51~60番歌

百人一首の意味と文法解説(55)滝の音は絶えて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞こえけれ┃大納言公任

小倉百人一首解説:和歌の現代語訳・古文単語の意味・文法解説・品詞分解-55

投稿日:2018年3月12日 更新日:

滝の音は絶えて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞こえけれ

小倉百人一首から、大納言公任の和歌に現代語訳と品詞分解をつけて、古文単語の意味や、助詞および助動詞の文法知識について整理しました。

また、くずし字・変体仮名で書かれた江戸時代の本の画像も載せております。

ふだん我々が使っている字の形になおした(翻刻と言う)ものと、ひらがなのもとになった漢字(字母)も紹介しておりますので、ぜひ見比べてみてください。

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原文

ogura-hyakunin-isshu-55

百人一首(55)滝の音は絶えて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞こえけれ

画像転載元
国立国会図書館デジタルコレクション
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541162

翻刻(ほんこく)(普段使っている字の形になおす)

hyakuni-isshu-honkoku-55

百人一首(55)滝の音は絶えて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞こえけれ

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釈文(しゃくもん)(わかりやすい表記)

大納言公任
滝の音は 絶えて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ
 

字母(じぼ)(ひらがなのもとになった漢字)

hyakunin-isshu-jibo-55

百人一首(55)滝の音は絶えて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞こえけれ

現代語訳(歌意)・文法解説

※大覚寺(だいかくじ)に人々がたくさんやってきて、古い滝を歌によみましたとき、よんだ歌。

滝の流れ落ちる音は、聞えなくなってから長い時間が経ったが、その評判は世間に流れて今も知られている。

滝の音は絶えて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞こえけれ

滝の音は絶えて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞こえけれ

※係助詞「こそ」は已然形で結びます。係り結びは「ぞ・なむ・や・か=連体、こそ=已然形」とまとめて覚えます。その他の助詞の解説は「古典の助詞の覚え方」をご覧ください。また、助動詞の活用や接続は「古典の助動詞の活用表の覚え方」にまとめましたので、あわせてご覧ください。

係助詞:ぞ・なむ・や・か・こそ

係助詞:ぞ・なむ・や・か・こそ

※長保(ちょうほう)元年(999)九月十二日、藤原道長(みちなが)嵯峨遊覧の折の歌。(『新日本古典文学大系 拾遺和歌集』小町谷照彦、岩波書店、1990年、127ページ)
 

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語釈(言葉の意味)

※特記のないかぎり『岩波 古語辞典 補訂版』(大野晋・佐竹昭広・前田金五郎 編集、岩波書店、1990年)による。
 

詞書(ことばがき)

※詞書とは、和歌のよまれた事情を説明する短い文のことで、和歌の前に置かれます。

大学寺に人々あまたまかりたりけるに、古き滝を詠(よ)み侍(はべり)ける(※大覚寺に人々がたくさんやってきて、古い滝を歌によみましたとき、よんだ歌。)

※注
○大学寺
大覚寺。嵯峨天皇(さがてんのう)の御所があった所。その滝殿は景勝を誇ったが、この頃は既に無かった。

※詞書と注の引用は『新日本古典文学大系 拾遺和歌集』(127ページ)によります。
 

絶ゆ

●た・え
〘下二〙
①中途で切れる。「設弦(うさゆづる)―・えば継がむを」〈紀歌謡四六〉。「草枕旅の丸寝の紐―・えば」〈万四四二〇〉
 

な【名】

①物・人・観念を他と区別するために呼ぶ語。まなえ。「酒の―聖(ひじり)と負ほせし古への大き聖の言(こと)のよろしさ」〈万三三九〉。「妹が―呼びて袖そ振りつる」〈万二〇七〉
③世間への聞え。評判。「妹が―も我が―も立たば惜しみこそ」〈万二六九七〉
 

きこゆ

●きこ・え【聞え】
一〘下二〙
➊《聞キの自発・可能・受身の形。エは自然にそうなる意》
①(自然に)耳に入る。「恋ふれども〔恋人ノ〕ひと声だにもいまだ―・えず」〈万四二〇九〉
②(人人の)耳に入る。広く評判である。「神の如(ごと)―・ゆる滝の白浪の」〈万三〇一五〉。「これむかし名だかく―・えたるところなり」〈土佐二月九日〉
 

百人一首の現代語訳と文法解説はこちらで確認

こちらは小倉百人一首の現代語訳一覧です。それぞれの歌の解説ページに移動することもできます。

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あきぜにぎりすはるぎて
あきたのこころてにはるよの
ぬればこころかたの
あさふのひとをひといさ
あさぼらけたびはひとをし
あさぼらけすてふくからに
ひきのやこのととぎす
あはしまびしさにみかもり
あはともぶれどみかはら
みてのつゆにばやな
あふとのみのえののくの
あまかぜをはやみしのの
あまはらさごのらさめの
あららむのおとはぐりあひて
あらふくのうらにしきや
ありけのわかれともに
ありやまのをよらはで
しへのをかもむぐら
いまむとちぎりきしやまはに
いまただちぎりやまとは
りけるやぶるされば
みわびみればのとを
やまにばねのよのなか
にきくながらむよのなか
おほやまながへばすがら
おほなくなげつつこめて
ひわびなげとてわがほは
とだにのよはわがでは
さぎのなにおはばわするる
かぜよぐなにはわすじの
かぜいたみなにはわたのはら
きみがためはなそふわたのはら
きみがためはないろはぬれば
らやま

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都内の私立大学 文学部国文学専攻出身
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