観劇記

【歌舞伎の白雪姫】坂東玉三郎「本朝白雪姫譚話」(2019年12月歌舞伎座公演)感想・解説

「十二月大歌舞伎」夜の部で上演される『本朝白雪姫譚話(ほんちょうしらゆきひめものがたり)』

投稿日:2019年12月9日 更新日:

2019年12月歌舞伎座公演・夜の部は、坂東玉三郎演出・主演による「本朝白雪姫譚話」です。グリム童話「白雪姫」を元にした新作歌舞伎ですが、モーツァルト作曲の歌劇(※オペラ)「魔笛」や、「阿古屋」などの古典が下敷きとなっています。

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●玉三郎『本朝白雪姫譚話』

 

新作歌舞伎「本朝白雪姫譚話」の各セリフの典拠

十六年は一昔

「一谷嫩軍記~熊谷陣屋」。

息子、小次郎を失った熊谷直実が、花道の引込みにて「十六年は一昔(ひとむかし)。夢だ、夢だ。」と言うセリフから。

 

たとえて言わば雪と墨

●「助六由縁江戸桜」。

揚巻が意休に向かって悪態を次々と述べ立てるところから。

もし意休さん、お前と助六さん、こう、並べてみるときは、こちらは立派な男ぶり。こちらは、意地の悪そうな……。たとえて言わば、雪と墨。

 
●「壇浦兜軍記~阿古屋」。

阿古屋が重忠と岩永を比べて言うところから。

同じように座に並んで、殿さま顔してござれども、生き方は雪と墨。

 

箏の演奏

「壇浦兜軍記~阿古屋」。

阿古屋の箏の演奏の一部が用いられる。

 

七人の妖精の合唱(1)

原曲は、モーツァルト作曲、歌劇「魔笛」。

第一幕、パパゲーノのアリア「さても、おいらは鳥刺し稼業」から。

●歌詞

Der Vogelfänger bin ich ja,
Stets lustig, heisa! hopsasa!
Der Vogelfänger ist bekannt
Bey Alt und Jung im ganzen Land.
Weiß mit dem Locken umzugeh’n,
Und mich aufs Pfeifen zu versteh’n.
Drum kann ich froh und lustig sein;
Denn alle Vögel sind ja mein. (pfeift.)
*
* *
Der Vogelfänger bin ich ja,
Stets lustig, heisa! hopsasa!
Der Vogelfänger ist bekannt
Bey Alt und Jung im ganzen Land.
Ein Netz für Mädchen möchte ich;
Ich fing’ sie dutzendweis für mich.
Dann sperrte ich sie bey mir ein,
Und alle Mädchen wären mein.

※引用:OperaGlass “Die Zauberflöte” http://opera.stanford.edu/Mozart/Zauberflote/

●日本語訳

俺は鳥刺し いつも陽気に ハイサ ホプサッサ
俺のことは老いも若きも 国中みんな知っている
おびき寄せるのも 笛を吹くのも うまいもの
楽しく陽気なもんだ 鳥はみんな俺のものだから

俺は鳥刺し いつも陽気に ハイサ ホプサッサ
俺のことは老いも若きも 国中みんな知っている
娘を捕らえる網が欲しいなあ 1ダース捕まえてみたい
自分のそばに閉じ込めりゃ 娘はみんな俺のもの

娘がみんな 俺のものなら 砂糖の山と交換だ
俺が一番好きな娘には その砂糖を全部やる
娘が俺にキスしてくれたら 娘は女房 俺は亭主
彼女を俺のそばで 子供のように寝かしつけてやるんだ

※引用:「モーツァルト:歌劇《魔笛》 [DVD]」山瀬次男の日本語字幕より

 

七人の妖精の合唱(2)

原曲は、モーツァルト作曲、歌劇「魔笛」。

第二幕、ザラストロのアリアと合唱「おお、イージスとオジリスよ」から。

●歌詞

O Isis und Osiris schenket
Der Weisheit Geist dem neuen Paar!
Die ihr der Wandrer Schritte lenket,
Stärkt mit Geduld sie in Gefahr —
Laßt sie der Prüfung Früchte sehen.
Doch sollten sie zu Grabe gehen,
So lohnt der Tugend kühnen Lauf,
Nehmt sie in euern Wohnsitz auf.

※引用:OperaGlass “Die Zauberflöte” http://opera.stanford.edu/Mozart/Zauberflote/

●日本語訳

おお イシスとオシリスの神よ
彼らに英知の心を与え給え
さまよう者達の 歩みを導き給う神よ
彼らを危難のときに 忍耐強く鍛え給え!
彼らを危難のときに 忍耐強く鍛え給え!

彼らに試練の成果を見させ給え
もし 彼らが死すべき定めならば
その徳性の勇気ある歩みに報い
彼らをあなたの住まいに迎え給え!
彼らをあなたの住まいに迎え給え!

※引用:「モーツァルト:歌劇《魔笛》 [DVD]」山瀬次男の日本語字幕より

 

幕切れの音楽

原曲は、モーツァルト作曲、歌劇「魔笛」。

第二幕、合唱「勇気ある者が勝利を得る」から。

●歌詞

Es siegte die Stärke, und krönet zum Lohn
Die Schönheit und Weisheit mit ewiger Kron’.

※引用:OperaGlass “Die Zauberflöte” http://opera.stanford.edu/Mozart/Zauberflote/

●日本語訳

勇気ある者が勝利を得る
美と英知がその報いとして
永遠の冠を彼らに授ける!

※引用:「モーツァルト:歌劇《魔笛》 [DVD]」山瀬次男の日本語字幕より

 

歌舞伎「白雪姫」の感想

「本朝白雪姫譚話」は、長唄や箏の演奏などを取り入れた音楽劇に仕立てられている。

七人の妖精を演じる子役たちの合唱および芝居に活気があって良かったと思う。彼らはおそらく、「歌舞伎アカデミー こども歌舞伎スクール 寺子屋」で演技指導を受けた子役と思われるが、歌舞伎の家に生まれた、いわゆる御曹司たちよりも、よほど良い芝居をする。今年の「髪結新三」の丁稚長松で、覇気のない芝居を見せた子役は、彼らを見ならって稽古に精を出してほしい。

白雪姫を演じる玉三郎の出番が少なかったのがやや不満。今回も演出家としての役割が中心だった。ただ、玉三郎が演出を務めた「幽玄」(2018年)、「二人静」(2019年)などの新作が、能の要素を多く取り入れた演目だったのに対して、今回の「白雪姫」は、歌舞伎の音楽やセリフに軸足を置いた舞台だったので、個人的には気に入っている。歌舞伎を見るために歌舞伎座へ行くのだから、「歌舞伎らしい」舞台が見たいと思うのは当然だ。

玉三郎以外では、児太郎が、狂乱する野分の前を上手に演じていた。また、獅童は出番が少なかったものの、さすがに良い芝居をしていたと思う。

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