41~50番歌

百人一首の意味と文法解説(41)恋すてふ我が名はまだき立ちにけり人知れずこそ思ひそめしか┃壬生忠見

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-41

投稿日:2018年3月11日 更新日:

こひすてふわが名はまだき立ちにけり人知れずこそ思ひそめしか

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小倉百人一首から、壬生忠見の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。

また、くずし字・変体仮名で書かれた江戸時代の本の画像も載せております。

ふだん我々が使っている字の形になおした(翻刻と言う)ものと、ひらがなのもとになった漢字(字母)も紹介しておりますので、ぜひ見比べてみてください。

原文

ogura-hyakunin-isshu-41

百人一首(41)恋すてふ我が名はまだき立ちにけり人知れずこそ思ひそめしか


画像転載元
国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541162

翻刻(ほんこく)(普段使っている字の形になおす)

hyakuni-isshu-honkoku-41

百人一首(41)恋すてふ我が名はまだき立ちにけり人知れずこそ思ひそめしか

釈文(しゃくもん)(わかりやすい表記)

壬生忠見
恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひ初めしか
 

字母(じぼ)(ひらがなのもとになった漢字)

hyakunin-isshu-jibo-41

百人一首(41)恋すてふ我が名はまだき立ちにけり人知れずこそ思ひそめしか

現代語訳(歌意)・文法解説

※村上天皇の時代の歌合せ。

「恋をしている」という私の評判は早くも立ってしまった。人知れず心ひそかに恋をしはじめたばかりだったのに。

恋すてふ我が名はまだき立ちにけり人知れずこそ思ひそめしか

恋すてふ我が名はまだき立ちにけり人知れずこそ思ひそめしか

※「立ちにけり」の「」は完了の助動詞、「けり」は過去の助動詞です。完了の助動詞と過去の助動詞を組み合わせて使う場合、「完了 → 過去」の順番になります。(例:「誓ひてし」)

倒置(とうち)。語順を逆に入れかえることで強調のはたらきをします。5句目「思ひそめしか」が、1~3句につながっていきます。(人知れず心ひそかに恋をしはじめたばかりだったのに〈4・5句〉、「恋をしている」という私の評判は早くも立ってしまった〈1・2・3句〉。)

三句切れ。終止形が和歌の切れ目になることが多いです。

※係助詞「こそ」は已然形で結びます。係り結びと係助詞の解説は「古典の助詞の覚え方」をご覧ください。

▽内裏歌合(だいりうたあわせ)では次歌(※平兼盛の歌のこと)と番(つが)えられ、微妙な判定で負となったが、後世の評価はかえって高く、拾遺抄(しゅういしょう)も拾遺集(しゅういしゅう)も巻頭に置いている。百人一首にも収められ、沙石集(しゃせきしゅう)五では勝敗にこだわって悶死した説話となっている。忍ぶ恋が世間に知られることになったのを、慨嘆する。(『新日本古典文学大系 拾遺和歌集』小町谷照彦、岩波書店、1990年、185ページ)
 

語釈(言葉の意味)

※特記のないかぎり『岩波 古語辞典 補訂版』(大野晋・佐竹昭広・前田金五郎 編集、岩波書店、1990年)による。
 

詞書(ことばがき)

※詞書とは、和歌がよまれた事情を説明する短い文のことで、和歌の前につけられます。

天暦御時歌合(てんりゃくのおほんときうたあはせ)(※村上天皇の時代の歌合せ。天徳四年内裏歌合※1。)

※1天徳4年(960)。平兼盛(たいらのかねもり)の和歌と対になります。『沙石集』にはこの歌合せにまつわるエピソードが伝わっています。詳しくは「『沙石集』歌ゆゑに命を失ふ事 “兼盛と忠見”(天徳の歌合)現代語訳と品詞分解」をご覧ください。

※詞書の引用は『新日本古典文学大系 拾遺和歌集』(185ページ)によります。
 

うたあはせ ‥アワセ【歌合】

平安・鎌倉時代の文学的遊戯の一。和歌を作る人人を左右に分け、その詠んだ歌を左右一首ずつ組み合わせて、判者(はんじゃ/はんざ)が審判して勝負をきめる。平安初期以来宮廷・貴族のあいだに流行し、女手〈をんなで〉の発達、宮廷和歌の発展に大きい役割を果した。「寛平の御時、后(きさい)の宮の―の歌」〈古今一二詞書〉
 

てふ

●てふ チョウ
〘連語〙「と言ふ」の約。「うぐひすの笠に縫ふ―梅の花折りてかざさむ老隠るやと」〈古今三六〉
 

な【名】

①物・人・観念を他と区別するために呼ぶ語。まなえ。「酒の―聖(ひじり)と負ほせし古への大き聖の言(こと)のよろしさ」〈万三三九〉。「妹が―呼びて袖そ振りつる」〈万二〇七〉
③世間への聞え。評判。「妹が―も我が―も立たば惜しみこそ」〈万二六九七〉
 

まだき

一〘副〙
早くも。今から。時も至らないのに。早早と。「わが袖に―時雨の降りぬるは君が心に秋や来ぬらむ」〈古今七六三〉。「あかなくに―も月の隠るるか山の端逃げて入れずもあらなん」〈古今八八四〉。「―この事を聞かせ奉らむも心恥づかしく覚え給ひて」〈源氏東屋〉。「速、マダキ」〈運歩色葉集〉
 

にけり

(※完了の助動詞「ぬ」連用形+過去の助動詞「けり」終止形。完了の助動詞と過去の助動詞がともに使われる場合、完了・過去の順番。)
 

人知れず

忍ぶ恋を表す恋歌の慣用語句。「人」は、恋する相手の場合が多いが、ここは第三者。「知る」は、下二段活用で、知られる意。(『新日本古典文学大系 拾遺和歌集』185ページ)
 

思ひそめしか

「そむ」は、「染む」の場合もあるが、ここは「初む」。この係り結びは逆接の用法で、倒置となっており、上句に続く構文。(『新日本古典文学大系 拾遺和歌集』185ページ)
 

しか

(※過去の助動詞「き」已然形)
 

百人一首の現代語訳と文法解説はこちらで確認

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みての つゆに ばやな
あふとの みのえの のくの
あまかぜ をはやみ しのの
あまはら さごの らさめの
あららむ のおとは ぐりあひて
あらふく のうらに しきや
ありけの わかれ ともに
ありやま のをよ らはで
しへの をかも むぐら
いまむと ちぎりきし やまはに
いまただ ちぎり やまとは
りける やぶる されば
みわび みれば のとを
やまに ばねの よのなか
にきく ながらむ よのなか
おほやま ながへば すがら
おほなく なげつつ こめて
ひわび なげとて わがほは
とだに のよは わがでは
さぎの なにおはば わするる
かぜよぐ なには わすじの
かぜいたみ なには わたのはら
きみがため はなそふ わたのはら
きみがため はないろは ぬれば
らやま

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都内の私立大学 文学部国文学専攻出身
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趣味は歌舞伎鑑賞(2012年~)
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