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太宰治『走れメロス』あらすじと読書感想文(シンプルな書き方です)

太宰治『走れメロス』あらすじと読書感想文(シンプルな書き方です)

投稿日:2018年1月10日 更新日:

 太宰治『走れメロス』の簡単なあらすじと読書感想文の見本です。感想文は1796字ほど書きました。高校生や中学生の方は、この感想文の例を参考にして書き方を工夫してみてください。

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目次

『走れメロス』の簡単なあらすじ

 『走れメロス』のあらすじは次の通りです。

 妹の結婚式の準備のためにシラクスという町に買い物にやってきた牧人のメロスは、その町の王ディオニスが次々に人を殺すことに憤り、王に面会する。人の心を信じることなどできないと言う王に対して、メロスは三日間のうちに、村に帰り妹に結婚式を挙げさせ、そして、処刑されるために再び王のもとに戻ってくる、戻らなければ友人のセリヌンティウスを自らの代わりに処刑してよい、と約束する。そして、村に帰り妹の結婚式を見届けたメロスは、約束の時間が迫るなか、友人を救い暴君ディオニスの邪心を打ち砕くため、シラクスへの道を走り抜ける。数々の障害を乗り越えたメロスは、ついに処刑台のセリヌンティウスのもとへたどりつき、ディオニスに友情と信頼の勝利を見せつけるのである。

 以上のあらすじをふまえて書きます。

●読書感想文の書き方を解説した記事はこちら。簡単に書くコツがあります。

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『走れメロス』感想文の例

 この作品は単なる英雄譚ではない。常に正しくひたすら強い正義の味方ではなく、時に油断し、時に思い悩む人間らしい英雄の姿が描かれている。
 妹の結婚式の準備のためにシラクスという町に買い物にやってきた牧人のメロスは、その町の王ディオニスが次々に人を殺すことに憤り、王に面会する。人の心を信じることなどできないと言う王に対して、メロスは三日間のうちに、村に帰り妹に結婚式を挙げさせ、そして、処刑されるために再び王のもとに戻ってくる、戻らなければ友人のセリヌンティウスを自らの代わりに処刑してよい、と約束する。そして、村に帰り妹の結婚式を見届けたメロスは、約束の時間が迫るなか、友人を救い暴君ディオニスの邪心を打ち砕くため、シラクスへの道を走り抜ける。数々の障害を乗り越えたメロスは、ついに処刑台のセリヌンティウスのもとへたどりつき、ディオニスに友情と信頼の勝利を見せつけるのである。
 まず、印象的だったのは、メロスの傲慢な一面である。「人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ」と考えるメロスは、シラクスの王ディオニスに自らの信念を押しつけようとする。自らを「偉い男」だと信じ、自分の考えが正しいと思い込んでいるのである。たしかに、権力を笠に着て次々に殺人を犯すディオニスは悪人かもしれないが、自らの信念を押し通すために友人を巻き込むのメロスの行動は身勝手だと思わずにはいられない。メロスが約束を破れば処刑される運命にあるセリヌンティウスは「無言で首肯き、メロスをひしと抱きしめた」が、内心は不安と戸惑いに満たされていたのではないだろうか。いくら旧知の仲でも、二年ぶりに再会した友人に無理難題を押し付けるのは、信頼の気持ちというよりも、むしろ甘い見通しから引き起こされる行動であり、メロスの身勝手な一面が浮き彫りになる場面である。その後も、妹の結婚式の日時を明日に早めてほしいと妹の花婿に頼み込んで無理やり承諾させたり、約束の時間間際にシラクスの町に駆け込んだ時には往来の犬を蹴とばしたりするなど、自分勝手なメロスは罪のないものに迷惑をかけている。
 また、メロスはマイペースな一面も見せる。妹の結婚式を終えたあと、友人のためにすぐさまシラクスへ向かわなければならないはずだが、一晩ぐっすりと眠りこむ。翌朝起床すると、「これからすぐに出発すれば、約束の刻限までには十分間に合う」と余裕の態度を見せ、「そんなに急ぐ必要も無い」と考えてゆっくり歩いていくのである。ところが、増水した川を渡るのに苦労したり、山賊退治に時間を追われたりしているうちに、約束の時間に遅れそうになってしまい、時間管理能力の欠如を露呈することになる。時間を見越して早めの対応を心掛けるのが一般的な心構えであるが、楽しく過ごした時間の余韻に浸り未練がましい気持ちになるのも自然な感情である。友人の生死が係るときでさえも、メロスが妹の結婚式の余韻に浸り村を去りがたく思うのは、愚かしいが人間らしい行動だと言えるだろう。
 そして、最も印象的だったのが、シラクスへの道中疲れ切ったメロスが、期限内の到着を諦めそうになる場面である。メロスは「正義だの、信実だの、愛だの、考えてみれば、くだらない」と自らの信条を否定し、しばしの間眠り込んでしまう。そして、読者はここで、自らの甘い見通しで約束を破ろうとしているメロスに対して、「走れ、メロス」と叱りつけたい衝動に駆られるだろう。物語の題名に「走れ」という命令形の言葉が含まれているのは、物語の主人公が完璧な英雄ではなく、弱さや脆さを抱えている人間らしい存在だからではないだろうか。メロスは読者にとって、応援したくなったり、叱咤したくなったりするような人物なのだろう。
 甘い見通しを立てて困難に陥ったり、身勝手にふるまったりするメロスを見ていると、私自身の行動も振り返らずにはいられない。この物語を読むとメロスを批判したくなる気持ちが湧き起こってくるが、はたして私はメロスを批判できる立場にいるのだろうか。勝手な行動をとって周りに迷惑をかけていないか、計画は無理なく立てて、場合によっては目標を修正するなど、柔軟な態度をとることができているだろうか。メロスには手本とする一面もあるが、反面教師として見なければならない点もあると思われる。私は特に、メロスの至らない点に注目して自身の行動を見直すきっかけとしたい。

(1796字)

感想文をスラスラ書くコツ
 

まとめ

 メロスの困難を克服する英雄的な側面よりも、あきらめようとしたり周囲の人に迷惑をかけたりする人間らしい側面のほうが印象的でしたので、メロスの行動について具体的にひとつひとつ例を挙げながら書いていく方法をとりました。

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