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百人一首の意味と文法解説(3)あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む┃柿本人麻呂

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-3

投稿日:2018年3月10日 更新日:

あしひきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む

小倉百人一首から、柿本人麻呂(人麿・人丸)の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。

また、くずし字・変体仮名で書かれた江戸時代の本の画像も載せております。

ふだん我々が使っている字の形になおした(翻刻と言う)ものと、ひらがなのもとになった漢字(字母)も紹介しておりますので、ぜひ見比べてみてください。

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原文

ogura-hyakunin-isshu-3

百人一首(3)あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む

画像転載元
国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541162

翻刻(ほんこく)(普段使っている字の形になおす)

hyakuni-isshu-honkoku-3

百人一首(3)あしひきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む

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釈文(しゃくもん)(わかりやすい表記)

柿本人丸
あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む
 

字母(じぼ)(ひらがなのもとになった漢字)

hyakunin-isshu-jibo-3

百人一首(3)あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む

現代語訳(歌意)・文法解説

山鳥の長く垂れ下がっている尾のように、長い夜をひとりで寝るのだろうか。

▽万葉集十一・作者未詳歌の或本の歌。(引用『新日本古典文学大系 拾遺和歌集』小町谷照彦、岩波書店、1990年、226ページ)

あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む

あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む

枕詞(まくらことば)…音や意味から特定の言葉をみちびきだす言葉を枕詞と言います。ほとんどの場合、5音(5文字)におさまります。

序詞(じょことば)…音や意味から特定の言葉をみちびきだす言葉で、5音(5文字)以上のものを序詞と言います。

※「しだり尾の」の「の」は格助詞で、連用修飾の用法です。用言(動詞形容詞形容動詞)に連なる(かかる)ので連用修飾と言います。

※「か」は疑問の係助詞。係り結びは連体形です。助詞については「古典の助詞の覚え方」にまとめてあります。
 

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語釈(言葉の意味)

※特記のないかぎり『岩波 古語辞典 補訂版』(大野晋・佐竹昭広・前田金五郎 編集、岩波書店、1990年)による。
 

あしびきの

●あしびきの
〔枕詞〕《奈良時代にはアシヒキノと清音》
「山」「峰(を)」などにかかる。かかり方は未詳。「―山行きしかば」〈万四二九三〉。「―峰(を)の上(へ)の桜」〈万四一五一〉

●あしひきの【足引の】

「山」もしくは「山桜」「山橘」など「山―」という形の熟語に掛かる枕詞として『万葉集』の時代から頻用されたが、「山」に続く理由はわからない。また中世には「あしびき」と「ひ」を濁っていたが、どの時代から濁るようになったかも必ずしも明らかでない。「あしひきの山のもみちにしづくあひて散らむ山路を君が越えまく」(万葉集・巻十九・家持)「あしひきの山鳥の尾のしだり尾の長々し夜をひとりかも寝む」(拾遺集・恋三・人麿、百人一首)などがその例であるが、「あしひきの葛城山」(拾遺集・恋三・読人不知)「あしひきの岩倉山」(新勅撰集・賀・頼資)のように山の名に続く場合や「あしひきの大和」(新勅撰集・秋下・雅経)のように「やま」ではなく「やまと」に続くような例もあった。
歌枕 歌ことば辞典』片桐洋一、笠間書院、1999年

 

やまどり【山鳥】

●やまどり【山鳥】
キジ科の鳥。昼は雌雄一処におり、夜は谷を隔てて寝るという言い伝え
があった。「あしひきの―こそば峰(を)向ひに妻問ひすといへ」〈万一六二九〉。「夜半のあらしに―の心地してあかしかね給ふ」〈源氏総角〉

●―の【山鳥の】
〔枕詞〕
山鳥の尾と同音の「峰(を)」にかかる。「白雲のへだつるかたや―をの上に咲ける桜なるらむ」〈続千載九六〉
 

しだり尾

●しだ・り【垂り】
〘四段〙《シデ(垂)の自動詞形》
細かい枝状に分れて、長く下方に下がる。長く垂れ下がる。「垂、此をば之娜屢(しだる)といふ」〈紀孝徳、大化一年〉。「柳もいたう―・りて」〈源氏蓬生〉

