう」

主語が三人称(彼、彼女、もの、こと)の場合は意志の意味です。

雨、降らむ。

雨、降らむ。

 

適当「~がよいだろう」

多くの場合、「こそ~め」のかたちです。

例)平家物語(へいけものがたり)・赦文(ゆるしぶみ)

生きて候(さうらふ)少将をこそ召しかへされ候は

訳)
現在、生きております少将をこそ、お召し返しになるのがよいでしょう
 

仮定「もし~としたら」

「むは」「むに」「むも」「むが」「むこそ」の形の場合が多いです。

例)枕草子(まくらのそうし)

思はむ子を法師になしたらこそ、心苦しけれ。

訳)
かわいい子を僧にしたのなら、気の毒である。

 

勧誘「~したらどうか」

主語が二人称複数(あなたたち、わたしたち)の場合は勧誘の意味が多いです。

例)源氏物語・少女

なりたかし。なりやま

訳)
そうぞうしい。静かにしよう
 

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反実仮想の助動詞「まし」

反実仮想の助動詞「まし」

●活用
ましか ませ ○ まし まし ましか ○

●意味
反実仮想(はんじつかそう):もし~だったら…なのに
ためらい:(疑問詞・や・か、などに続いて)~かしら
 

反実仮想「~だったら…なのに」

基本的な形は次のとおりです。

・~ましかば…まし
・~ませば…まし
・~せば…まし
・未然形+ば…まし

例)百人一首・中納言朝忠(ちゅうなごんあさただ)

逢ふことの絶えてしなくはなかなかに人をも身をもうらみざらまし

訳)
逢うということがこの世に絶えて、まったく無いならば、かえって、あなたに対しても自分に対しても、恨むことがないだろうに

反実仮想

反実仮想

 

ためらい「~かしら」

例)万葉集(まんようしゅう)・巻12・3214

かむな月雨間も置かず降りにせばいづれの里の宿借らまし

訳)
十月の雨があいだも置かずに降るならば、どこの里の宿を借りようかしら
 

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希望の助動詞「まほし」

希望の助動詞「まほし」

●活用
・まほしく まほしく まほし まほしき まほしけれ ○
・まほしから まほしかり ○ まほしかる ○ ○

●意味
希望(きぼう):~たい

例)
あらまほし「ありたい」
 

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反復・継続の助動詞「ふ」

反復・継続の助動詞「ふ」

●活用
は ひ ふ ふ へ へ

※上代(じょうだい)(奈良時代)に使われた助動詞で、あまり見られないので覚えなくても良いです。「よばふ(女に言い寄る)」「かたらふ(語り合う)」「すまふ(ずっと生活し続ける)」などの例があり、それぞれ、「よばひ」「かたらひ」「すまひ」と名詞化されて使われることもあります。

●意味
・反復(はんぷく):~しては…する
・継続(けいぞく):~しつづける

助動詞「ふ」がつく動詞の名詞化

助動詞「ふ」がつく動詞の名詞化

 

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受身・可能・自発の助動詞「ゆ」

受身・可能・自発の助動詞「ゆ」

●活用
え え ゆ ゆる ゆれ ○

※上代に使われた助動詞で、あまり見られないので覚えなくても良いです。「あらゆる」「いはゆる」などの例が現在でも残っています。

●意味:「る」と同じ(尊敬はなし)
・受身
・可能
・自発
 

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過去の助動詞「き」

過去の助動詞「き」

●活用
せ ○ き し しか ○

●意味
体験過去(たいけんかこ):~た

※「過去」の助動詞と覚えておけば大丈夫です。

●接続の注意点
基本的に「き」は連用形接続ですが、未然形につく場合もあります。サ変カ変の場合です。

せし(サ変未然形+連体形)
せしか(サ変未然形+已然形)
こし(カ変未然形+連体形)
こしか(カ変未然形+已然形)

まとめて覚えておきましょう。

とくに、「過去」を意味する「来し方(こしかた、きしかた)」という古文単語は覚えておくと良いです。「将来」を意味する「行く末(ゆくすえ)」とセットで覚えましょう。

こしかた・ゆくすゑ

こしかた・ゆくすゑ

 

