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カフカ『変身』あらすじと読書感想文(シンプルな書き方です)

カフカ『変身』あらすじと読書感想文(シンプルな書き方です)

投稿日:2018年1月24日 更新日:

 カフカ『変身』の簡単なあらすじと読書感想文の見本です。感想文は1619字ほど書きました。高校生や中学生の方は、この感想文の例を参考にして書き方を工夫してみてください。

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目次

『変身』の簡単なあらすじ

 『変身』のあらすじは次の通りです。

 勤勉な外交販売員であるグレーゴル・ザムザがある朝自宅で目を覚ますと自分の体が一匹の巨大な虫に変身していることに気づく。人の言葉をしゃべることもできず、体も思うように動かすことができないが、次第に自らが虫であることになれていく。同居する家族からは邪魔者あつかいされてしまう。妹はグレーゴルの世話をつづけていたが、しだいに彼に対しても不満をつのらせていく。グレーゴルは父親の投げたりんごによるけがが原因となり体の自由をうばわれて、ついに死んでしまう。残された家族たちは息苦しい暮らしから解放されたことを喜び気晴らしにでかけ、父母は成長していく娘の姿に大きな希望を見出すのであった。

 以上のあらすじをふまえて書きます。

●読書感想文の書き方を解説した記事はこちら。簡単に書くコツがあります。

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『変身』感想文の例

 自らを理解してくれる他者を持っている私は幸運に恵まれているのだと実感した。もしも、自分がある日とつぜん異形の姿に変わってしまったら、周囲の人々はどのような反応を見せるだろうか。恐ろしい想像である。
 勤勉な外交販売員であるグレーゴル・ザムザがある朝自宅で目を覚ますと自分の体が一匹の巨大な虫に変身していることに気づく。人の言葉をしゃべることもできず、体も思うように動かすことができないが、次第に自らが虫であることになれていく。同居する家族からは邪魔者あつかいされてしまう。妹はグレーゴルの世話をつづけていたが、しだいに彼に対しても不満をつのらせていく。グレーゴルは父親の投げたりんごによるけがが原因となり体の自由をうばわれて、ついに死んでしまう。残された家族たちは息苦しい暮らしから解放されたことを喜び気晴らしにでかけ、父母は成長していく娘の姿に大きな希望を見出すのであった。
 物語の結末は救いがなく、グレーゴルが見舞われた不運がいかに理不尽であるかを痛感させられる。グレーゴルがなぜ虫に変身してしまったのかが明かされることはない。彼が何か悪いことをして、その報いによって虫の姿に変えられるのではなく、何の理由も前触れもなく彼は虫に変身してしまったのである。彼が勤勉な会社員であること、家族の借金を返すために尽くしていること、妹の学費を捻出しようと努力していることなどが述べられており、彼が虫になるという不幸をこうむらなければならない理由を見出すことは難しい。彼の体験は、病気や事故などの人をとつぜんおそう不幸と同じようなことである。もちろん日々の生活の不注意が病気や事故を招く要因になることはあるが、あらがうことのできない不幸は多い。グレーゴルはそのようなあらがいがたい不幸に見舞われてしまった。不運だったのである。
 グレーゴルが見舞われた不幸は、その家族にとっても不幸であった。一家の稼ぎ頭が働くことができなくなってしまい、経済的な問題におそわれる。そして、気味の悪い虫の世話をしなければならないという心理的な負担も抱えることになった。ところが、グレーゴル自身もその家族も、この不幸を解決しようとしない。その点が不思議である。もちろん、人が虫の姿に変身するのは前代未聞であり、その対処方法などだれにもわからないだろう。わからないから途方に暮れるのは自然な反応である。しかし、虫から人間の姿に戻る努力や工夫はいっさい見られない。祈祷やおはらいなど神に祈ることもなく、医者や科学者に見せるなどの科学的な解決法を試すこともない。グレーゴルは虫であることを受けいれ、家族は困惑しながらもおとなしく虫と同居しつづけるのである。グレーゴルは次第に虫になった自らの体を自由に動かせるようになり、また、虫として快適に過ごす方法も見つけるようになる。グレーゴルは天井や壁を気持ちよくはいまわり、腐ったものを好んで食べる。妹はグレーゴルが部屋のなかを自由にはいまわれるように家具をとりのぞく。人々の暮らしには緊張感が欠けているように感じられ、非常に奇妙な印象を受ける。
 けっきょく、家族は虫になったグレーゴルを受けいれることはできなかった。家族のなかで唯一彼に理解を示していた妹も、「あたしたちはこれを振り離す算段をつけなくっちゃだめです」と我慢の限界を口にする。かつてグレーゴルの会社勤めの収入によって家族の暮らしが成り立っていたことは、家族の頭からすっかり忘れ去られている。家族たちはそれぞれ仕事を見つけ、新たな生活がはじまっていた。グレーゴルの存在は彼らにとって重い足かせなのである。家族の我慢はたしかに限界だったのかもしれないが、それでもやはり彼らのグレーゴルに対する態度は冷淡にすぎると思われる。彼らがもう少しグレーゴルに寛容な心を持ってくれたら、と考えてしまう。虫の姿になった不幸なグレーゴルにとって救いとなるのは家族の理解以外にないはずだからである。

(1619字)

感想文をスラスラ書くコツ
 

まとめ

 人間が虫の姿に変わってしまうという奇妙な現象が、いったい何を意味しているのか、人によってとらえ方はさまざまだと思います。グレーゴルに対する家族たちの反応から、介護や引きこもりの問題を連想することもできます。その点に注目して感想文が書けるかもしれません。

※本文引用は『変身』(カフカ著、高橋義孝訳、新潮社、昭和27年)によります。

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