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芥川龍之介『蜘蛛の糸』あらすじと読書感想文(シンプルな書き方です)

芥川龍之介『蜘蛛の糸』あらすじと読書感想文(シンプルな書き方です)

投稿日:2018年1月10日 更新日:

 芥川龍之介『蜘蛛の糸』の簡単なあらすじと読書感想文の見本です。感想文は1635字ほど書きました。高校生や中学生の方は、この感想文の例を参考にして書き方を工夫してみてください。

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目次

『蜘蛛の糸』の簡単なあらすじ

 『蜘蛛の糸』のあらすじは次の通りです。

 極楽の蓮池のふちを散歩していた御釈迦様が池の底をのぞきこむと、極楽の下にある地獄の様子が見える。そこには、殺人や放火の罪を犯した大泥棒の犍陀多という男がいた。犍陀多が生前に行った唯一の良いこと、それは蜘蛛の命を救ったことであった。それを思い出した御釈迦様は犍陀多を救ってやろうと極楽から地獄の底へ蜘蛛の糸を垂れる。地獄から逃れようと犍陀多は蜘蛛の糸をよじ登るが、ふと下を見てみると、大勢の罪人たちが犍陀多と同じように蜘蛛の糸を登ってくることに気づく。糸の切れることを恐れた犍陀多が彼らに向かって、糸は自分だけのものであるから下りろと叫んだ途端、糸は切れて犍陀多は地獄の底へ落ちてしまった。

 以上のあらすじをふまえて書きます。

●読書感想文の書き方を解説した記事はこちら。簡単に書くコツがあります。

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『蜘蛛の糸』感想文の例

 この物語は非常に単純な構成の短編である。主な登場人物は御釈迦様と犍陀多の二人のみで、時間の経過も朝から昼前の非常に短い間の出来事である。しかし、短い中にも運命のはかなさや、人間の浅ましさが凝縮されており、読者に訴えかける力の非常に強い作品であると言えるだろう。私はこの作品を読み、自分が不利益を被る危険に直面した時に、果たして他人を思いやる心の余裕を持つことができるだろうか、という疑問を覚えるとともに、人が良い働きをするのか、反対に悪い働きをするのかは、当人の持つ一貫した心の性質に起因するというよりも、むしろその時々の気持ちの変化から起こるある種の気まぐれによってしばしば左右されるのだ、という考えを持った。
 極楽の蓮池のふちを散歩していた御釈迦様が池の底をのぞきこむと、極楽の下にある地獄の様子が見える。そこには、殺人や放火の罪を犯した大泥棒の犍陀多という男がいた。犍陀多が生前に行った唯一の良いこと、それは蜘蛛の命を救ったことであった。それを思い出した御釈迦様は犍陀多を救ってやろうと極楽から地獄の底へ蜘蛛の糸を垂れる。地獄から逃れようと犍陀多は蜘蛛の糸をよじ登るが、ふと下を見てみると、大勢の罪人たちが犍陀多と同じように蜘蛛の糸を登ってくることに気づく。糸の切れることを恐れた犍陀多が彼らに向かって、糸は自分だけのものであるから下りろと叫んだ途端、糸は切れて犍陀多は地獄の底へ落ちてしまった。
 「極楽の蓮池のふちを、独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃ」った御釈迦様が犍陀多を助けてやろうと思いついたのは単なる思いつきであり、暇つぶしに過ぎない。御釈迦様のその姿は、蜘蛛を助けようと思いついた犍陀多の姿に重なる。人を殺める罪を犯した犍陀多が、小さな虫を哀れに思ってその命を救おうと思った背景に、深い理由などないだろう。その行為の裏にあるのは彼の心に偶然沸き起こった単純な思いつきである。その点で、御釈迦様も犍陀多と同様である。良い香りの漂う極楽の池のそばをぶらぶら歩きながら時間をつぶしていた御釈迦様にとって、犍陀多を地獄から救うことは単なる暇つぶしに過ぎない。蜘蛛の糸が切れて血の池に沈んでいった犍陀多を見届けた御釈迦様は、「悲しそうな御顔」を見せたものの、再び「ぶらぶら御歩きになり始め」る。大罪人の犍陀多が地獄の底へ帰っていったところで、極楽には何の影響も及ぼさないのである。
 物語の中で強調されるのは犍陀多の浅ましさである。蜘蛛の糸をよじ登る犍陀多が考えるのは自分自身のことばかりである。しかし、彼が独善的になる一因は地獄の環境にもあるのではないだろうか。もちろん、犍陀多が地獄に落とされたのには相応の理由がある。生前に罪を犯したために、その報いとして地獄にやってきたのである。しかし、自らの身に及ぶ苦痛に耐えしのぶだけで精一杯になってしまう地獄の過酷な暮らしは、他人の気持ちを思いやる心のゆとりを犍陀多から奪ってしまったとも考えられる。そもそも大罪人である犍陀多が、地獄の底で針の山や血の池などの様々な責苦に苛まれることによって、彼が備えていた独善的な側面は増長されてしまったのだろう。
 そして、犍陀多の浅ましさ以上に印象に残るのは運命のはかなさである。蜘蛛の糸が切れた原因は、「自分ばかり地獄からぬけ出そうとする、犍陀多の無慈悲な心」による報いであるとされる。しかし、犍陀多が糸の切れることを恐れて、下から追って来る罪人たちを追い払おうとしたのは自然な心理と言える。気ままな御釈迦様の暇つぶしに翻弄される犍陀多の運命は、気の毒にも感じられる。犍陀多が地獄で蜘蛛の糸をつかむことができたのは、御釈迦様が偶然起こした気まぐれである。犍陀多が幸運を手中に収めることができなかったのは不幸である。生前に蜘蛛の命を救う優しさも見せた犍陀多が、悪行に手を染め地獄に落とされることになってしまった背景に思いをはせると、人の運命がいかにはかないものであるかが理解できる。

(1635字)

感想文をスラスラ書くコツ
 

まとめ

 犍陀多はもちろん極悪人なのですが、お釈迦様もひどい人だと感じられて、それがこの作品の面白さだと思います。

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