●―を【垂り尾】線状に長く垂れ下がっている尾。「あしひきの山鳥の尾の―の」〈万二八〇二〉
 

かも

 複合係助詞及び終助詞。疑問詞を承ける。「か」の下に「も」を添えた助詞である。従って体言または活用語の連体形を承ける。
 「も」は不確実な提示、あるいは不確実な判断を表わすのがその本質的な意味であるから、「かも」となった場合も単独の「か」の持つ疑問の意を受けつぐ(1)。(中略)

(1)「冬の林につむじかもい巻き渡ると思ふまで」〈万一九九〉「角田の(すみだ)河原に独りかも寝む」〈万二九八〉「この夕べ降り来る雨は彦星の早漕ぐ船の櫂の散沫(ちり)かも」〈万二〇五二〉「梅の花しだり柳に折りまじへ花にまつらば君に逢はむかも」〈万一九〇四〉「春の雨はいやしき降るに梅の花いまだ咲かなくいと若みかも」〈万七八六〉(後略)
 

作者:柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)について

生没年未詳。柿本人麻呂の生まれた年も死んだ年もよくわかっていません。また、家系なども未詳です。

『万葉集』に80首以上の歌が見られ、天武(てんむ)・持統(じとう)・文武(もんむ)の3代の天皇の時代(673~707年頃)に和歌をよむことで活躍したと思われます。

『万葉集』の表記は「人麻呂」ですが、後の時代には「人麿」「人丸」などと書かれました。

天武・持統・文武

天武・持統・文武

 

三十六歌仙(さんじゅうろっかせん)

人麻呂は三十六歌仙の一人に選ばれています。

三十六歌仙とは、平安時代の半ばに藤原公任(ふじわらのきんとう)(966~1041年)がつくった『三十六人集』(『三十六人撰』とも言う)にもとづく36人のすぐれた歌人のことです。

人麿・貫之・躬恒・伊勢・家持・赤人・業平・遍昭・素性・友則・猿丸大夫・小町・兼輔・朝忠・敦忠・高光・公忠・忠岑・斎宮女御・頼基・敏行・重之・宗于・信明・清正・順・興風・元輔・是則・元真・小大君・仲文・能宣・忠見・兼盛・中務

人麿・貫之・躬恒・伊勢・家持・赤人・業平・遍昭・素性・友則・猿丸大夫・小町・兼輔・朝忠・敦忠・高光・公忠・忠岑・斎宮女御・頼基・敏行・重之・宗于・信明・清正・順・興風・元輔・是則・元真・小大君・仲文・能宣・忠見・兼盛・中務

 

百人一首の現代語訳と文法解説はこちらで確認

こちらは小倉百人一首の現代語訳一覧です。それぞれの歌の解説ページに移動することもできます。

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あきぜにぎりすはるぎて
あきたのこころてにはるよの
ぬればこころかたの
あさふのひとをひといさ
あさぼらけたびはひとをし
あさぼらけすてふくからに
ひきのやこのととぎす
あはしまびしさにみかもり
あはともぶれどみかはら
みてのつゆにばやな
あふとのみのえののくの
あまかぜをはやみしのの
あまはらさごのらさめの
あららむのおとはぐりあひて
あらふくのうらにしきや
ありけのわかれともに
ありやまのをよらはで
しへのをかもむぐら
いまむとちぎりきしやまはに
いまただちぎりやまとは
りけるやぶるされば
みわびみればのとを
やまにばねのよのなか
にきくながらむよのなか
おほやまながへばすがら
おほなくなげつつこめて
ひわびなげとてわがほは
とだにのよはわがでは
さぎのなにおはばわするる
かぜよぐなにはわすじの
かぜいたみなにはわたのはら
きみがためはなそふわたのはら
きみがためはないろはぬれば
らやま

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