古典の助動詞「じ」には、打消推量・打消意志の用法があります。今回は「じ」の活用や接続、意味について、用例をまじえながら解説します。
- 「じ」は「む」の否定に相当する
- 文中ではほとんどの場合、終止形で表れる
「じ」の活用
特殊型
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
じ | ○ | ○ | じ | じ | じ | ○ |
「じ」の接続
未然形
「じ」の意味
- 打消推量「~ないだろう」
- 打消意志「~ないようにしよう・~まい」
「じ」は、推量や意志を表す助動詞「む」を否定する語に当たると考えられています。したがって、打消推量(~ないだろう)・打消意志(~ないようにしよう)といった意味を表します。
①打消推量(うちけしすいりょう)「~ないだろう」
荒雄らを来むか来じかと飯盛りて門に出で立ち待てど来まさず (荒雄良乎 将来可不来可等 飯盛而 門尓出立 雖待来不座) | |
(訳)荒雄が帰って来るだろうか、帰って来ないだろうかと、飯を盛って門に出で立ち、待っているけれども、帰って来られない。 ※荒雄…「義勇遭難物語の主人公の名。ただし本名でなく、当時の人が仮に作ったものか。」(『新編日本古典文学全集 萬葉集 (4)』128ページ) |
②打消意志(うちけしいし)「~ないようにしよう・~まい」
※「ずは」は「~ないで」「~ないならば」などと訳します。詳しい成り立ちについては助動詞「ず」の記事で解説しております。
※参考文献
・『実例詳解 古典文法総覧』小田勝、和泉書院、2015年
・『改訂増補 古文解釈のための国文法入門』松尾聰、筑摩書房(ちくま学芸文庫)、2019年
・『吉野式古典文法スーパー暗記帖 完璧バージョン』吉野敬介、学研プラス、2014年
※本文引用
・『新編日本古典文学全集 萬葉集』小島憲之・木下正俊・東野治之、小学館、1994年
・『新編日本古典文学全集 (12) 竹取物語 伊勢物語 大和物語 平中物語』片桐洋一・高橋正治・福井貞助・清水好子、小学館、1994年
・『新編日本古典文学全集 源氏物語』阿部秋生・今井源衛・秋山虔・鈴木日出男、小学館、1994年