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過去・詠嘆の助動詞「けり」

過去・詠嘆の助動詞「けり」

●活用
けら ○ けり ける けれ ○

●意味
過去伝聞(かこでんぶん):~た(とかいう)
過去詠嘆(かこえいたん):~たなあ

※「過去」の助動詞と覚えておけば大丈夫です。
 

詠嘆「~たなあ」

和歌や会話文の中では「詠嘆」の意味として訳す場合があります。

例)百人一首・大伴家持(おおとものやかもち)

かささぎの渡せる橋に置く霜の白きを見れば夜ぞふけにける

訳)
鵲(かささぎ)が天の川につばさを並べてかけた橋ではないけれど、宮中の階(きざはし)に置いた霜が白いのを見ると、はやくも夜が更けたことだ

夜ぞ更けにける

夜ぞ更けにける

※過去の助動詞が完了の助動詞といっしょに使われる場合、必ず「完了→過去」の順番です。上の和歌の「にける」の部分です。

※和歌のくわしい解説はこちらです。
 

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強意・完了の助動詞「つ」

強意・完了の助動詞「つ」

●活用
て て つ つる つれ てよ

●意味
強意(きょうい):きっと~、まさに~
完了(かんりょう):~た、~てしまう

意味は文脈によって判断します。
 

強意「きっと~、まさに~」

例)百人一首・伊勢(いせ)

難波潟(なにわがた)みじかき葦(あし)のふしの間(ま)もあはでこの世を過ぐしてよとや

訳)
難波潟に生えている葦の、その短い節(ふし)と節の間のように短い間も、あなたに逢わずにこの世を過ごせと言うのでしょうか。

過ぐしてよとや

過ぐしてよとや

※和歌のくわしい解説はこちらをご覧ください。
 

完了「~た、~てしまう」

例)百人一首・素性法師(そせいほうし)

いま来(こ)むと言ひしばかりに長月(ながつき)の有明(ありあけ)の月を待ち出(い)でつるかな

訳)
あなたが「今行きます」と言ったばかりに、九月の長い夜の、有明の月が出るまで、私はあなたが来るのか来ないのか考えながら、お待ちしてしまったことだ。

待ち出でつるかな

待ち出でつるかな

※和歌のくわしい解説はこちらをご覧ください。
 

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強意・完了の助動詞「ぬ」

強意・完了の助動詞「ぬ」

●活用
な に ぬ ぬる ぬれ ね

●意味
強意(きょうい):きっと~、まさに~
完了(かんりょう):~た、~てしまう

意味は文脈によって判断します。
 

強意「きっと~、まさに~」

例)百人一首・左京大夫道雅(さきょうのだいぶみちまさ)

今はただ思ひ絶えむとばかりを人づてならで言ふよしもがな

訳)
あっていただけない今となっては、「あなたに対する思いもきっと途切れさせてしまいましょう」とだけ、人づてではなく、直接お会いして言う方法があればなあ。

思ひ絶えなむ

思ひ絶えなむ

 

完了「~た、~てしまう」

例)百人一首・紫式部(むらさきしきぶ)

めぐりあひて見しやそれともわかぬ間(ま)に雲がくれし夜半(よわ)の月かな

訳)
ひさしぶりに再会して、むかし見た面影かどうかも見分けがつかない間に、雲にかくれてしまった夜空の月のように、帰ってしまったあの人よ。

雲隠れにし夜半の月

雲隠れにし夜半の月

※ちなみに、「わかぬ」の「ぬ」は打消の助動詞「ず」の連体形です。
※完了の助動詞が過去の助動詞といっしょに使われる場合、必ず「完了→過去」の順番です。
※和歌のくわしい解説はこちらをご覧ください。
 

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存続・完了の助動詞「たり」

存続・完了の助動詞「たり」

●活用
たら たり たり たる たれ たれ

●意味
存続(そんぞく):~ている
完了(かんりょう):~た、~てしまう

まずは存続で訳してみて、変だったら完了の意味にとらえましょう。
 

存続「~ている」

例)竹取物語

それを見れば、三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり

訳)
おじいさんがそれ(竹筒の中)を見ると、3寸(約9cm)ほどの人が、たいへんかわいらしい様子でそこにすわっている

いとうつくしうてゐたり

いとうつくしうてゐたり

 

