2019年の六月歌舞伎座公演、夜の部「月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと) 風雲児たち」を見ました。劇評というほどのものではありませんが、感想とあらすじを書いておきます。
「三谷歌舞伎・風雲児たち」基本情報
あらすじ
江戸時代の天明2(1782)年、商人の大黒屋光太夫(だいこくやこうだゆう)は海上輸送の際に遭難し、乗組員たちとともにロシア東部に漂着します。日本への帰国をめざし、様々な困難を乗り越える、という内容です。
おもなキャスト
解説(口上?) 尾上松也
大黒屋光太夫 松本幸四郎
乗組員、庄蔵/ロシアの女帝、エカテリーナ(二役) 市川猿之助
乗組員、新蔵 片岡愛之助
乗組員、磯吉 市川染五郎
乗組員、小市 市川男女蔵(おめぞう)
学者、ラクスマン 八嶋智人
公演時間・終演時間
第一幕 16:30~17:35 (1時間5分)
幕間 30分
第二幕 18:05~18:47 (42分)
幕間 20分
第三幕 19:07~20:12 (1時間5分)
「三谷歌舞伎・風雲児たち」感想
たしかに、面白かったのですが、歌舞伎と別物の演劇だと感じました。雰囲気は俳優祭の出し物に似ているかなと思います。
歌舞伎役者が多数出演しているのに、歌舞伎の要素があまり取り入れられていません。この程度なら、歌舞伎役者を起用する必要はありませんし、歌舞伎座で上演しなくても良いと思います。
そして、この演目が誰に向けて上演されているのか分かりません。いつも歌舞伎を見ている人は物足りなく思うだろうし、歌舞伎になじみのない方は「これが歌舞伎なんだ」と誤解してしまう恐れがあります。
私は歌舞伎を見たことのない知人に、ワンピース歌舞伎の観劇を勧めたことがあります。その知人は実際に観劇してくれて、歌舞伎を面白いと思ってくれたようです。しかし、その後、歌舞伎座に足を運ぶこともなく、歌舞伎を継続的に楽しむ観客にはなりませんでした。アニメや漫画を原作とした舞台を歌舞伎の入口として体験した観客にとって、古典の演目を楽しむには難易度が高くなってしまいがちだと考えられます。
国立劇場が歌舞伎鑑賞教室を毎年開催し、古典を解説・字幕付きで上演することにより、歌舞伎の愛好者を増やそうと努力しているのと対照的に、松竹はとにかく人を集めて歌舞伎座の空席を埋められれば十分と考えているように思われます。漫画やアニメの歌舞伎化を頻繁に行っているのがその証拠です。
明治座や新橋演舞場など、歌舞伎公演ができる劇場があるのだから、松竹は若手俳優を主体とした公演を積極的に行い、若手の育成と新たな観客層の開拓に努めるべきではないでしょうか。
まとめ
歌舞伎を見るのが初めてという方は、三谷歌舞伎はやめておいたほうが良いと思います。もちろん、楽しめるとは思います。しかし、あれを見て「歌舞伎は楽しい」と錯覚するのが良い体験とは思えません。
当ブログでは歌舞伎初心者の方に向けて、楽しめそうな公演を適宜ご紹介しているので、よろしければそちらもご覧ください。
>> 歌舞伎の初心者に向けておすすめの演目を紹介【随時更新】初めて見るなら?