芝居の上手い・下手、というのは主観的な感じ方なので、「誰が一番上手い」と簡単に決めることはできません。
ただ、好きな役者を挙げることはできますし、日本舞踊の知識がなくても「この人は踊りが上手だな」と感じることもあります。
個人的な印象ですが、舞踊の上手な役者さんは所作が美しくて芝居もうまいと思われます。
歌舞伎初心者の方は最初にどんな演目を見たらよいかわからないと思いますので、私が「実力派」だと思う役者さんの舞台を見に行ってはいかがでしょうか。
目次
私が舞踊の名手だと思う歌舞伎俳優
踊りが上手だと思う歌舞伎俳優を挙げてみます。
五代目 坂東玉三郎(ばんどうたまさぶろう)
屋号は大和屋(やまとや)
●1950年4月25日生まれ
言わずと知れた女形、舞踊の名手です。
舞踊の大曲「京鹿子娘道成寺(きょうがのこむすめどうじょうじ)」は、玉三郎さんが演じるものが一番だと思います。
亡くなった十八代目中村勘三郎さんの道成寺も映像で見て「良いなあ」と思ったのですが、玉三郎さんのとは少し違うような印象を持ちました。うまく言えませんが、勘三郎さんのほうは歌舞伎の踊りなのですが、玉三郎さんのほうは「ダンス」というか、一般的な歌舞伎舞踊と一味ちがう印象です。
WOWOWが開局記念として放送した番組「坂東玉三郎の宇宙」では、1991年に大阪のフェスティバルホールで上演された道成寺を見ることができます。当時開発されたばかりのハイビジョンカメラで撮った映像なので、鮮明な画質で舞台を楽しめます。
今でもたまに再放送しているので、見てみたい方はWOWOWのHPを定期的に確認すると良いと思います。
四代目 市川猿之助(いちかわえんのすけ)
屋号は澤瀉屋(おもだかや)
●1975年11月26日生まれ
ワンピース歌舞伎で有名な役者さんですが、踊りも非常に上手です。
印象に残っているのは2016年6月・歌舞伎座公演、「義経千本桜」の「道行初音旅(みちゆきはつねのたび)」です。有名な「川連法眼館(かわつらほうげんやかた)」の前の場面です。抜群の身体能力を活かして忠信を演じていて、後に続く「川連法眼館の場」と合わせて非常に面白い舞台でした。
九代目 坂東彦三郎(ばんどうひこさぶろう)
屋号は音羽屋(おとわや)
●1976年6月29日生まれ
熱心なスワローズファンで、サンケイスポーツで「丸ごとSwallows」という連載記事を書いている方なので、ヤクルトファンの方はご存知かと思われます。
印象に残っているのは2017年7月・国立劇場公演の「一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)」の吉岡鬼次郎(よしおかきじろう)です。鬼次郎が大蔵卿から友切丸という刀を受け取った後に、「みつるぎ再び手にいる上は、やがて源氏の白旗を、向こうの山かげ、かしこの峰」というセリフを言って、義太夫の語りに合わせて踊る場面がありますが、それが非常に良かったです。
口跡の素晴らしさもさることながら、膝を前後に入れ替える難しい屈伸運動まできれいにこなしていました。私は舞台や映像でほかの役者の鬼次郎を見ましたが、彦三郎さんほど見事に踊る役者はいません。「この人は声が良いだけの俳優ではないんだな」と再確認できた舞台です。
六代目 中村勘九郎(なかむらかんくろう)
屋号は中村屋(なかむらや)
●1981年10月31日生まれ
2019年の大河ドラマの主演俳優です。
印象に残っているのは2013年8月・歌舞伎座公演で踊った「鏡獅子」です。前半部分の女形の舞踊では扇子を投げたり回したりするのですが、非常にきれいに危なげなく扱っていました。そして何より、後半部分の獅子の精の舞踊が圧巻でした。花道から登場して舞台中央で見得を切る、その一瞬で劇場の空気を支配してしまうような凄みがありました。
また、衛星劇場で見た2009年12月・歌舞伎座公演(歌舞伎座さよなら公演)の「操り三番叟(あやつりさんばそう)」も良かったです。操り人形に扮して踊る作品ですが、勘九郎さんは人形の動きを見事に再現していました。ほかの役者さんの操り三番叟もいくつか見たことがあるのですが、本当に人形が動いているように踊る人はいませんでした。
おわりに
歌舞伎役者を好き勝手に列挙してみましたが、素人の私が自分の好みを述べたまでです。
見る人それぞれに「良いなあ」と思うところは異なりますので、これから歌舞伎を見てみようと考えている方も、自分なりに面白いと感じるポイントを見つけられると良いですね。
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