完了「~た、~てしまう」

例)古今和歌集・春歌下

山寺に詣(もう)でたりけるに、よめる

宿(やど)りして春の山辺(やまべ)にねたる夜は夢の内にも花ぞちりける

訳)
山のなかのお寺にお参りしときに、よんだ歌。「山寺にこもって、春の山辺に寝夜は、夢の中にまでも花が散ることだ」

※和歌の前についている短い文は、詞書(ことばがき)と言って、和歌がよまれた状況や事情などを説明しています。

まうでたりける・寝たる夜

まうでたりける・寝たる夜

※完了の助動詞が過去の助動詞といっしょに使われる場合、必ず「完了→過去」の順番になります。上の詞書の「たりける」の例も「完了→過去」の順番です。
 

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希望の助動詞「たし」

希望の助動詞「たし」

●活用
・たく たく たし たき たけれ ○
・たから たかり ○ たかる ○ ○

●意味
希望(きぼう):~たい
 

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過去推量の助動詞「けむ」

過去推量の助動詞「けむ」

●活用
○ ○ けむ けむ けめ ○

●意味
過去婉曲(かこえんきょく):~たような
過去推量(かこすいりょう):~ただろう
過去伝聞(かこでんぶん):~た(とかいう)

推量の助動詞「む」が、これから起こる未来のことを表わすのに対して、「けむ」は過去を対象にします。

例)古今和歌集・雑歌下、よみ人知らず

荒れにけりあはれいくよの宿なれや住みけむ人のを(お)とづれもせぬ

訳)
荒れてしまったことだ。ああ、いったい幾世(いくよ)を経た住みかなのか。住んでいたであろう人が訪れもしないことだ。

住みけむ人

住みけむ人

 

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推量の助動詞「べし」

推量の助動詞「べし」

●活用
・べく べく べし べき べけれ ○
・べから べかり ○ べかる ○ ○

●意味「”すいかとめて”べし」
推量(すいりょう):~だろう、~にちがいない
意志(いし):~よう
可能(かのう):~できる
当然(とうぜん):~べき、~はず
命令(めいれい):~せよ
適当(てきとう):~がよいだろう

推量の助動詞:べし(すいかとめて)

推量の助動詞:べし(すいかとめて)

意味は文脈から判断します。

また、「べし」の根本には、「理屈から考えても当然そうなるべき運命・必然性」という意味があります。したがって、推量の意味にとる場合、「む」のときよりもやや強い「~にちがいない」と訳したほうが良いこともあります。

 

推量「~だろう、~にちがいない」

主語が三人称(彼、彼女、第三者)の場合、推量の意味になることが多いです。

例)竹取物語

※かぐや姫が月を見あげては、ため息をついたり泣いたりするので、まわりの人々がふしぎに思っている場面です。

使ふ者ども、「なほ物(もの)思(おぼ)すことあるべし」と、ささやけど、親をはじめて、何事とも知らず。

訳)
使用人たちは、「姫は、やはりお悩みになることがあるにちがいない」と、ささやくが、親をはじめとして、だれも、その原因がわからない。

※ラ変型活用語は、連体形に接続します。

なほ物思すことあるべし

なほ物思すことあるべし

 

意志「~よう」

主語が一人称(わたし)の場合、意志の意味になることが多いです。

例)竹取物語

※かぐや姫は、どうして月を見ながら悲しみに暮れるのかと質問されても、とくに何でもないと答える場面です。

かぐや姫、「(※月を)見れば、世間(せけん)心細くあはれにはべり。なでふ物をか嘆きはべるべき」といふ。

訳)
かぐや姫は、「月を見ると、世の中が心細くしみじみとした気分になるのです。(そのほかには)どのような物をなげきましょうか」と言う。

※ラ変型活用語は、連体形に接続します。

なでふ物をか嘆き侍るべき

なでふ物をか嘆き侍るべき

 

