21~30番歌

百人一首の意味と文法解説(23)月見れば千々にものこそ悲しけれ我が身ひとつの秋にはあらねど┃大江千里

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-23

投稿日:2018年3月11日 更新日:

月見ればちぢにものこそ悲しけれわが身ひとつの秋にはあらねど

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小倉百人一首から、大江千里の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。

また、くずし字・変体仮名で書かれた江戸時代の本の画像も載せております。

ふだん我々が使っている字の形になおした(翻刻と言う)ものと、ひらがなのもとになった漢字(字母)も紹介しておりますので、ぜひ見比べてみてください。

目次

原文

ogura-hyakunin-isshu-23

百人一首(23)月見れば千々にものこそ悲しけれ我が身ひとつの秋にはあらねど

画像転載元
国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541162

翻刻(ほんこく)(普段使っている字の形になおす)

hyakuni-isshu-honkoku-23

百人一首(23)月見れば千々にものこそ悲しけれ我が身ひとつの秋にはあらねど

釈文(しゃくもん)(わかりやすい表記)

大江千里
月見れば 千々に物こそ 悲しけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど
 

字母(じぼ)(ひらがなのもとになった漢字)

hyakunin-isshu-jibo-23

百人一首(23)月見れば千々にものこそ悲しけれ我が身ひとつの秋にはあらねど

現代語訳(歌意)・文法解説

月を見ると、心がさまざまにみだれて悲しいことだ。私ひとりだけの秋ではないのだが。

月見れば

月見れば

ちぢにものこそかなしけれ

ちぢにものこそかなしけれ

我が身ひとつの秋にはあらねど

我が身ひとつの秋にはあらねど

※「見る」は上一段活用の動詞です。上一段活用は種類が少なく、主に、「干る・射る・着る・煮る・似る・見る・居る・率る」の8種類のみです。「ひいきにみゐる上一段」とまとめて覚えます。

ひいきにみゐる上一段

ひいきにみゐる上一段

動詞は「古典の動詞の活用表の覚え方」にまとめましたのでご確認ください。

※「已然形 + ば」は、「~なので」「~すると」などの意味で、文脈によって意味を判断します。今回は、「月見れば」を「月を見ると」と訳します。

※係り結びと係助詞については「古典の助詞の覚え方」をご確認ください。

※助動詞の接続や活用については「古典の助動詞の活用表の覚え方」をご覧ください。

倒置(とうち)。倒置とは、文の順番を逆に入れかえて、意味を強調させることです。本来の順番では、第4・5句目(私ひとりだけの秋ではないのだが)が、第1~3句目(月を見ると、心がさまざまにみだれて悲しいことだ)につながっていきます。

※3句切れ。終止形や、係り結びがあるところは、和歌の意味がいったん途切れることが多いです。
 

語釈(言葉の意味)

※特記のないかぎり『岩波 古語辞典 補訂版』(大野晋・佐竹昭広・前田金五郎 編集、岩波書店、1990年)による。
 

ちぢ【千箇・千千】

①千個。「衆(いくさ)三千(みちぢ)を率て、来たりて勅(みことのり)を聴かむと請(まう)す」〈紀継体二十三年〉
③さまざま。「月見れば―に物こそ悲しけれ我が身一つの秋にはあらねど」〈古今一九三〉
 

もの【物・者】

一〘名〙
➊物体・物品などを一般的にとらえて指す。「いとのきて短き―の端(はし)切ると言へるが如く」〈万八九二〉。「みどり児の乞ひ泣くごとに取り与ふる―し無ければ」〈万二一〇〉。「内蔵寮(くらづかさ)納殿(をさめどの)の―(品物)をつくして、いみじうせさせ給ふ」〈源氏桐壺〉。「さるは、たよりごとに―(贈物)も絶えず得させたり」〈土佐二月十六日〉。「散るまでも我が―にして花は見てまし」〈後撰一〇一〉
➌《対象の性質や状態が、はっきりとは言えないが、ともかく意識の対象となる存在》
①いろいろの状態・事態。「ねもころに―や悲しききりぎりす草のやどりにこゑたえず鳴く」〈後撰二五八〉。「右近は―も覚えず、君につと添ひ奉りて、わななき死ぬべし」〈源氏夕顔〉
 

作者:大江千里(おおえのちさと)について

生没年未詳。大江千里は生まれた年も死んだ年もよくわかっていません。

参議(さんぎ)音人(おとんど)の子という説や、少納言(しょうなごん)玉淵(たまふち)の子という説もあります。

音人は阿保親王(あぼしんのう)(在原行平在原業平の父)の子という説があり、その説によれば、千里は平城天皇(へいぜいてんのう)の末裔ということになります。

大江千里の系図:宇多天皇の周辺で活躍

大江千里の系図:宇多天皇の周辺で活躍

宇多天皇の時代に活躍したとされ、寛平(かんぴょう)6年(894)、宇多天皇の勅命(ちょくめい)(天皇の命令)により、『句題和歌』(くだいわか)をつくりました。
 

百人一首の現代語訳と文法解説はこちらで確認

こちらは小倉百人一首の現代語訳一覧です。それぞれの歌の解説ページに移動することもできます。

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あきぜにぎりすはるぎて
あきたのこころてにはるよの
ぬればこころかたの
あさふのひとをひといさ
あさぼらけたびはひとをし
あさぼらけすてふくからに
ひきのやこのととぎす
あはしまびしさにみかもり
あはともぶれどみかはら
みてのつゆにばやな
あふとのみのえののくの
あまかぜをはやみしのの
あまはらさごのらさめの
あららむのおとはぐりあひて
あらふくのうらにしきや
ありけのわかれともに
ありやまのをよらはで
しへのをかもむぐら
いまむとちぎりきしやまはに
いまただちぎりやまとは
りけるやぶるされば
みわびみればのとを
やまにばねのよのなか
にきくながらむよのなか
おほやまながへばすがら
おほなくなげつつこめて
ひわびなげとてわがほは
とだにのよはわがでは
さぎのなにおはばわするる
かぜよぐなにはわすじの
かぜいたみなにはわたのはら
きみがためはなそふわたのはら
きみがためはないろはぬれば
らやま

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都内の私立大学 文学部国文学専攻出身
お菓子メーカー勤務のサラリーマン
趣味は歌舞伎を見ること(2012年~)
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