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太宰治『人間失格』あらすじと読書感想文(シンプルな書き方です)

太宰治『人間失格』あらすじと読書感想文(シンプルな書き方です)

投稿日:2018年2月1日 更新日:

 太宰治『人間失格』の簡単なあらすじと読書感想文の見本です。感想文は1682字ほど書きました。高校生や中学生の方は、この感想文の例を参考にして書き方を工夫してみてください。

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目次

『人間失格』の簡単なあらすじ

 『人間失格』のあらすじは次の通りです。

 東北の資産家の家に生まれた葉蔵は、おさないころから道化を演じて本当のことを言わない性格だった。成績優秀な学生だったが、東京にやってきて高等学校に入学したのち、画塾で堀木という男と出会い一緒に遊び歩くようになり、次第に学業から遠ざかっていった。やがて、喫茶店で出会った女と心中事件を起こし、女を死なせる。一人助かった葉蔵は退学し、ヒラメという骨董屋の男のもとに居候しながら漫画を描いて生計を立てていたが家出して、出版社に勤めるシヅ子のもとで生活をはじめる。しかし、酒飲みの自分が彼女の幸福を邪魔する存在だと感じ、そこから逃れて、こんどはあるバーのマダムのもとで暮らしはじめる。マダムのもとで自分を優しく受け入れる人々に出会い、世間はそれほどおそろしいものではないと感じられるようになっていった。やがて、ヨシ子という女に出会って、彼女が人を疑うことの知らない純粋な人であることにひかれて内縁関係になる。人間らしい生活ができるかもしれないという希望を抱くが、ヨシ子の不倫事件によってその希望は打ち砕かれ、自殺未遂事件を起こす。そして、薬物中毒になり精神病院に収監され、病院を出たのちは故郷に帰り、兄から与えられた町はずれの家で廃人同様の生活を送るのだった。

 以上のあらすじをふまえて書きます。

●読書感想文の書き方を解説した記事はこちら。簡単に書くコツがあります。

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『人間失格』感想文の例

 東北の資産家の家に生まれた葉蔵は、おさないころから道化を演じて本当のことを言わない性格だった。成績優秀な学生だったが、東京にやってきて高等学校に入学したのち、画塾で堀木という男と出会い一緒に遊び歩くようになり、次第に学業から遠ざかっていった。やがて、喫茶店で出会った女と心中事件を起こし、女を死なせる。一人助かった葉蔵は退学し、ヒラメという骨董屋の男のもとに居候しながら漫画を描いて生計を立てていたが家出して、出版社に勤めるシヅ子のもとで生活をはじめる。しかし、酒飲みの自分が彼女の幸福を邪魔する存在だと感じ、そこから逃れて、こんどはあるバーのマダムのもとで暮らしはじめる。マダムのもとで自分を優しく受け入れる人々に出会い、世間はそれほどおそろしいものではないと感じられるようになっていった。やがて、ヨシ子という女に出会って、彼女が人を疑うことの知らない純粋な人であることにひかれて内縁関係になる。人間らしい生活ができるかもしれないという希望を抱くが、ヨシ子の不倫事件によってその希望は打ち砕かれ、自殺未遂事件を起こす。そして、薬物中毒になり精神病院に収監され、病院を出たのちは故郷に帰り、兄から与えられた町はずれの家で廃人同様の生活を送るのだった。
 周囲の視線に敏感に反応する葉蔵の心理は、彼の半生を通して一貫している。彼は、自己の内面を偽り心にもないお世辞を言いあって明るく朗らかに暮している世の中の人間たちを理解できない。尊敬を集めることを嫌い、欲しいものを問われても何も欲しくないと考える。つねに人間に対して恐怖心を抱き、道化を演じて人を笑わせることによって人から好かれようとするのである。
 葉蔵は、利己心や個人の幸福というものが理解できなかったのだが、あるとき堀木が「これ以上は、世間が、ゆるさないからな」と口にしたとき、世間について考えをめぐらせた結果、彼の心境に変化が訪れる。彼は、世間を人間の複合体と考えてただ漠然と恐れていたのだが、その考え方に疑問を覚え、そして、世間というのは人間の集合体ではなく、目の前にいる個人に過ぎないと思いあたり、「いままでよりは多少、自分の意志で動く事が出来るように」なった。ただ人間を恐れて道化を演じるのではなく、自らの幸福を追求しようとする気持ちが少しばかり芽生えたのである。葉蔵がシヅ子のもとを離れたのは、彼が幸福とはいったい何なのかを多少理解できるようになり、自分の都合ばかり押し通して酒を飲んでばかりいる自らを恥じたからだ。そして、バーのマダムのもとで店の常連たちからもやさしく扱われて暮らすうちに、世間は恐ろしくないという考えを深める。バーに集まる「個人」に受けいれられ、葉蔵にとっての「世間」が形成されていたのだ。葉蔵はそのような環境の中でヨシ子と出会い、人間らしいものになれるのではないかと期待を膨らませたが、けっきょくその希望も潰えてしまう。幸福を求める試みは失敗に終わったのだ。葉蔵の姿は個人の幸福と世間との対立を象徴し、それらが並立しえないこと、利己心は世間の阻害によって打ち破られることを示している。
 葉蔵は自らの不幸が世間に抗議しても理解されないと考える。たしかに、人々の同情を容易に集める不幸もあるだろう。たとえば、病気や事故などがそれにあてはまる。個人の過失によらない不幸は、しかたないこと、さけられないことだと見なされ、それが望ましいことかはさて置き、世間の同情を呼ぶこともしばしばだ。ところが、葉蔵の不幸は世間から理解されがたい性質を持っている。数々の不行跡をくり返し現在の境遇に至ったのだ、と解釈され、見通しの甘さや努力の欠如を指摘されることだろう。葉蔵は世間と対立しようとするのではなく、けっきょく自分が悪いだと考える。彼が陥った境遇は非常に哀れである。
 マダムの「あのひとのお父さんが悪いのですよ」という一言は納得できる。葉蔵がより家庭的で温かい幼少期を過ごすことができたなら、彼は不運な人生を送らずに済んだかもしれない。彼の人を恐れる性格は幼少のころに生まれ、増長していったのだから。

(1682字)

感想文をスラスラ書くコツ
 

まとめ

 暗い物語ですが共感できる人は多いのではないかと思います。時系列を追いながら自らの内面を述べていく手記の形で書かれていますので、読みやすい作品でもあります。感想文のテーマとして扱うのに適していると思います。

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