可能「~できる」

前後の文脈から判断します。「~れる、~られる、~できる」で訳しておかしくなかったら、可能の意味です。

例)古今和歌集・離別歌

越国(こしのくに)へまかりける人に、よみて、遣(つか)はしける

よそにのみ恋ひやわたらむ白山(しらやま)の雪みるべくもあらぬわが身は

訳)
北陸地方(新潟・富山・石川・福井のあたり)へ行った人のために、よんで、使者に持たせておくった和歌。「遠くはなれてずっと恋をしつづけるのでしょうか。越の国の白山の雪を、目の前で見ることができるはずのない私の身にとっては……。」

雪見るべくもあらぬ我が身

雪見るべくもあらぬ我が身

 

当然「~べき、~はず」

例)百人一首・皇嘉門院別当(こうかもんいんのべっとう)

難波江(なにわえ)の葦(あし)のかりねのひとよゆゑみをつくしてや恋ひわたるべき

訳)
難波に生えている葦の、刈り根の一節(ひとよ)のように短い一夜をともに過ごしたせいで、澪標(みおつくし)ではないけれど、身をほろぼすような恋をし続けることになったのだろうか。

みをつくしてや恋ひわたるべき

みをつくしてや恋ひわたるべき

※和歌のくわしい解説はこちらをご覧ください。
 

命令「~せよ」

主語が二人称(あなた)のことが多いです。

例)大日本帝国憲法(明治憲法)(※1889年2月11日発布)

第三条 天皇ハ神聖ニシテ侵(おか)スヘカラス

訳)
天皇は神聖であって、侵してはならない。

神聖にして侵すべからず

神聖にして侵すべからず

 

適当「~がよいだろう」

主語が二人称(あなた)のことが多いです。

例)徒然草(つれづれぐさ)・55段

家の作りやうは夏をむねとすべし

訳)
(高温多湿の日本では、)住居のつくり方は、夏の暮らしやすさを中心に考えるとよいだろう

夏をむねとすべし

夏をむねとすべし

 

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推定の助動詞「らし」

推定の助動詞「らし」

●活用
○ ○ らし らし らし ○

●意味
確実推量(かくじつすいりょう):~にちがいない、きっと~だろう

例)万葉集・巻1、28(※百人一首・持統天皇(じとうてんのう)の元の歌)

春過ぎて夏来たるらししろたへの衣(ころも)ほしたり天(あま)の香具山(かぐやま)

訳)
春が過ぎ去って、夏が来たにちがいない。真っ白な衣がほしてある。天の香具山に。

夏来たるらし

夏来たるらし

 

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打消推量・打消意志の助動詞「まじ」

打消推量・打消意志の助動詞「まじ」

●活用
・まじく まじく まじ まじき まじけれ ○
・まじから まじかり ○ まじかる ○ ○

●意味:「べし」の反対
打消推量(不可能):~ないだろう、~できない
打消意志:~ないだろう
打消当然(禁止):~はずがない、~べきではない、~してはならない

つまり、「べからず」と同じような意味ということです。

また、「べし」と同じように意味がたくさんあるので、前後の文脈から意味を判断することになります。ただし、基本的な意味は打消推量です。

ましはべしの反対

ましはべしの反対

 

打消推量(不可能)「~ないだろう、~できない」

主語が三人称(彼、彼女、第三者)のことが多いです。

例)竹取物語

ここにおはするかぐや姫は、重き病(やまひ)をしたまへば、えいでおはしますまじ

訳)
ここにいらっしゃるかぐや姫は、重い病気にかかっていらっしゃるので、外にお出になれないでしょう。

え出でおはしますまじ

え出でおはしますまじ

 

打消意志「~ないだろう」

主語が一人称(わたし)のときは打消意志です。

例)枕草子(まくらのそうし)・78段「頭中将のすずろなるそら言を聞きて」

ただ今は見るまじ

訳)
今ここでは見るまい

見るまじ

見るまじ

 

