森鷗外『舞姫』の内容をわかりやすく要約しました。テスト対策で時間がない方は、この要約・あらすじで話の概要や結末をご確認ください。参考資料として、物語の舞台となったベルリンの中心市街地の地図や、登場人物の相関図などもご紹介します。
目次
『舞姫』の登場人物・相関図
太田豊太郎(おおたとよたろう)
エリスの恋人。19歳で東大法学科を卒業し、官僚になる。22歳の時、ドイツのベルリンへ出張(留学)する。エリスに出会ったのは25歳前後。語学能力を天方伯爵に認められ、いっしょに日本へ帰ることになる。
エリス
ヴィクトリア座の女優(踊り子)。17歳の頃、父の葬儀費用を払えなくて困っているところを豊太郎に助けられ恋愛関係になる。のちに豊太郎の子を懐妊するが、日本に帰る豊太郎に裏切られたと絶望し発狂する。
相沢謙吉(あいざわけんきち)
豊太郎の友人で、天方伯の秘書官。豊太郎が役所の仕事をクビになった時、新聞社の仕事を紹介した。また、豊太郎の能力を見込んで天方伯に推薦した。
天方伯(あまがたはく)
大臣。豊太郎にドイツ語翻訳の仕事をさせるうち、その能力を評価するようになり、結局、豊太郎を連れて日本へ帰国することになる。
『舞姫』のあらすじ・概要
冒頭:帰国の船内
豊太郎はドイツ滞在を終えて、日本へ帰る船の中にいますが、どうやら元気がない様子です。恋しいエリスをドイツに残し、一人で日本に帰るのですから、元気がないのも当然ですね。
話は豊太郎がドイツで過ごした日々を回想するかたちで進んでいきます。
舞台はドイツのベルリン
豊太郎はベルリンに来てから、法律や政治に関する仕事をまじめにこなしていましたが、しだいに歴史や文学に心がひかれていって勉学がおろそかになり、日本にいる上司との関係も悪くなってしまいます。
ある日、豊太郎が散歩していると、道ばたで泣いている少女が目に入りました。豊太郎が泣いている理由を訊くと、少女は「父の葬式を明日しなければならないのに、お金がありません」と言うので、豊太郎は少女に、持っていた少しのお金と時計をわたしました。
これがきっかけとなって、豊太郎とエリスは頻繁に顔をあわせるようになりました。本を貸したり芸術の話をしたりする関係でしたが、数人のドイツにいる日本人の知り合いが「豊太郎が舞姫とみだらな関係を続けている」と上司に報告したため、豊太郎はクビになってしまいました。
豊太郎は友人の相沢謙吉の紹介で新聞社の仕事につきます。ドイツの政治・文芸を日本の新聞社へ報道する仕事です。また、この頃からエリスと同居し、のちにエリスは妊娠します。
天方伯に気に入られる
ある日、豊太郎のもとへ相沢から、「天方伯が会いたがっている」という知らせが届きます。豊太郎はベルリンのホテルで天方伯と相沢に面会します。表向きはドイツ語を翻訳する仕事の依頼でしたが、相沢の本心は豊太郎をエリスと別れさせ、そして天方伯の秘書官として就職させることでした。
豊太郎は友人に対して「いやだ」と言えない性質なので、エリスと別れることを相沢に約束してしまいました。
その後、天方伯のロシア出張に同行した豊太郎は、通訳として大活躍しました。この活躍から天方伯に気に入られ、「語学だけでも充分使える人材だから、いっしょに日本に帰らないか」と提案されます。この時も豊太郎は抵抗できず、天方伯とともに日本へ帰ることを承知してしまいます。
結末:エリスと豊太郎の別れ
「エリスに何と言ったら良いだろう」と苦悩する豊太郎は、エリスの目の前で何も言えずに気絶します。意識を取りもどしたのは数週間後。相沢から豊太郎が一人で日本に帰ることを聞いたエリスは、目が血走り、頬がこけ、まるで別人のようになってしまいました。
エリスは物を投げたり泣きさけんだりして、医者には治る見込みがないとまで言われました。豊太郎は、相沢は良い友人だけれど、少しばかり恨めしく思うのでした。
『舞姫』の要約(800字以内)
『舞姫』を800字以内で要約すると、以下のようになります。
ある日、クロステル街でエリスという少女に出会う。彼女はヴィクトリア座の女優であったが、亡くなった父親の葬儀費用の工面に困っていた。豊太郎は、彼女の葬儀費用を肩代わりしたことがきっかけで、彼女と手紙のやり取りをするようになる。
しかし、同じく洋行(※留学・出張)していた日本人の仲間たちに悪いうわさをたてられ、それが本国の官長の耳に達して免職(※クビ)の処分を受けてしまう。
困った豊太郎は友人の相沢謙吉のおかげで、ある新聞社の通信員となり政治・学芸の動向を報道する仕事をはじめた。このころからエリス宅に同居するようになり、エリスは懐妊する。
ある日、秘書官の相沢をひきつれてベルリンにやってきた天方大臣に、ある文書のドイツ語翻訳を頼まれる。このことがきっかけで、天方伯がロシアを訪問する時の通訳を任される。
ロシアでの活躍により、天方伯の信頼を得た豊太郎は、本国への帰国に同行することを求められる。ベルリンでエリスとともに暮らすことを考えていた豊太郎は困惑するが、断ることができず、日本への帰国を承諾してしまう。
「エリスに何と言おうか」と思い悩んだ豊太郎は倒れ、数週間、寝込んでしまうが、その間に、エリスは相沢の口から豊太郎と離別しなければならないことを知らされ、狂乱しパラノイア(※偏執病・妄想症)になってしまった。
日本へと帰る船の中でも、豊太郎はベルリンにいるエリスのことを考えて心を悩ますのだった(※物語の冒頭部分)。
『舞姫』の舞台
ベルリンの中心地の地図
『舞姫』の舞台となったドイツのベルリン中心部は以下のとおりです。
なお、エリスが職場としていた劇場、ヴィクトリア座は、豊太郎とエリスが出会ったクロステル街の近くにあったようです。
ドイツから日本への旅路
『舞姫』は、ベトナムのセイゴン(サイゴン)に停泊している船の中で、豊太郎がベルリンでの生活を回想するかたちで物語が進行していきます。
ドイツと日本を結ぶ道のりは、行きと帰りで同じだったと思われます(※ベルリン → ブリンディジ → スエズ運河経由? → サイゴン → 日本)。
※時間に余裕のある方は現代語訳もぜひご覧ください。