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古文の助動詞「まほし」の意味・活用・接続を解説。【希望・願望の表現】

古文の助動詞「まほし」の意味・活用・接続を解説。【希望・願望の表現】

投稿日:2021年7月17日 更新日:

古文(古典)の助動詞「まほし」の意味や活用、接続について、例文を交えながら解説します。また、「まほし」以外の希望・願望表現である「たし」「ばや」「なむ」などとの比較・違いも説明します。

 

【POINT】

  • 「まほし」は平安時代から使われるようになった。
  • 「たし」が平安時代後期に登場。のちに「まほし」に代わってよく使われるようになり、現代語の「たい」に変化した。

 

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「まほし」の活用

形容詞型

基本形未然形連用形終止形連体形已然形命令形
まほし(まほしく)まほしくまほしまほしきまほしけれ
まほしからまほしかりまほしかる

 

「まほし」の接続

未然形

 

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「まほし」の意味

  • 希望きぼう願望がんぼう)「~たい」「~てほしい」

「まほし」は、希望(願望)を表す助動詞です。自身に対する希望(~たい)や、他者に対する希望(~てほしい)を表現します。

※「希望」「願望」の表記は参考書・文法書によって異なります。
 

希望(きぼう)「~たい」「~てほしい」

希望や願望を表す「まほし」には次のような例があります。

【例】更級日記・家居の記
……いはまほしきこともえいはず、……
まほし_希望・願望_言はまほしきこともえ言はず(1)
まほし_希望・願望_言はまほしきこともえ言はず(2)
(訳)言いたいことも言えず、……

 

その他の希望・願望表現①「たし」

助動詞「たし」も希望(~たい、~てほしい)を表します。平安時代後期に見られるようになった表現で、現代語の「~たい」に変化していきます。

「たし」は活用語の連用形に接続します。

【例】平家物語・巻1・祇王
同じあそびとならば、たれもみな、あのやうでこそありたけれ
たし_希望・願望_あのやうでこそありたけれ
(訳)同じように遊女となるならば、誰もが皆、あのようにありたいものだ。

 

その他の希望・願望表現②「ばや」

終助詞「ばや」は、自身に対する希望(~たい)を表します。

「ばや」は活用語の未然形に接続します。

【例】源氏物語・手習(てならひ)
大将に聞かせばや
ばや_自己に対する希望・願望_大将に聞かせばや
(訳)大将に聞かせたいものだ。

 

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その他の希望・願望表現③「なむ」

終助詞「なむ」は、他者に対する希望(~てほしい)を表します。

「なむ」は活用語の未然形に接続します。

【例】更級日記・家居の記
いつしか、梅咲かなむ
なむ_他者に対する希望・願望_いつしか梅咲かなむ
(訳)早く梅が咲いてほしい。

 
※参考文献
・『実例詳解 古典文法総覧』小田勝、和泉書院、2015年


 
・『改訂増補 古文解釈のための国文法入門』松尾聰、筑摩書房(ちくま学芸文庫)、2019年


 
・『吉野式古典文法スーパー暗記帖 完璧バージョン』吉野敬介、学研プラス、2014年


 
※本文引用
・『新編日本古典文学全集 源氏物語』阿部秋生・今井源衛・秋山虔・鈴木日出男、小学館、1994年
・『新編日本古典文学全集 (26) 和泉式部日記 紫式部日記 更級日記 讃岐典侍日記』藤岡忠美・中野幸一・犬養廉・石井文夫、小学館、1994年
・『新編日本古典文学全集 平家物語』市古貞次、小学館、1994年

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都内の私立大学 文学部国文学専攻出身
お菓子メーカー勤務のサラリーマン
趣味は歌舞伎を見ること(2012年~)
古文や古典を楽しむ人が一人でも増えればよいなと考えながら情報発信しております。
その他、趣味で始めたプログラミングに関することや、通信制大学(放送大学)、各種資格試験の体験談などについても、記事にまとめております。


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