打消当然(禁止)「~はずがない、~べきではない、~してはならない」

主語が二人称(あなた)のときは打消当然や禁止の意味が多いです。

例)枕草子・88段「内は五節のころこそ」

かいつくろひ、二人の童(わらわ)よりほかにはすべて入(い)るまじ

訳)
髪の毛の世話をする女房と、ふたりの童女以外の人は、だれも入ってはいけません

いるまじ

いるまじ

 

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現在推量の助動詞「らむ」

現在推量の助動詞「らむ」

●活用
○ ○ らむ らむ らめ ○

●意味
現在推量:(今ごろは)~ているだろう
目前原因推量:どうして~なのだろう
婉曲:話では~という、文献によれば~だという

「けむ」が過去のことを推量するのに対して、「らむ」は現在のことを推量します。現在の事態や、現在目の前で見ることができないことを推量するのです。
 

現在推量「(今ごろは)~ているだろう」

例)万葉集・巻3、337、山上憶良(やまのうえのおくら)

憶良らは今はまからむ子泣くらむそれその母も我(あ)を待つらむ

訳)
わたくし、憶良めはもう退出いたしましょう。今ごろは子どもが泣いているでしょう。あの……、その母(憶良の妻)もわたしを待っていることでしょうから。

※「憶良ら」の「ら」は謙遜の意味。自分をへりくだって言う。
※「まからむ」の「む」は意志の助動詞。
※「まつらむそ」の「そ」は、係助詞「ぞ」と同じ。文末にあって断定の意味。奈良時代には「そ」とも言う。

現在推量の助動詞「らむ」

現在推量の助動詞「らむ」

 

目前原因推量「どうして~なのだろう」

「や」「か」「など」「なでふ」などの疑問の言葉がなくても、疑問の意味で訳します。

例)百人一首・紀友則(きのとものり)

ひさかたの光のどけき春の日に静心(しづごころ)なく花の散るらむ

訳)
日の光がやわらかな春の日に、なぜ落ち着いた心もなく桜の花は散るのだろう

しづごころなく花の散るらむ

しづごころなく花の散るらむ

※和歌のくわしい解説はこちらをご覧ください。
 

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推定・婉曲の助動詞「めり」

推定・婉曲の助動詞「めり」

●活用
○ めり めり める めれ ○

●意味
婉曲推量:~のように見える、~のようだ

「めり」は“目で見た推量”です。「見るかぎり~と思われる」ということです。

例)竹取物語

かぐや姫の、皮衣(かわぎぬ)を見て、いはく、「うるはしき皮な(なん)めり。わきてまことの皮ならむとも知らず。」

訳)
かぐや姫が、皮衣を見て、言うことには、「立派な皮であるように見えます。しかし、特に本当の皮かどうかもわかりません。」

麗しき皮なめり

麗しき皮なめり

※「なめり」は「なんめり」と読みます。もともと、「なるめり」だったのが「なんめり」と音便化(※発音しやすいように音が変わること)したものです。これは、つぎに説明する「なり」も同じです。「ななり」と書いて「なんなり」と読みます。ほかにも、「あなり(あんなり)」「べかなり(べかんなり)」などがあります。
 

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伝聞・推定の助動詞「なり」

伝聞・推定の助動詞「なり」

●活用
○ なり なり なる なれ ○

●意味
伝聞(でんぶん):~だそうだ、~とかいう
伝聞推定:~らしい

「なり」は“耳で聞いた推量”です。「聞くかぎり~と思われる」ということです。

例1)竹取物語

「火鼠(ひねずみ)の皮といふなる物、買ひておこせよ。」

訳)
「火鼠の皮とかいうものを、買って届けてくれ。」

火鼠の皮と言ふなる物

火鼠の皮と言ふなる物

例2)百人一首・参議雅経(さんぎまさつね)

み吉野の山の秋風(あきかぜ)小夜(さよ)ふけてふるさと寒く衣(ころも)うつなり

訳)
吉野山の秋風が夜ふけに吹き、古都、吉野には寒々ときぬたを打つ音が聞こえる

※「きぬた」とは、布をたたいてつやを出したり、やわらかくしたりすることです。

衣うつなり

衣うつなり

※和歌のくわしい解説はこちらをご覧ください。
 

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断定の助動詞「なり」

断定の助動詞「なり」

※連体形・体言に接続。

●活用
なら なり に なり なる なれ なれ

●意味
断定(だんてい):~である
存在(そんざい):~にある

断定と存在の「なり」は、「に + あり」に分解することができます。

存在〈~にある〉の場合は格助詞「に」にラ変「あり」がついた形ですが、断定〈~である〉の場合は連用形「に」にラ変「あり」がついた形と考えます。

例1)

なさけは人のためならず。

訳)

親切は他人のためにするのではない。他人に親切にしておけば、めぐりめぐって自分に良いことが訪れるものだ。

情けは人の為ならず

情けは人の為ならず

※断定「なり」の連用形「に」は、「おはす・はべり・さぶらふ」を伴う場合にも使われます。「おはす・はべり・さぶらふ」の「に」は、断定の助動詞の連用形です。
 

伝聞「なり」と断定「なり」の判別

伝聞の助動詞「なり」と、断定の助動詞「なり」を区別する基本的な方法は2つです。

●基本的な判別方法
①接続が終止形なら伝聞連体形なら断定
②音や声など、聴覚に関するものがあったら、伝聞

それぞれの例を見てみましょう。

●判別方法①
例)土佐日記(とさにっき)

男もすなる日記(にき)といふものを、女もしてみむとてするなり

訳)
男も書くとかいう日記というものを、女であるわたしもしてみようと思って書くのだ

※男の日記とは一般的に、漢文で書かれた官僚の記録。
※筆者を女性とするのは作者の作り話。『土佐日記』の作者の紀貫之(きのつらゆき)は男性。

伝聞の助動詞「なり」と断定の助動詞「なり」

伝聞の助動詞「なり」と断定の助動詞「なり」

●判別方法②
例)古今和歌集・秋歌上、凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)

つまこふる鹿ぞ鳴くなる女郎花(おみなえし)をのが住む野の花としらずや

訳)
妻を恋しく思ってさがしている鹿が鳴いているようだ。おみなえしの花が、自分が住んでいる野原の花だということを知らないのか。(お前の妻であるおみなえしの花はすぐ近くにあるではないか。)

※女郎花を鹿の妻とみたててよんだ歌。

鹿ぞ鳴くなる

鹿ぞ鳴くなる

「鳴く」という動詞は四段活用なので、終止形も連体形も「鳴く」となって区別ができないから、うしろの「なる」が伝聞なのか断定なのかを判断できません。しかし、「鳴く」は音や声など、聴覚に関係する言葉なので、伝聞と解釈できます。

なお、上の例のように、「連体形で係り結びをする係助詞(ぞ・なむ・や・か) + 終止形と連体形が同じ形の動詞 + なる」の場合、「なる」は伝聞の意味になると考えておくと良いです。
 

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断定の助動詞「たり」

断定の助動詞「たり」

※体言(名詞)に接続。

●活用
たら たり と たり たる たれ たれ

●意味
断定:~である

平安時代の初期に漢文訓読で使われるようになった言葉と言われていますので、前に漢語(漢字の音の言葉)が来ることが多いです。

例)巨人軍憲章(きょじんぐんけんしょう)

巨人軍は紳士たれ

訳)
読売ジャイアンツの一員は紳士であれ

巨人軍は紳士たれ

巨人軍は紳士たれ

 

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比況の助動詞「ごとし」

比況の助動詞「ごとし」

※体言(名詞)・連体形・「の」・「が」に接続。

●活用
ごとく ごとく ごとし ごとき ○ ○

●意味
比況(ひきょう):~のようだ

漢文でよく見る表現です。

例)平家物語

おごれる人も久(ひさ)しからず、ただ春の夜(よ)の夢のごとし

訳)
思いあがって得意になっている人も、その栄華はいつまでもつづかずに、まるで春の夜の夢のようだ。(それほど短くて、はかないものだ。)

ただ春の夜の夢のごとし

ただ春の夜の夢のごとし

 

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存続・完了の助動詞「り」

存続・完了の助動詞「り」

※サ行変格活用未然形・四段活用已然形に接続。「さみしいリ」と覚えます。

●活用
ら り り る れ れ

さみしい「リ」:存続・完了の「り」

さみしい「リ」:存続・完了の「り」

また、見分けるポイントは、直前に母音の「e (エ)」があるかどうかです。「e (エ)」のうしろに「ら・り・る・れ」がついていたら、まず「さみしいリ」だと考えてみましょう。

e + ら・り・る・れ:存続・完了

e + ら・り・る・れ:存続・完了

●意味
存続(そんぞく):~ている
完了(かんりょう):~た、~てしまう

まずは存続で訳してみて、変だったら完了の意味にとらえましょう。

例1)平家物語

おごれ人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。

訳)
思いあがって得意になっている人も、その栄華はいつまでもつづかずに、まるで春の夜の夢のようだ。(それほど短くて、はかないものだ。)

おごれる人

おごれる人

例2)竹取物語

かぐや姫は罪をつくりたまへければ、かく賤(いや)しきおのれがもとに、しばしおはしつるなり。

訳)
かぐや姫は天上で罪をおかされので、このように身分の低いおまえ(竹取のおきな)のところに、すこしの間いらっしゃったのだ。

罪をつくり給へりければ

罪をつくり給へりければ

 

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古文が苦手な方はこちらの記事もチェック

古典が苦手な方はこちらの記事もご確認ください。

>> 古典文法の勉強法(基礎編)わかりやすい覚え方で用言の活用形から学ぶ

また、百人一首を品詞分解して現代語訳と文法解説をつけたページもございますので、勉強のテキストとしてぜひご利用ください。

>> 百人一首の現代語訳一覧(わかりやすい意味と解説で恋の歌も簡単に理解)

 

古典文法のおすすめの参考書

古典文法のくわしい解説はこちらの参考書にものっていますので、参考にしてみてください。

 
●より詳しく学びたい方は以下がおすすめ
実例詳解 古典文法総覧』(小田勝、和泉書院、2015年)は、最大規模の古典文法書です。豊富な用例を示しながら詳細な解説がなされているので、古文を読んでいて疑問に感じる箇所に出会った時の手助けとなります。

古典が好きな方や、古文が得意な中高生の方に、ぜひ手に取って頂きたい良著です。
 

 
●参考文献
・『精選古典改訂版』北原保雄、平成21年、大修館書店
・『吉野の古典文法スーパー暗記帖』吉野敬介、2008年、学習研究社
・『新日本古典文学大系 古今和歌集』小島憲之・新井栄蔵、1989年、岩波書店
・『新編日本古典文学全集 竹取物語 伊勢物語 大和物語 平中物語』片桐洋一・高橋正治・福井貞助・清水好子、1994年、小学館
・『新編日本古典文学全集 平家物語』市古貞次、1994年、小学館
・『新編日本古典文学全集 土佐日記 蜻蛉日記』菊地靖彦・伊牟田経久・木村正中、1995年、小学館
・『新編日本古典文学全集 万葉集』小島憲之・東野治之・木下正俊、1994年、小学館
・『新編日本古典文学全集 枕草子』松尾聡・永井和子、小学館、1997年
・『詳説日本史改訂版』石井進・五味文彦・笹山晴生・高埜利彦ほか、2009年、山川出版社
・『新版 徒然草 現代語訳付き』小川剛生、2015年、角川ソフィア文庫

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  1. dog mate より:

    助動詞の見極めが結構むずかしいんですよね。このブログはとてもわかりやすく網羅的に解説されていて、助かりました!ありがとうございます。

    • 本田 より:

      コメントありがとうございます。お役に立てて嬉しく思います。たしかに、古文の助動詞の見極めは難しいですよね。

      学習の最初の段階で、助動詞の接続や活用、意味をある程度抑えておけば、その後の読解が楽になります。古文を読んで「面白いな」と思ってくれる方が一人でも増えればと考えております。

  2. つぼゆう より:

    わかりやすい!

    • 本田 より:

      コメントありがとうございます。お役立て頂き嬉しいです。

      今後もお気軽にご覧になってください。

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